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「私が隣国へ立ちます」


 しん、と暗い廊下が静まり返った。


 スピカは決心したように拳を握っていた。


「スピカ……何を言ってるんだ……」

「スピちゃん!」

「スピカ?」

 王様や兵士が次々にスピカを諫めるような声を発したが、スピカの拳は揺らがなかった。


「隣国……まさか、あれは伝説じゃないのか」


 そう言ったバランじいをまっすぐにスピカは見つめた。


「伝説なんかじゃないわ、バランじい。去年、隣の国に査察にいった大臣が、服に光るものをつけて帰国したの」


星屑草ほしくずそう……見つかっていたとは……」


「培養石がなかったために、草は五日で死んでしまったけどね」


 唇を噛みしめ、ジニアが言った。


「美しい草だったわ。星のような光を放つ、結晶のような特別な植物……」

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