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「指揮は大臣に任せてある。あまり時間がないのだ」


 王様は、スピカの前に優しくひざまずいた。


「私のおちびさん。王族が守られているだけでいいと思うかい?」


 薄暗い通路で、スピカはうつむいていた。


「王よ、やはり、光が失われつつあるのですな」


 バランじいが進み出た。


「バラン殿……」


 王様は驚いた様子で、そして諦めたようにバランじいを見ている。


「どういうこと?」


 ジャックの言葉に、王様も、城の人々も俯いていた。


「ジャック、荷物を貸しておくれ」


 紙束と破片が入った袋を渡す。


「わしは、長年天使の涙の光の変調について研究しておる。天使の涙そのものについてもじゃ。光の色、強さ、光る時間、精製速度と年間精製量……」


 バランじいの手の中で、何かの破片が光った。

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