140

 紙束と破片を持って、バランじいとジャックは城へと急いだ。


 昼前には登りきる太陽が今日は登らず、世界は暗いままだった。

 オレンジの光を頼りに、薄明りの中を急ぐ。


 城に着くと、バタバタと人が歩き回っていた。

 城の灯りも抑えられていて、かなり薄暗い。


「ジャック、こっちじゃ」


 人々の間を縫って、城の奥へ薄暗い通路を進んだ。


 言い争う声。


「いけません、王様!」


「お父さん、どこにいくの!?」


(スピカ?)


 声の方に走る。


「お待ちください王様、王様がいなくては、国民が困ります」


「お父さん待って!!!」



「スピカ!」


「……ジャック――!」


 小さな友人の姿が、ジャックのランタンの光に映る。


 焦燥し、困惑したような青い瞳に、オレンジの光が揺れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る