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 心地よい鼓動が聴こえていた。


 自分の中からなのか、遠くの空からなのか。


 音、風の空気……



 銀河が生まれる場所みたいな湖のきらめき。



 ジャックもスピカも、声を出すことができなかった。


 いつまでそうしていたのかわからない時が流れ、ジャックのふわふわの肩がスピカの肩に触れた。


 ここで、いくつの共有が二人の間にあったのかわからないけれど、胸がいっぱいで微笑みが溢れ出た。


「……ジャック、これはね。……お城で、光を打ち上げるんだけど……花火みたいなものよ。火は使っていないけれど。……それが水蒸気に反射して、それが、湖に反射して、こんな風にキラキラと映るのよ。あ、ほらまた光るわ」


 ゆっくりと、スピカは教えてくれた。


 この光景について、そんなふうに。

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