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「あー!!!!!!!もーやめとく。先に行け!」


「わかった!」


 スピカは振り返り手を振り、ぐん、とスピードを上げていった。


 風のように。


 もう見えないスピカに手を振る。


「……まったく……きのこ頭め」


 リュックがずっしりと重いけれど、風が気持ちよかったし水が旨い。


 ジェイクもぐん、と伸びをするとまた、風が吹き抜けた。


 スピカは駆けて行く。風のように。


 自分は自分のやれることをする。


 リュックから使い古した金槌かなづちを取り出した。

 ぱしっ、と片手に打ち下ろす。


 そういえば、あの黒猫の少年は、いいランタンを買えただろうか。

 もしかしたらまたハッティーワークスに来るかもしれない。

 象のオブジェを気に入っていたから。


「ぼちぼちいきますかね」


 やれることをきっと。

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