第18話 香り
■アビリティページ
HP:1020/1020
MP:570/570
筋力:D+
体力:H
魔力:H
知力:H
スキル
---
ソウルポイント
『強化駆動』
■アビリティページ
HP:770/770
MP:640/640
筋力:H
体力:D
魔力:H+
知力:H
スキル
---
やはりレベルアップの鍵はセッ────にあるらしい。初めての時のような猛り狂うリビドーのままに放出するのはお互いに負担がすごいというのに遅くまで求め合ってしまった。
その経験が劣っているとは言わないが、血の吹きすさぶ中を駆け抜けたあの戦いと同等というのはなんとも微妙な感じがした。
それでも得られる幸福感は無二の物だ。今迄の無味乾燥な人生に潤いと癒しを与えてくれる満たされた時間だった。
男として人生でやってみたいランキング上位の『腕枕』をしながら、その幸福を嚙み締めていた。
安らかな寝息を立てている朱莉の体温とか息遣いとか、そういう『存在感』が堪らなく愛おしい。閉じられた艶やかな瞼を軽くなぞって、手はそのまま輪郭を滑る。ぷっくりとした唇の小さな口を撫でているとくすぐったいのかそっぽを向かれてしまった。
彼女を包み込むように背後から抱き着いていると青少年らしい情欲が沸々と再燃し始めたのを感じる。
「ぁっ」
こういう趣向も良いと思います。
「ん、おはよう」
「おはよう誠一郎君」
ご飯できてるよ。そういって離れていった朱莉の温もりを追うようにしてベッドから出る。インベントリから操作して制服を着直すとさっぱりとした肌触りを覚える。汚れや汗の類が洗濯機で洗われたソレだ。
インベントリの
ともかくと朝食の席に着く、リビングにあるテーブルはこの空間の中心なので、天井の近い二階とかよりも広く感じる。なまじ外の世界が静かなだけに、自然と意識が目の前に座る朱莉に行った。
「毎朝ありがとうね」
「ふふっ。いいの。でも、朝なんて時間わからないのに」
そこはほら、気分で。そんな感じに適当なことを言っていると朱莉はまた笑ってくれる。
「それに誠一郎君って別にあのレーションでもいいって思ってるでしょ」
「いや、まぁそれは……。あるならご飯の方が良いよ?」
つまりは自分で用意したいって思うほど欲しいわけじゃないのね。ぶすりと認識の核を突かれる。朱莉がこうして手を加えなければ彼の腹には無味のレーションバーが収まっていたことだろう。
「ホントニ感謝シテマス」
「気にしてないよ。抜けててかわいい」
間抜けって若干遠回しに言われてないか?と、落ち込んだが見放されるようなことでは無いようだ。逆に、気合十分に毎朝楽しみにしててねと宣告されてしまった。あんまりそういうこと言うと在学中に嫁にしてしまうぞ。
そんな朝食を終えて、ふと外の様子が気になった。今は二階の椅子に座って、膝の上に乗った朱莉といちゃついていた。しかし、ナイトメアタウンという世界に似つかわしくない要素が興味を刺激する。
無意味にひかれたカーテンをウィンドウのボタン一つで端に避けると思わず二人して息をのんだ。敷地の外、広めの道路いっぱいにゴブリンがいたのだ。
「キャンプか?」
リス狩りともいうが、相手の出てくるところを出待ちして襲うというのは古来の現実から電脳の戦場まで幅広く行われてきた戦術だ。お世辞にも賢いと言えないゴブリンにそんな術を持っている奴がいたのかと一瞬思案したが、少しの間見ていて気付いた。
「通り過ぎてく、ね」
「ここじゃない訳か……あっちって騎士の手下が来てた方だよな」
ベランダに出て一団の向かう先を見てみる。やはりというべきか昨日よりも近づいて来ていた紫のオーラが遠くに見えた。広範囲に広がっているのはそれだけ数が増えたということか。本体の合流ってやつかな。
「私たちの事見えないのかな」
「ん?」
朱莉の視線を追えば下を進むゴブリンの行列に向けられていた。こんな距離で話していたら確かに気付いても良さそうだが。
「緑結晶の時のセーフゾーン効果とは違うのかな。あの時はガン見されてたし」
あの時。の言葉でストリップショーを思い出したのか朱莉は顔を両手で覆っていた。
突如、歓声というか、どよめきが走った。ゴブリンたちだ。伸びた行列の先の方、紫の奴らとかち合ったのだろう。
「ッ!」
威圧感が、視覚的な効果となってプレッシャーをばらまく。一体、デカいゴブリンがいる。いや、デカいわけじゃない。ゴブリンにしてはデカいが何かに跨っている。馬?鹿みたいな角獣だ。ブルリといななく様は従属とは思えない威容があった。
「あのゴブリン……何でしょう」
傷だらけの体は筋骨隆々な男という感じ。人間に比べたらまだ少し小さいだろうが誤差だ。頭以外を鎧で覆った武人。明らかに今までのゴブリンとは一線を画す強さを思わせた。
■モンスター図鑑■
ゴブリンジェネラル:ヒーロー
ゴブリンキングダムにおけるネームド個体。支配者階級でありながらその生まれは被支配者と特異な出身で、数々の武功から特例的に引き上げられた歴戦の戦士。士官である騎士の上に居座る実質的な総大将で、戦地ではキングよりも高い決定権を持っている。
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