第2話 ケモミミ美少女と町へ

 俺は草原から見えた町へ向かうことにした。道中で目標の一つである食料と飲み物を確保しよう。ここから町へはかなり遠い。


 俺は歩きながら食料などを探しつつ、色々なことを考えていた。

・この世界の通貨はどうゆうものなのか。その価値も気になる。

・俺の容姿はどうなっているのか。正直、一番気になる。

・日本語が通じるか。言葉が通じなかったらどうしよう。

・他の種族がいるのか。漫画やアニメでいうエルフや、ドワーフ、獣人など。


 そんなことを考えている間に、目の前には池があった。

水面が鏡となって俺の顔や体を映し出す。そして、自分の姿を見て愕然とする。前世の姿とはまるで違う。髪の色は青と水色の間ぐらいで、目は青と水色のオッドアイになっている。そして、「イケメンだ⋯⋯」思わずそんな言葉を漏らしてしまった。自分で言うのもあれだけど、優しそうな顔をしている。正直嬉しい。俺は恵まれていると思った。そしてもう一つ、水だ。運にも恵まれているらしい。だが、一つ思ったことがある。

「この水飲めるのか?」

そんな疑念を抱いた。そもそも水かどうかも分からない。でも、生きていくためにはやむを得ない。俺は両手で水をすくい飲んでみることにした。水は冷たく、透明だった。


 「不思議な味がする。でも、飲めなくはない!うまくはないけど、不味くもない!」これは貴重な飲料水だ!と、飛び跳ねて喜んだ。


 しかし、持ち運ぶ手段がないことに気づいた俺は、その場に膝をつき肩を落とした。ここから町まではまだ遠い。そして、夜になるまでには町につかないと魔獣が出るかもしれない。だが、夜になるか分からないし、魔獣がいるかも分からない。でも何か嫌な予感がする。池があるからか、吹いている風が少し冷たく感じる。俺は水を諦め、先を急いだ。


 飲み物は確保出来なかったのは残念だが、食料は絶対に確保したい。そう思いながら俺は町を目指して歩いていた。「森なんだから木の実ぐらいあって欲しいんだが」

すると、俺の声に反応したかのように木の実がなっている木を見つけた。だが、喜ぶにはまだ早い。

この木の実が食べられるかどうか分からない。毒があるかもしれない。そう思って、食べるのは我慢して持てるだけ持って、また町へ向かって歩き出し、「町に着いたら食べられるかどうかも聞こう」と呟いた。


 俺はケモミミ美少女に助けられた。

俺の身に何が起こったかと言うと、遡ること10分前。


 俺は町に向かって歩いている途中だった。突然生暖かい風を感じ、嫌な予感がした。その予感は的中し、茂みからオオカミみたいな魔獣が現れた。

「嘘だろ⋯⋯この状況、どう打開しろというんだ!」

そんなことを叫んでいる場合じゃない。なんとか打開策を考えないと死んでしまう。死ぬのだけはごめんだ。

「そうだ⋯⋯!俺には木の実がある!」

俺は木の実を持っていることを思い出した。これで少しは牽制できる。しかし、牽制ができたところで根本的な解決にはならない。木の実だけではあの魔獣を殺すことができない。


 「俺はどうすれば⋯⋯」


 「お困りですか?」

どこからともなく可愛らしい声が聞こえてきた。その声とともに一人のケモミミ美少女が現れた。俺は驚きのあまり腰を抜かした。頭には耳がある。そして、尻尾もある。髪はチェリーピンクのような色で、ロングヘアー。目は薄紫色だ。背中には剣を背負っている。

「その様子だと、獣人を見るのは初めてみたいですね」

と少女は俺を見てそう言う。その隙に魔獣は少女に飛びかかる。「危ない!」と俺は言いつつも腰を抜かしていたせいか体は動かなかった。しかし、少女は瞬時に後ろを向き、背中に背負っていた剣を抜き魔獣を切り裂いた。その魔獣は魔石となった。少女は魔石を拾い、俺の方に近づいてきた。

「あの魔獣、ウォルフ・グリースは脅威度Fの魔獣です」

と、さっきの魔獣の解説をしてくれた。

それが10分前のできごと。


 「あ、ありがとう」

命の恩人である少女にすかさずお礼を言う。

「誰かが困っていたら助けるのが普通だと思います」

少女は真顔ですごいことを言っている。

「そんなことが言えるなんてすごいね」

人助けは当たり前だと言っている少女に俺は感心する。

「君は命の恩人だ。なにかお礼をさせて欲しい」

俺はそんなことを言った後に、お金や武器などを持っていないから何もできないことに気づいた。しかし、今さら前言撤回はできない。すると、少女はこんなことを言ってきた。


 「それなら、ステラのパートナーになって欲しいです。あ、まだ名乗っていなかったですね。ステラはアンヘル・ステラと言います」


 と、思いがけない要求をしてきた。そして、少女の名を聞かされた。俺は唖然としていた。パートナー?お金や武器すら持っていない俺をパートナーにしたいと?ありえない。何か意図があるとしか思えない。そう思って、ステラと言う少女の方を見た。しかし、そんな純粋無垢な目をされると疑うにも疑えない。俺はしばらく黙り込んでいた。

迷惑に思ったのか、少女は「そうですよね。迷惑でしたよね。お礼は結構です」と、耳と尻尾を垂れさせ、しょぼんとした顔でそう言った。俺はとっさに少女の言ったことを否定した。

「いや、そうじゃない。迷惑なんかじゃないよ。俺は驚いたけど、嬉しくもあった。でも、俺みたいな無能をパートナーにしても足を引っ張るだけだと思って、少し戸惑ってしまつた。」

そのことを聞いた少女は少し嬉しそうな顔をした。

「それで⋯⋯ステラのパートナーになってくれますか」

と、少し不安が混じったような声でそう聞き直した。

俺の答えはもう決まっている。

「こんな俺でよければもちろん!」

俺は笑顔でそう答えた。すると少女は、飛び跳ねて喜んだ。

「まだ名乗っていなかった。俺は」

名前を名乗ろうとしたが、前世の名前を使うか迷ってしまった。少女は首をかしげている。少女は『アンヘル・ステラ』と名乗った。つまり、前世で言う外国人のような名前だ。多分この世界の人の名前はほとんどそういう感じだろう。

ならば俺もこの世界の人として合わせた方が良さそうだ。

それじゃあ俺は、


 「テネル。シリアス・テネル」


 そう名乗った。

少女は耳と尻尾をピンとさせ「テネル!テネル!」と、この世界での俺の名を何度も言った。その後、少し落ち着いた少女に尋ねた。

「君のことなんて呼べばいいかな?」

「好きに呼んでくれて大丈夫です!」

「じゃあ、ステラと呼ばせてもらうよ」

「はい!」

と、ステラは元気よく答えた。


 俺はステラに町へ向かっていると説明すると、ステラは「案内します!」と言ってニコッと笑った。

その笑顔はまるで天使のように見えた。

俺はパートナーとなったステラと町に向かって歩き出した。そして、その途中でステラはどうしてこの森にいたのかと、この世界のことなどを色々教えてもらった。森にいた理由には驚いたが、ステラは俺の思っていた以上に物知りでこの世界のことについてだいたい分かった。

夕暮れぐらいになった頃、ついに町にたどり着いた。


 ――しかし、この町であんなことが起こるとは誰も知る由もなかった。

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スライムと依頼解決の旅 @Pinola

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