第24話 恋に生きる女たち
「実……くん……?」
「はい?実ですけど……?」
桃色の目を見開いたまま、生田目さんが俺の名を口にする。
「急に現れて……もしかして、妖ですか?」
「……あ!そうです!ろ、六大妖の貢献が!って、俺が急に現れたって……?」
「成長が……もしかして、誠陵さんもそこに?」
「あ、は、はい!兄も……!」
生田目さんが安定の平坦な様子でいう。兄のことに気づいたのは━━
「忠くぅーん。霞七子をおいてどこ行っちゃったのよォ!」
正しく、桃色の髪を二つ結びにした、背の高い女の人━━愛田霞七子さんの声を聞いていたからだろう。
「愛田さん。こんにちは」
「生田目ちゃんじゃないのぉー!今日もびじーん!」
「……誠陵さんは急に消えたんですか?」
「そぉーなのよぉ!カノジョおいてアイツはどこほっつき歩いてんのか!」
「えっ!」
「「……実くん?」」
俺は、生田目さんと愛田さんの話についつい水をさしてしまった。
二つの疑問形が重なる。
「あ、いや、別にィー……」
あの人、愛田さんと付き合ってたんだ。
父上から縁談の話をいっぱいもらってるらしいけど、それでいいのか……?
「まぁ、それはどうでもいいとして」
生田目さんが、話をもどす。
「誠陵さんは、急に消えたんですか?……こう、シュッ!と消えるみたいな……魔法?みたいな……」
「なにその例え!生田目ちゃんかわいぃー!でも、そうなの。霞七子ビックリしちゃって!妖かしら」
生田目さんが、愛田さんの明るい感じに乗せられてか、なんだかいつもより明るく話す。
それに、当の本人も明るく応じる。兄上が危機だとは思っていないのだろうか。
伝えないと!
「あっ!愛田さ━━」
「なるほど……実くんも急に消えて、急に現れました……貢献の呪術なんでしょうか」
「……あ、はい!そうらしいです!」
「流石に人が死ぬのは後味悪いから、助けよ。実くん。どうしたらその術はもう一度発動するんですか?」
「……えっーと……」
思いつかない。本当に何も思いつかない。
質問された俺がもたついているから沈黙が続いてしまう。
だが、この沈黙を破ったのは、少し前から話に入ってきていなかった愛田さんだった。
「えっ!忠くん、貢献に襲われてるの!?」
俺がさっき伝えようとしたことが、ちゃんと伝わったようだ。
「あ、そ、そうなんで━━」
「今すぐ助けないとじゃない!!どこ!どこなの!?」
「あっ、あっ!あのォー!」
「愛田さん落ち着い━━」
その途端、愛田さんが俺にすごい剣幕で問い詰めてくる。
生田目さんが平坦な声で愛田さんを嗜めてくれたが、途中で声は途切れた。
何故なら━━
「おかえりなさいませー!誠陵実さま!愛田霞七子さま!」
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