気まずい人といるのはいやだよ
第22話 密室
「こんにちは。今日は、どうぞお越しくださいました」
「今日も美人さんですねェ。
「あらいやだ。無鱒名さんったら、こんなオバサンに……」
俺の家のだだっ広い玄関先で、着物姿の母さんとレオタード姿の無鱒名さんがなにやらにこやかに話している。
無鱒名さんの笑顔がうさんくさいのはいつものことだけど、母さんまで、いかにも作り物といった笑顔を浮かべているのがなんだか面白い。
「あら。誠陵さん」
「こんにちはァ。」
「こんにちは。キイさん。
着々と俺の住むだだっ広い家が、人で埋め尽くされていく。
今日は、年に数回うちで催される、祓いの著名人や、その身内の集まりがある。
ちなみに、この集まりに毎年俺も一応参加しているという理由で無鱒名さんとも顔見知りだったのだ。
今、母さんがあいさつした、キイさんは確か、うちほどじゃないにしても大分すごい祓いの名家のお嫁さんだったし、愛田さんにいたっては、兄上についで祓い屋ランキング五位のすごい女の人だ。
「……あっ!実、お父様が」
そんなことを考える俺に、母さんが、突然、薄い青色の瞳をあらわにして、いう。
よく見ると、外には父上の姿があった。
「あっ。じゃあ、俺、行きますね!」
「……そうしたほうがいいわね」
母さんが、いった。
悲しい目をしていた。
◻︎▪︎◻︎
「このビーフステーキ美味しい!」
「あら、本当!」
「食べ物のことばっかり!」
俺の家のだだっ広い庭に置かれたテーブルに並べられた料理をかこみ、若い女の人たちがはしゃいで笑い合っている。
この人たち、いつもこの集まりで結構見るぞ。
じゃあ、きっと名家の娘さんなんだな。
才能はあるのだそうか。きっとあるだろう。
俺と違って、こんなコソコソかくれなくてすむのだから。
父親にで社交するだけで嫌な顔をされるということもないのだろう。
あー!もう一回あの成長倒したときの力が発動しないかなァ!
「あ、実くん」
「生田目さん!」
俺は、平坦ボイスを手がかりに、少し遠くに見慣れた顔を見つけ、手をふる。
今日の生田目さんは、いつものセーラー服姿ではなく、水色のドレスを身にまとって、いつもおろしている長い黒髪をあげていて、綺麗だ。
なんか……妙に落ち着かないな。
なんでだ?いつもと雰囲気が違うからかな?でも、だからってなんで?
俺は、あの、告白詐欺以来の、あの不思議な気持ちに見舞われた。
「やっほー!!」
「へつ!?」
突然聞こえた、謎の男声によって出てしまった、自分のマヌケな声を恥じ……たいところだったが、周りを見渡し、それどころじゃなくなった。
あたり一面が真っ白だったからだ。
ここは━━室内?
それも、壁も床も真っ白でえらく殺風景だ。
さっきまで俺のうちの庭にいたはずじゃ……
あたりを見回すと何故か謎の男の人の他に兄上もいた。
「どこだ。ここは」
「コウケンくんと二人っきりの密室だよ」
目の前になぜかいる、袴姿の兄上と、全く知らない金髪の男の人が話している中、俺はぼうぜんと立ちすくむ他になかった。
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