辛酸フラッシュバック

第20話 憂鬱

「うーーん。まァ。……うん。でもねェー。」


 俺の目の前で桃色の髪をかきむしりながら、畳にあぐらをかいている無鱒名さんが困ったようにいう。


「これは、実くんの成果でふよ。」


 俺の左横で、みんなに配布されたお茶菓子をほおばりながら座った目で畳へと正座している生田目さんが、いう。


 俺はチラッと自分の右横をうかがう。そこには女子中学生の生田目さんと同じくらいかそれよりも小さいような男の人が畳に正座している。


「……。」

「あっ。このお茶菓子美味しいですね……。」

「……うん。」


 相性悪めの二人が話し合っている中、俺はこの人━━神母真直いげまさなおさんとの無言の気まずさをなんとか、なくそうと努めるが、うまくいかない。


「じゃあ!」


 無鱒名さんが突然声を張り上げ、このだだっ広い空間を一気に活気づけた。


「この少年を認めるか否か会議開始&成長討伐報告開始ィ〜〜。」

「……。」


生田目さんがいつも座っている桃色の目をさらに若干細めたのを俺は見逃さなかった。


 気にしいの俺だが、無鱒名さんが気づいていなさそうで安心というのと、無鱒名さんが生田目さんを「愛」ではなく「生田目」と呼んだことが気になりすぎているのとで、この状況があまり気にならない。


 ━━この間のこと気にしてるのかな?


 少しおかしな気持ちになっている俺をよそに、あらためて話し合いは開幕した。


       ◻︎▪︎◻︎


「で、前者はどーするかなァ。」

「だから、認めてあげていいでしょ?なんかめんどくさいし。」

「いや、だって!この少年ほんとはめっちゃ弱いんでしょ!?突発的強さなんでしょ!?」


俺の目には先程まで無鱒名さんが映っていたが、気づいたら畳が映っていた。


そこを突かれちゃ元も子もない。


俺は、あの時謎の力が発動しただけで、今現在は相変わらずの弱小かつ落ちこぼれなのだ。


だが、何度もいうが、俺はこの展開になれている。


この、周囲の人間から見放され、呆れられるこの展開には。


「あっ。」


突然、クマだらけのうつろな目を少し見開き、赤い瞳をあらわにし、いったのは━━神母さんだった。

俺も同時に顔を上げることができた。


大きな戸を、静かに開ける音がする。


確かに、ここは祓い屋の本部。どんな祓い屋が来ても不思議ではない。


優秀な祓い屋だと特に。


その戸から入ってきたのは、俺とは違い背丈があり、俺とは違い堂々としていて、俺とは違い立派な祓い屋である


「誠陵忠。」


兄だった。


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外見設定集第四弾出したんで、よかったらどうぞ!

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