第8話 驚きの事実

「はい。じゃあ練習してきましょう。」


俺の目の前で、何もない居間に立ちながら、生田目さんが平坦な声でいう。相変わらず掴めない人だ。

     

「じゃあ、計画としては、簡単なのから順に練習していく形で。」

「祓語単独、祓刀はらいがたな、両方、であってますかね?」

「はい。」


俺は、生田目さんちの居間で、生田目さんと今日の修行内容の確認をしている。今日は弁才天様は不在だそうだ。


「たくさんありますね!」


俺は言った。別に嫌味ではなく、単に頑張ろうという意志を込めてだったのだが、生田目さんは少し険しい顔で、黙りこくっている。

━━やっぱり、無鱒名さんのことか?


俺が勝手に気まずさを感じている空間で、しばらくして生田目さんは口を開いた。


「まぁ、それはいいとして、とっとと練習を始めましょう。」

「……あっ、はい!」


こうして俺の弟子入り二日目は始まった。




「じゃあ、まずは祓語単独での練習をしましょう。あれじゃかなりマズイので頑張ったほうがいいかと。」

「……はい。」


生田目さんが平坦ボイスでなかなかのことを言ってくる。

俺は……まぁ、こう返すしかない。


「じゃあ、まず、私が祓語を唱えます。……ほととぎす……」


そうして、出た祓術は相変わらず格が違った。

だが、祓術は決して霊以外を射抜かない。この威力を持っても壁までいくと、屁でもないようで、貫通していってしまう。


「よし!じゃあ俺も!……人言の……」


俺はというと……まぁ、今までの功績から予想していただきたい。壁を貫通どころか壁のところまで行くまでに消えてしまった。


「全然ダメですね。」


生田目さんは相変わらず無表情でいう。一応弟子と認めてくれていることはわかってる。

だけど、俺も人間。一番気にしていることを面と向かってハッキリといわれると結構くる。


「……すみません。」


自分でも聞こえないような声でいった俺はうつむいてしまった。

そんな中、唐突にこの気まずさや、やるせなさ以外に何も無い部屋に大きな音が響く。俺は音鳴った方を見た。


「あっ。弁才天様!」

「いらっしゃい。実くん。」


そこにはドアを開けた弁才天様がいたのだ。今日は昨日とは対照的に濃い赤色のワンピースを着ている。


「実くーん?ちょっと妾と廊下へ来てくれないかい?。」

「えっ!?弁才天さまぁー。待ってくださぁーい。


弁才天様がそういったので、なにかいっている生田目さんをよそに俺はいわれるがまま、廊下へと行った。


「なんですか?弁才天様。」

「君は、愛ちゃんにしごかれてたのかい?」

「あっ……まぁ。」


核心をグサっとつかれて、俺は返事に困る。


「大変だね〜。まァ、お気に入りだもんね。じゃ、からかいたかっただけだから。」


そのあと、居間にもどりながら「愛ちゃんにはいわないでね!嫌われちゃうかもだから。」という叫びがほんの少しひびく頭で俺は考えた。


━━お気に入り?え?俺を?もしかして、生田目さんが!?


この頭のゴチャゴチャを取り除きたくて、ついつい俺は弁才天様を呼んでしまう。


「べ、弁才天様!!」

「なんだい?実くん。」


弁才天様が、結構わずらわしそうにいう。もう一度もどるのが面倒だったのだろう。


「え!?い、今のって生田目さんが、俺を……ってことだったりします!?」

「え?気づいてなかったのかい?結構あからさまだったよ。」


あきれたように弁才天様がいう。

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