第6話 山荘のリフォーム

 山荘まではあっという間だった。


 シルバといっしょに木の上まで上昇したところ、遠くに山荘が見えたため、道案内は不要だった。


 ローズが置いて行ってくれた荷物と一緒に上空を飛行して、一直線に山荘に到着した。


 山荘は想像以上に荒れてしまっていた。土砂崩れの直接的被害はないが、十年以上も放置されていたため、雨漏りが酷く、室内もカビだらけで、キノコがところどころに生えていた。


『グレースはそこに座って、ちょっと待ってな』


 グレースは言われた通り、大きな岩の上に座って待っていると、土砂崩れが発生していたところが綺麗に整地されていく。


「な、なにこれ?」


『土魔法だ』


 次に目の前で家屋がどんどん自動的にばらされていき、整地された地面に材料ごとにきれいに並べられた。


『重力魔法と風魔法の組み合わせだ』


 続いてそれぞれの材料が高圧の水で洗浄されていく。


『重力魔法と風魔法と水魔法の組み合わせだ。前世の高圧洗浄機ってやつを再現したんだが、覚えてないよな』


 洗浄した後は熱風で乾燥が始まった。ほんのりと木の香りが漂ってきた。表面が泥や埃で汚れてはいたが、中までは腐っていなかったようだ。


「火魔法と風魔法の組み合わせね」


 今度はグレースが種明かしをしてみせた。


『そうだ。グレースも魔法は使えるのか?』


「平均程度よ。人の魔法のレベルは知っているの?」


 子猫が首をかしげている。中身はちょっとあれだが、この外見は可愛すぎるとグレースは思った。


『いいや、よく知らない』


「火魔法といってもマッチ程度の火力だし、風魔法といってもそよ風程度よ」


『みんなそうなのか』


「いいえ、人の最高峰の魔法使いがその程度ってこと」


 グレースにはシルバが驚いている表情をしているように見えた。


『じゃあ、俺って相当凄いの?』


「ええ、化け物よ」


『ふーん、そうなのか。妖精界でも一番だったから、そこそこ行けるとは思っていたが、俺って無敵なんじゃない?」


「魔法ではそうかもね。でも、人は武器を持っているし、ずるがしこいから」


 シルバは何か考えていたようだが、


『まあ、そうかもな。せいぜい油断しないようにしないとな』


といって、作業を続けた。


 材料が十分に乾いた後、シルバは山荘を元通りに組み合わせ始めた。


「すごいわね。よく組み方を覚えているわね」


 グレースは感心して、何やら集中しているような感じのするシルバに話しかけた。


『いいや、覚えていない。物質には状態記憶ってのがあって、それを利用しているのさ』


 グレースの目の前で山荘がどんどん組みあがって行き、最終的には以前訪れていたときよりも綺麗な山荘に生まれ変わった。


『さあ、お姫様、中にどうぞ』


 シルバはそういって、グレースの右肩にぶら下がった。

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