第17話 転生スキル"顔面工事中" ※フローラ視点

 フローラは自身が風属性魔法に適性があるため担任のウィンに指導されていた。


 恋学のフローラ編では担任であるウィンが先生枠では一番攻略しやすい初級編となっている。


 実際に私もウィン先生ルートの大人の魅力にキュンキュンした一人だが、心の男根は何も反応しなかった。


 貴腐人には刺激が足りなかったのだ。


「では、風属性魔法の指導はAクラスの担任ウィン・クロウが行う! よろしく!」


 風属性魔法の適性は比較的多く、火属性と同様に十人程度いた。他のクラスの子達も集まっているからか、イケメンを探すがモブばかりだ。


 カイトはそろそろ自分がモブとは顔のレベルが違うと気づいた方が良いと思う。


「この中で魔法を使えるやつは今のところどれくらいいるか?」


 ウィンに質問された私は手を挙げた。事前に貴族教育を受けてから編入しているため、魔法もある程度は使えていた。


 そもそもゲームをプレイしていた私は、物語を進ませるために魔法のことについては知っている。テストの点数で隠しルートや特別なアイテム"媚薬"とかを入手できるため、手を抜けなかったのだ。


「んー、大体は貴族出身ってところだな。ではーー」


「きゃー!」


 ウィンが説明に入ろうとすると、どこからか甲高い女性の黄色い声が聞こえた。次第にウィンの近くでも、騒がしくなってきた。



「ぐふふふ、なんていいのかしら。カイトさんに顎クイなんて」


 私の腹の底から出る唸り声にウィンは驚いていた。


「フローラさん?」


「あっ、はい! 先生!」


 私はすぐに表情を変えた。私の転生スキル"顔面工事中"だ。


 名前はともかく、悪役令嬢のマリアを本来落とし入れるためにコロコロ表情を変える必要があった。


 今はチ○ポッコン先生マリアと仲良くなったため、使う機会もそんなにない。


 次にホバードがカイトに耳打ちをしていた。そこも私は見逃していなかった。


「あーー! カイトさん最高! 鼻血もんだわ! ほら、先生もっとやりなさい!」


 心の中で私は白衣の先生を応援した。もっと攻めて攻めてぐちょぐちょにしてほしいのだ。


「あのー、私は何を?」


「ほら、カイトさんに手を出しな……ウィン先生どうされました?」


 私は視線に気づき振り返るとウィンに話しかけられていることに気づいた。


 ここは秘技顔面工事中の発動だ。いつも通りのお淑やかな淑女に戻り微笑んだ。


 せっかく頑張った貴族教育を忘れるところだった。


「フローラさん私が行ってきますね……」


 ウィンは私が何を見ていたのか気づいてた。


風木槌ウィンドハンマー


「皆さんこれが風属性の魔法ですよ! 初級でも中々威力は強いので気をつけてくださいね」


 ウィンは魔法を唱えてホバードの元へ向かった。しかし、これも私にとってはご褒美となっていた。


「いや、ちょっと待って。先生同士の大人の恋愛も……。 いや、ウィン先生はカイトさんに嫉妬しているから3Pも捨て難いわね」


 チ○ポッコン先生マリアに影響されてから、3Pの良さがわかってきたため、カップリングの幅が広がった。


 頭の中では完全に修羅場で三人が挿入り乱れている。完璧に貴族教育の成果は頭の片隅にもない。


 しばらくするとウィンは戻ってきた。


「フローラさんこれで……」


 ウィンは私の顔を見ると、何とも言えない表情をしていた。ここはにこりと笑えば問題ない。


「ぐふふ、先生まだあちらにいても良いですわよ。むしろもっと密接にねっちょり絡んできて良いわよ」


 心の声が口から溢れ出していた。


 そんな私をウィンは関わらず、そのまま素通りした。しかし、私は簡単に止まらなかった。


 授業の中盤になり、みんなが魔力感知で集中しているとまた私の声は漏れていた。


「あああ、もうダメ! カイトさん最高だわ」


「あのー、フローラさん……」


 集中していたため私の声だけが響いていた。だが、ここは笑えばどうにかなる。


「あああー! カイトさんが押し倒したわ!! カイト×先生かしら! 」


「なに!?」


 それを聞いたウィンはカイト達の方に視線を向ける。カイトがホバードの上に馬乗りになっていたのだ。


「はぁー、カイトさんって意外にも情熱的なのね」


「せっかくなら俺の上に乗ってくれれば――」


 ウィンがボソッと呟くとどこからか熱い視線が集まってきた。良からぬことを発してしまったと思った時には遅い。


 ウィンは壊れた機械のように視線を私に向けてきたが、それを逃す私でもない。


「ウィン先生! 今すぐ行っていいですわよ。むしろ今から混ざってきなさい。はやく!」


 私はさっきまで集めていた魔力を放出しながらウィンを応援する。


「あっ、はい。行ってきます……」


 ウィンは小さく頷くと授業を終える鐘がなった。まさかここで授業が終わるとは思いもしなかった。


 いつのまにか私の口からも大きな舌打ちが鳴っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る