第43話 想起-3
「では、ソリオも起きたし、話を進めよう。明日にはフォルテたちと今後を決めなくてはいけないから」
言いながら、備品が置かれている棚へ箱を置いているソリオの背中に、リテラートが気遣いうような視線を投げる。振り返ったソリオは足早に戻ると、カーティオの隣へ腰を降ろした。
「リデル、さっき神子に聞きたい事があるといっていたが」
「俺自身もまだはっきりと何かを掴めた訳じゃないんだ。だから考えを纏める為に、三人の話を聞きたい。冬石に起きた異変と同じくして守護石が光を放ったよね。三人とも嫌な感じはしないとあの時言っていたが、それは今でも変わらない? 」
三人がそれぞれを見やり、変わらないと答えたのはティエラだった。
「あの頃から魔物に関する報告が増えてきたから、冬石の異変が魔物にもたらされたものだと俺は思い込んでいたんだけど、そうじゃないと思い始めた。それは、昨日のティエラの話からだ」
ティエラが神子として覚醒したのは、先代の守護石が失われたからだ。そして、先代の守護石は、次代の神子が役目を担う準備が整うまで、その力を保有していたのだとティエラは話していた。
「もしかして、冬石も新たな冬石、もしくはそれに代わる存在に代替わりしようとしているんじゃないのか? そうやって次代の存在へ変わる時に消えてしまったのは、なにも琥珀だけじゃない。考えてみれば、アカデミーを常に護っていた結界石もそうだった。それぞれの間隔は違えど、冬石も例外でないのなら考えられなくもない」
リデルの話を聞いたカーティオもそれは考えた事があった。
神子の記憶の中で冬石の代わりになりうる存在がある事を知っていたから、早い段階でそこに至ったが、その存在が表に出るということは、厄災を抑えるものが消えるということになる。
「新たな冬石が出来ているのなら、精霊たちが騒がないはずがないし、代わる存在だとしても同じだろうね」
「それに、サンクティオに集められている術者たちも気付かないことはないだろう」
カーティオの話を補足するようなリテラートの見解はもっともで、リデルはダメかとソファの背に身体預けて天を仰いだ。その隣でティエラが下を向いて唇を噛むのを、ソリオはじっと見つめ、小さく息を吐く。
「……ティアナ」
ぼそりとソリオが吐いた言葉に、ティエラは顔を上げ、自分を見ている彼と目が合って息を飲んだ。
「ティエラなら分かるんだろう? この森を護っているもう一つの存在、冬の女神ティアナ」
「ソリオ、君……」
カーティオもまたソリオの隣で驚いたように袖を引いた。そんな彼に頷きを返して、言葉にされなかった部分を肯定したソリオは、もう一度、ティエラへ問うような視線を向ける。
「リテラート、リデル……二人はまだ神子と女神の記憶を引き継いでいない。それは何時か知る事になる、けれど、冬石の時が進み始めている今、その何時かを待っている訳には行かない。ティエラ、話して。俺も、俺が女神の真の加護を得て知った事を話すから。そうしないと、もう時間がない」
「ソリオ、分かった。じゃぁ、俺が神子として、引き継いだものを皆に話そう。俺が知ったのは、この森の役目と隠された女神の存在」
そう切り出したティエラは、穏やかな口調で話し始めた。
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