第69話 しかし自爆は嫌だなぁ……

 ミュラの計画は、冒険者を含む全市民に開示された。


 その計画開示に当たっては、どうしても、ジップオレの固有魔法やレベルも伝える必要があったので、その辺も包み隠さず伝えられている。


 ちなみにオレは、ユーティと戦った結果、レベル99に達してカンストしていた。これ以上はレベル測定が出来ないので、レベル100以上の基準を今後開発するらしいが、いつになるのかは分からないし、中上層の難易度が定かではないので、あまり意味がないかもしれない。


 いずれにしても、これまで秘匿にされていた情報がすべて開示されて、市民達には驚きをもって受け入れられた。


 だから中には「やはりジップを追放すべきだ」「二度と都市に入れるべきではない」という意見が出てもおかしくないとオレは考えていたのだが、そんな意見は一つもでなかったという。


 さらにはミュラの壮大な計画に反対する人間もいなかったそうだ。消極的な賛成はあったものの、基本は全員一丸となって協力体制を作っていくという。


 それにはオレも驚いた。


 地上奪還という目的が全員に共有されているからとも言えるが、何よりも、フリストル市の治世が、ミュラを中心として非常に上手くいっていた証拠なのだろう。


 たださすがのミュラも、数日で全員の意見をまとめることは出来ないので、オレは、作戦会議をした翌日にはダンジョン探索に出発していた。作戦会議をした五人に見送られて。


 ダンジョン探索真っ只中であっても都市の状況が分かったのは、都市に残していた残機との感覚共有によるものだったわけだ。


(やっべぇ……補給無しの戦闘とか、予想より遙かにキツいじゃんか……)


 そうしてオレは、今、中層の未踏領域へと到達していて、その広大な中層を眺めながらぼやいていた。いや、ぼやいたつもりが声にもなっていない。


 いったい、どのくらいダンジョン探索を続けているのだろう?


 都市以外は昼夜の区別がないから、今や時間感覚もなくなっている。


 時間感覚というか触覚も聴覚も嗅覚もほぼなくなっていて、視界が霞んで回りがよく見えなくなっていた。味覚は元より使っていないからもう苦みしか感じない。


 残機を使いまくって水分だけは確保できているものの……今や水分を取っても体が動かなくなってしまった。


(自爆したくはないが……そろそろ潮時か……)


 ミュラ達は、残機と共に補給を運び始めているものの、どうやら間に合いそうにない。


 であれば、本体のオレが魔法発現できなくなる前に、体を交換、、、、しておくべきだろう。


 本体が自爆するのは初挑戦なので、思いっきり嫌だが……


(しまった……麻酔魔法とか作っておけばよかった……でも麻酔したら魔法発現できないか……)


 爆発四散するのだから全身麻酔じゃないとダメだろうが、そうしたらそもそも自爆できない。


 しかし自爆は嫌だなぁ……


 なんとか痛覚だけ遮断できないものか? あるいは、一瞬で爆発するんだから痛覚を感じる暇もないか?


 そういや、ギロチンって本来は、死の苦しみを出来るだけ軽減するために考案されたんだっけ? だとしたら自爆よりも首チョンパしたほうが──


 ──あ、まずい。思考まで鈍化して、堂々巡りしてる。


 すでに意識も朦朧としているし、このままでは本当に魔法発現できなくなる。でもこんな状況に至っても、レベル99のオレでは簡単には死ねないから、そうなったらまさに生き地獄だ。


 やむを得ない、覚悟を決めて自爆するか……


 そう決意したその瞬間、残機から思念が飛び込んでくる。


(こんな時に……接敵かよ……!)


 どうやら中層の魔獣がオレ達を見つけて接近しているようだ。


 本体のオレは、もう何も見えなくなっている。やむを得ないので準本体を出して、あとはそいつに任せるとしよう。


(自爆するのは……敵を蹴散らしてからだな……)


 いま生成したばかりの残機達は元気いっぱいなので、戦闘指揮は準本体に任せて、オレは脱力する。すでに視界も真っ白だから、目をつぶったのかどうかも分からないが。


(このまま……死んでしまえば楽なんだが……)


 そんなネガティブなことを考えながら、オレは意識を混濁の中へと落としていき──




 * * *




 ──再び目覚めてしまったのは、人の声がキッカケだった。


「キミ! 大丈夫!? いま回復魔法を掛けるから待ってて!」


 どうやらミュラ達が間に合ったらしい。


 そのときは思ったが、違った。


 回復魔法を受けて視界が幾ばくか開け、そうして網膜に飛び込んできた人影は──見知らぬ女性だった。




(第4章終わり。第5章につづく)





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あとがき

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 今回もご一読頂き誠にありがとうございました! 作者です(^^)


 そして相変わらずの不定期更新ですみません。執筆時間がなかなか取れず四苦八苦しておりまして。


 できるだけ土日祝日に書き溜めようとしているんですが、ままならない生活を送っております(^^;


 そんな感じではありますが、引き続き気長にお付き合い頂ければ幸いです!


 ということで今後の執筆予定ですが、小説をいくつか並行して書いている都合と、あと本作の次章構成がまだざっくりとしか作っていない関係と、あとは気分転換もありまして……


 次は下記小説を書こうと思っております。

   ↓↓↓

最強で美少女だけど【ぼっち】な王女がグイグイ来る! オレ、平民だからと王城追放で無職となったのに……なぜか二人っきりで気ままな逃避行!?

https://kakuyomu.jp/works/16817330647580640335




 本作は、上記『ぼっち王女』が一段落したら再開する予定です。それまでに構成作っておかないと(笑)


 そんな予定で考えておりますので、よろしければ『ぼっち王女』のほうもご一読頂ければ嬉しいです!


 本作同様、ラブコメ要素の強い異世界ファンタジーとなっております!


 そんなわけで、次回は『ぼっち王女』のあとがきでお会い致しましょう。それでは〜。

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平凡なオレは、成長チート【残機無限】を授かってダンジョン最強に! でも美少女なのだがニート気味の幼馴染みに、将来性目当てで言い寄られて困る…… 佐々木直也 @naon365

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