第一章 第29話 さくらの憂い
――エレディールの
現在は
そして、
――そんな人間たちの中に、アルカサンドラ・ベーヴェルスと言う
アルカサンドラの
――彼らはある日、異様な感覚に襲われる。
周囲を調査確認し、自分たちの
そのままそこに
しかし、
疲れ切って
彼は
そして、いざ自分の番と言う時に穴の
彼女は娘である天方
仕事から帰宅した、さくらの夫である天方
――物語の続きは、長男である
◇
「え? 何? リウス」
「にわ、みず」
エルヴァリウス――リウスが、リビングの先を指さしてさくらに言った。
これは「庭の植物に水
ちなみに今は、午前九時少し前。
「うーん、あんまり外で人目に
と言い、さくらは両手を開いてリウスに向けた。
すると、彼は嬉しそうににっこりと笑い、リビングの南面のガラス戸を
「まあ一応、ご近所さんには軽く説明してあるし……今さらかな」
天方家は、東側と南側の道路に面する形で建っている。
この家を建てる時、陸とさくらは玄関を東にするか南に置くかで少し
……結局、南側には陽光が
「リウスもそうだけどサンドラまで、やけに水を
二人がずっと
そのアルカサンドラ――サンドラと言えば、キッチンで
リビングに移動したさくらからは見えないが、理世がきゃいきゃいとはしゃぐ声はさっきからひっきりなしに響いてくる。
すっかりこの
あの時、二人を保護しておいて。
――
もちろん、
それでも、ひょんな偶然からではあるが、二人の異邦人が娘に笑顔をもたらしてくれていることに、さくらは感謝していた。
――
何しろ、二人の
陸とさくらは、
と言うのも、サンドラは恐らくいろいろなことを一生懸命説明してくれているのだろうけれども、その言葉がまるでちんぷんかんぷんなのだ。
少なくとも陸たちが知るどの言語でも、通じることはなかった。
――彼らが善人だとか悪人とか、そういう話ではない。
正体の知れない「外国人」というものが、この日本において問題のない存在であるわけがないのだから。
現状で
「お母さーん、洗い物終わったよー」
理世が
その後ろから、サンドラがにこにこしながらついてくる。
「理世もサンドラも、ありがとうね」
「うん!」
「あ、あり、がとう」
「サンドラ、そういう時は『どういたしまして』って言うんだよ!」
サンドラの顔を見ながら、得意げに言う理世。
「どいたまし……て?」
「ど・お・い・た・し・ま・し・て」
「どおいたしいまあしいて?」
「そう!」
理世がサンドラの両手を取り、嬉しそうにぶんぶんと振る。
にこにことされるがままのサンドラ。
そうしている
「リウス、またお水あげてたの?」
「みず、にわ」
と言って、理世の言葉に彼は
何となくだろうが、多少は意思
サンドラたちが回復してから、さくらたちはとにかく彼らとのコミュニケーションに時間を
相変わらずどこの国の言葉なのか全く分からないままでも、お互いの名前や物の名称、あいさつ等、ジェスチャーを
「あーあ、早くお父さん帰ってこないかなー」
理世の父親である
そして彼が帰り
――ベーヴェルス
それは決して嘘ではない。
魔物が襲ってくるような
隣りの市まで行けば、知人に会うこともなかろう――そう考えての計画である。
――とは言え、庭の植物に水
サンドラたちも、にこやかに手を振ったりしているので、仕方なく「日本に遊びに来ている遠い
「お父さんが帰るまでまだ時間があるから、いつもみたいに言葉の勉強、しましょうか」
――そう言って、さくらは理世とサンドラたちを、リビングのソファに招き寄せるのだった。
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