第一章 第18話 モツ
夕食
当然の
そしてようやく、報告会と検討会が始まったのだった。
◇
「――――ってことはだ」
「まず
「で、
迅も首を縦に振る。
「これでまず、檜山さんの自宅がこの周辺の可能性が高いって分かったよね」
「まあ、ちゃちゃっと調べて出てくるような情報だから、そもそも大した事実じゃねえけどな」
「あとは……
花恋が注文した山盛りのポテトスティックに手を伸ばす迅。
「もぐもぐ……それって必要かあ?」
「僕としては集められる情報は、出来る限り入手しておきたい」
「あの子に直接聞けば、それで済むような気もすんだけど……もぐもぐ」
「それは最終手段としてとっておきたいんだよ。警戒されちゃうだろうしさ」
「でもよう……もぐもぐ」
「ちょっと!
「これさ、バター醤油味っての? ハマるわ~もぐもぐ」
「もうっ!」
花恋がポテトの大皿を手元にぐいと引き寄せて抱え込む。
「私のっ!」
「ちぇー、けちー」
「けちって、あんた三分の一くらい食べてんじゃないのよ!」
「まあまあ。あ、すいませーん。ポテトのトリプルチーズ大盛りを一つ下さいー」
「はいー、喜んでー!」
慶太郎が追加で注文すると、二人が即座に反応する。
「ちょっとちょうだい?」
「俺も俺も」
「分かったから、話を進めるよ」
真面目な顔で迅と花恋に向き合う慶太郎。
どうやら彼は、多少のアルコールでは全く乱れないようだ。
「まず、迅は何か心配なことでもあるの?」
「心配っつーか」
バイオレットフィズで口の中をさっぱりさせながら、迅が答える。
彼は甘い酒が好きなのだ。
ビールは最初の一杯しか飲まない主義らしい。
「何かさー、『檜山流活殺術道場』ってのを見つけて、ヤバくねえかこれって思ったんだよ。俺はさ」
「ヤバいって、何がよ?」
花恋がサラトガクーラーをちびちび
と言っても、今日の彼女は足がスクーターなので、当然これはノンアルコールカクテルである。
「いや、だってさ、これって檜山さんが武道家一家ってことだろ? 変に
「……」
「……檜山さんが、私たちを?」
花恋は、讃羅良に腹パンされる自分の姿を想像して、ちょっとだけ怖くなった。
「……だいじょぶでしょ?」
「何てったって『活殺術』だぜ? めちゃ
「確証はないけど、僕も大丈夫だと思うよ」
「何か考えでもあるの? 東郷君」
慶太郎は頷いて言う。
「って言うかさ、まず僕たちみたいな普通の学生が、『檜山家について知ってることを教えてください』なんていきなり聞き込みするのは、アホでしょ? 怪しさ満点じゃんか」
「言われてみれば、そうかも」
「だからね、ちゃんとした調査だって
「ちゃんとした?」
「ここに来る前にさ、こんなを作ってみたんだ」
そう言うと、慶太郎はバッグの中から銀色の小さなケースを取り出した。
中から一枚の
「これって……
「そう」
「俺にも見せてくれよ……なになに、『静岡葵大学郷土研究サークル 代表 南雲花恋』?」
「何これ……
「勝手に使うと悪いから、僕の番号にしてあるよ。これを使って聞き込みをしようと思うんだ」
「あれ? 俺のがねえんだけど」
名刺ケースを
「前にも言ったように、良くも悪くも迅は目立ちすぎると思うんだ。どうしても必要な場面があれば立ち会ってもらいたいけど……一応作っとく? 名刺」
「いや、別にいいわ」
「でもさー
「別に悪いことするってわけじゃないだから、堂々とやっていいと思う。変に
「なるほど。そうかも」
「ってことはさ」
迅が首を
「俺ってまた書類調査?」
「うん。頼むよ。噓から出た
「いいぜ。任せとけよ」
「何だかさー、マジの探偵団って感じがしない?」
期待で顔をてかてかさせる花恋。
苦笑する慶太郎。
「何を今さら。尾行を失敗したのを『
「東郷君だって『
「お前らマジでノリノリだな」
「じゃああれだね、私と東郷君はこれから『
「何だそれ?」
「それっぽい身分に化けて聞き込みすることだよ」
「よく知ってんなー」
「ちなみに今私たちがやってるのは、『
「それってどんな意味なの?」
「『側調』は、本人以外のところから気付かれないように情報を集めること。『宅割り』はそのまんまね。自宅割り出し」
「じゃあ本人に直接聞くのは、何て言うんだ?」
「……何だろ。直接聞くなら『
「何かよー……
☆
それからしばらくの
「それじゃ、僕と南雲さんでまずは自宅の――えーっと『宅割り』で、迅の方は資料から情報収集と言うことで」
「OKだぜ」
「分かった」
――そして数日後、花恋と慶太郎は「
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