第七章 第26話 サブリナの憂い
時は一日だけ巻き戻り――
学校を追放された
荷物は最低限と言えども、
何度かザハドを訪れたその
山風亭の朝食は
日本円にして、およそ三百円だ。
エレディールでは三百ハーネルと言う。
その大銅貨五百枚分の価値がある
◇
「さて……これからどうしたものかな」
俺は山風亭に、とりあえず一晩の宿を求めた。
と言うより、他の宿を知らない。
ここなら宿の主人たちと
ただし面識はあると言っても、たかだか数ヶ月の付き合いに過ぎないから、あんまりこっちの事情に巻き込まないようにとは思っていた。
それなのに、ペルたちは
部屋のランクとかはよく分からないけど、最上階――と言っても四階――の二人部屋だ。
ま、ちゃんと宿代は払ってるし。
当たり前だけどさ。
で、だ。
今は俺はベッドに腰かけている。
隣りには、少女が二人。
――そう、二人。
左側に
右側に、リィナ。
仕事
もちろん、おかしな気など
ただ、こうして宿に落ち着いて気持ちに少し余裕が出来ると、自分が置かれている
……
一般社会で生きていて「追放」されることなんて、普通あるか?
しかもその原因が
「りょーすけ」
それでも、自分でも不思議なほどに
理由はよく分からないんだよな……。
一つだけはっきりしてるのが、罪の重さを全く感じていないからってことだ。
何しろ俺はやっていないんだから、気に
校長先生を
あんな死に方をしていい人じゃなかった。
そして、手を
当たり前だろう。
俺をハメた奴らだ。
「りょーすけ!」
で、問題なのは
その答えは、きっと
――俺は自分のスマホを
校長先生から
これから俺はこのデータを確認し――
「りょーすけ!!」
バチン!
「いてっ!!」
背中を思いっきりひっ
見ると、リィナがほっぺたをぷうと膨らませて俺を
瑠奈は、はぁ……と
「すまんすまん。ちょっと考えごとをだな」
「りょーすけ、はなしを、ちゃんと、する!」
「分かったって……それにしても、リィナも
「じょうたつ……なに?」
「
「もう!」
もう! だって。
もしかしたらこの子は言語方面に大きな才能があるのかも知れないな。
吸収力と応用力が
恐らく、
つまり、口で話すと同時に、同じ
精神感応だけだと話す力が
「りょーすけ、これから、こうどう、かんがえなければいけない……でしょ!」
でしょ! と来た。
多分これ、山吹さんとか芽衣
使いどころが
大したもんだよ。
「分かってるさ、心配してくれてるんだよな。ありがとう、リィナ」
「そうよ。わたし、しんぱいしてる!」
おまけに変な
きっと将来、いい女になるだろうな。
「でもな……これからのことって言っても、特に決まってないんだよ」
「きまって、ない」
「そう。一応、しなければいけないことは決まってるんだ」
「それは、なに?」
「もちろん、元の世界に戻るための方法を
「そう……」
何となく
あまり帰って欲しくない、らしい。
「でも、その方法をどうやって
「せんせー」
瑠奈が俺の服の
「お
「ヴォッド!?」
リィナが目を丸くしている。
「るぅな、ことばはなす、はなしている!」
「ああ」
瑠奈がリィナを見てにっこり笑った。
リィナが珍しくおろおろしている。
場面
学校を先に旅立った俺を、呼び止めた時だった。
おおとうとうしゃべってくれたかと感動したのも
今みたいに腹が減ったとか、トイレに行きたいとか、結局は生理現象が起きた時くらいしか口を
まあ……それでも今までに比べれば
「最近、ちょっと話せるようになったんだ」
「それは、よい、よかった」
「ご飯」
瑠奈が言うように、もしかしたらそろそろ
左手のスマホを見ると、午後六時まであと五分ほど。
例のデータを確かめるのは、メシの
「リィナ、瑠奈もこう言ってるし、そろそろ夕ご飯を食べようと思う」
「ヤァ、分かった」
「それじゃ、
瑠奈がこくりと
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