第26話「百合チームってこと!?」
「初めまして、ボクはシース姉さんの
「メタスヤァ」
「「か、かわいい……」」
眠るメタちゃんを見て、二人は見惚れる。
ひとしきり撫でた後、彼女達は自己紹介をした。
「ごほん、こっちの世界では初めてだな。アタシはリーダーのチーム〈ホワイトリリーズ〉に所属するタンク、担当ブルワークだ」
「私は同じチームに所属する、ヒーラー担当のソフィアです。いとこさんだったなんて、……ああもう納得の可愛さですね」
ボクはブルワークさんの『こっちの世界では初めて』という発言が気になり思わず尋ねた。
「すみません、以前に会った事ありましたか?」
「服をプレゼントしたって言えば分かるかな」
「ふ、服屋ってことはまさか……!?」
ブルワークは頭部装備を解除してみせる。
リアルスキャンで作られたその顔は、紛れもなく守里さんだった。
ドヤ顔をしている彼女を隣で見ていたソフィアさんは「後すこーし早ければ私も会えたのに」と少々残念そうな顔をする。
……いやはや、まさか彼女が従姉と一緒にゲーム攻略をする関係だったとは驚いたね。
オマケにSNSで情報を調べていた際、日本最強の攻略チームの情報は自分も目を通している。
だから彼女達がどれだけ凄いのかは、ボクも十分に理解していた。
第二層を世界最速攻略した日本トップチーム。
──〈ホワイトリリーズ〉。
構成員は全員女性、レベルは40オーバーの超が付く他国の攻略組からも注目されているガチ勢だ。
メンバーは公開されていなかったけど、まさかリーダーがシース姉さんで、二人が同じ所属だったとは。
最早先日聞いた
「……ああ、なんてことだ。第三層の探索に行ってるからと油断していたら、まさか早々に切り上げて第一層に来るなんて」
「なんで黙ってたのシース姉さん?」
「シエルとの関係がバレると、色々と面倒そうだったからだ。特にうちのチームは百合をこの上なく愛する者達が多いからな」
「だからチームの名前が〈ホワイトリリーズ〉なんだね」
……アレ、という事は従姉も百合好きという事になるのではないか?
真偽の程を聞こうとしたら、目の前にぐいっとブルワークとソフィアが迫ってきた。
「いやー、やはり間近で見ると良い。装備も初期からアップデートして、お姫様感が増しているのがグッドだ」
「良いなぁ。こんな可愛い子と同居してるなんて、私だったら毎日興奮して鼻血出してますよ」
「あ、ありがとうございます。でも子供体型のボクよりも、お二人の方が綺麗だと思いますよ」
「せ、清楚の化身か……!?」
「やだ、お持ち帰りしたいです……」
二人は頬を真っ赤に染めて、羨ましそうな顔をシース姉さんに向ける。
ブルワークさんは知ってたが、ソフィアさんは清楚そうな雰囲気を纏っているのに言葉の端々から危険な気配がした。
凄くて綺麗な人達だけど、少しだけ自分の中で警戒レベルが上がる。
その隣ではシース姉さんが、急に覚悟を決めたような顔をしてベンチから立ち上がった。
「こうなっては仕方がない、喋るガーディアンの件は二人にも協力してもらおう。それならシエルとメタスラがピンチに陥った時には、ブルワークの〈挑発〉で盾になってもらえるからな」
「良いね、良いね良いね良いね! その大役是非とも任せてくれ! 全身全霊を懸けて、アタシがお姫様の盾を立派に務めようじゃないか!」
「喋るガーディアンなんて初めて聞きましたけど面白そうですね、いつ出発します? 私も同行しますよ」
「……ふふ、二人とも協力の承諾に感謝する」
ハイテンションな二人に礼をのべて、シース姉さんは軽く頭を下げた。
「へへ、良いってことよ」
「リーダーのお願いだったら、なんでも聞いてあげますよ」
「おい今なんでもってぐふ!?」
手にしていた杖で頭を全力で殴られたブルワークは、くぐもった声を上げる。
だが雑な扱いをされても、彼女は何故かサムズアップをして「良い一撃だ……」と嬉しそうな声を漏らしていた。
──ヤバい、この人真正のドMかも知れない。
軽く引きながらも、どこか親友二人に似たやり取りに似ていると思う。
この三人が協力してくれたのなら、ボクにとってはこれ以上ない戦力だけど。
「……でもトッププレイヤーのシース姉さん達が、こんなところで時間をムダにして良いの? レベリングとか色々とやるべき事があると思うけど」
「それなら問題ない、私達は他と競争している訳ではないからな。それにレベル上限に引っ掛かる事を考えたら、こういう息抜きをするのは大切だ」
「そうそう、お姫様は全力でアタシ達に甘えてくれ。できればお姉様と呼んでほしい……」
「お姉ちゃん達に任せて下さい、あとブルワークさんのお願いは全スルーで良いですから」
「真面目キャラを演じやがって、オマエもちょいちょい欲望出てるくせに!」
「はー!? 貴女と一緒にされるのは心外なんですけど!」
ギャーギャー言い合う二人、実に賑やかな光景に自分は面白くて笑顔を浮かべる。
「ブルワークさん、ソフィアさん、よろしくお願いします」
こうして話が決まると、早速ボク達は〈カース・ガーディアン〉を探すために出発した。
安全エリアから出ていった四人を見送った後、上級プレイヤー達は集まって緊急会議を開く。
最初の会議内容は〈ホワイトリリーズ〉のアレは勧誘行為に入るか否か。
この件に関してはシエルがシースの従姉であり、ソロの証である白ネームだった事から問題はないとして、全員同意の上で終わった。
それよりも一番注目された議題は、たまたま聞こえてしまった喋るガーディアン。
──ではなく、二人が姉妹であった事について。
もっとも注目されている新人美少女シエル。
彼女が国内最強の〈剣聖〉シースと姉妹なんて、喋るガーディアンについて語っている場合ではない。
オマケにアイスクリームを手ずから食べさせる一件は、古参達に大きな衝撃を与えた。
鬼神か修羅の化身だと思われていた〈剣聖〉が見せたデレ、しかもシスコンだなんて最高すぎる。
普段は絶対に買わない味気のないアイスクリームを手に、上級プレイヤー達は大いに盛り上がる。
その大勢の中には、シエルの活動を陰から応援する六人が歓喜に震えていた。
「まさか〈剣聖〉の従妹様だったとは、某もびっくりの新情報でござる」
「これは素晴らしい、百合大好物の私は大歓喜だ。いいぞもっといちゃつけぇ!」
「ふふふ、てぇてぇをおかずに薄味アイスが甘い。市販の激甘アイスよりも甘いわ!」
「最強と期待の超新星が姉妹とか、もしかして異世界転生してきた勇者とお姫様だったりしない?」
「……ていうかソロ活動が多い〈剣聖〉が一緒に行動してるなんて、明日戦車が降るくらい珍しいよ。もしかして従妹様のこと大好きなシスコンの可能性がワンチャンあり?」
「拙者は無表情クール系女キャラが無邪気な少女に心開く姿大好き侍。満足してここで切腹……ッ!」
「「「「「ちょっと、まだ死ぬのは早すぎるよ!?」」」」」
本当に自害しそうになる侍少女を、慌てて止める女性達。
あっという間に連絡網で拡散された新情報。
増え続けていたシエルのチャンネル登録者数は加速し、三十万人を突破した。
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