第20話「メタちゃん最強【ファン視点あり】」
アレから気合い入れて探索していたら、気が付けばファーストエリアの奥地まで来ていた。
全てのビルを回って得られたのは、鉄片100個と鋼片20個と〈エレメント・メタル〉2個。
成果としては文句なしの大勝利だ。
まさかアレから〈エレメント・メタル〉を、もう一つ入手できるとは思わなかった。
「いやぁー、今日は大収穫だったね。最悪一つも見つからない覚悟をしていたのに、二つもゲットできるなんてすごく幸運だよ」
「メタシアワセェ〜」
〈エレメント・メタル〉を二回味わうことができたメタちゃんは、とても幸福そうな顔をしている。
この様子を見ることができただけで、今回のアイテム探索をして良かったと頬が緩む。
メタちゃんは美味しいものを食べられたし、ボクはそこから今後に役立つアイテムを入手できてWINWIN。
さて〈エレメント・ブレット〉を二つも入手できたけど、これをどの属性に加工するか。
第一層中ボスは土属性〈ミノタウロス〉。
弱点となる属性は風なので、優位に戦うのならソレを選択するのが堅実な選択だけど。
ぶっちゃけた話、第一層で〈エレメント・ブレット〉が必要になる場面はない。
中ボスも大ボスも通常の属性弾で事足りるし、強い弾丸が本格的に必要になるのは第二層からだ。
貴重な2個を直ぐに消費するのは勿体ない。
今は保留にした方が無難かもしれない。
それよりもモンスターとの戦いで、レベルが14に上がった事に注目しよう。
獲得したレベルアップボーナスは10ポイント。
全てINTに振ることで115になった。
後は35振ることで〈クロス〉〈シールド〉のレベル2を解禁できるぞ。
通常弾がかなり溜まってきたし、採掘場に引きこもる必要性はだいぶ薄い。
レベルが上限になるまでは〈エレメント・ブレット〉集めで、探索をメインにしても良いかもしれない。
「……と、いけないいけない。色々あって忘れてたけど、メタちゃんのステータス強化しなきゃ」
ふと思い出して、まだ一つも触っていない相棒のステータスを表示する。
レベルアップボーナスを振っていない、メタちゃんの初期ステータスはこんな感じだ。
——————————————————————
NN:メタちゃん
RACE:メタルスライム
LV:14
HP(体力):50/50
MP(魔力):10/10
STR(筋力):10
VIT(耐久):100
AGI(敏捷):10
DEX(器用):10
INT(知力):10
【スキル】
・メタモルフォーゼ
・メタルガード
・メタルリインフォース
・HP自動回復(小)
・MP自動回復(小)
・ブレット加工
——————————————————————
正に防御特化型スライム、防御に関しては断トツのクラス。
たぶん第一層にいるモンスターで、彼にダメージを与える事は難しいだろう。
使い魔のステータスは、プレイヤーが自分で割り振らないといけない。
現在のポイントは65もたまっている。
ベータ版の頃と同じようにVIT全振りにした。
これでメタちゃんのVITは165。
〈メタルガード〉を使えばボスの攻撃を受けても、一桁しか減らない数値となった。
しかもこのスキルは、防御貫通スキルを無効化する対防御のメタ技。
タンク性能最強と化した相棒。
強くなったのが嬉しいのか、人の腕を模した両腕に力こぶを作ってみせる。
実に頼もしい姿に拍手しながら歩いていると、正面から〈ハイゴブリン〉達が迫ってくるのが確認できた。
「よし、アレを全部倒そうか」
「メッタメタ!」
やる気満々なパートナーは、綺麗なボールに変形して合計6体に真っすぐ転がっていく。
戦闘態勢に入った〈ハイゴブリン〉達、それぞれが手にしている武器をメタちゃんに振り下ろした。
「シャアァァ!」
剣と槍と斧と形状の違う刃が、甲高い金属音を立てて突き立てられる。
だが錆びて切れ味の落ちた武器は、ツルツルボディの表面を滑るだけで傷一つ付けられない。
ならばと〈ハイゴブリン〉の一体が手にしていたハンマーで殴りつけるけど、これも頑丈なメタちゃんのダメージにならなかった。
ど真ん中で袋叩きにされても、HPゲージは1ミリも減少していない。
普通の〈スライム〉と違い〈メタルスライム〉に溶解液等の攻撃スキルはない。
つまりメタちゃんは、ここから攻撃する手段をもっていないのだが……。
「メタメター!」
気合の入った雄叫びと共に、彼は〈メタモルフォーゼ〉で自身の身体を変化させた。
滑らかなボディに、鋭い突起物がいくつも生じる。
それは一つや二つだけじゃなく、身体の至るところに生成されている。見た目はサボテンに近いだろうか。
集中攻撃の中、力を溜めるようにメタちゃんは小さな身体を縮めると、
「メッタァァァァァァァ!」
無数のトゲを伸ばして、囲んでいた〈ハイゴブリン〉達の武器と身体を貫いた。
奴らが身に着けているボロボロの鎧は、彼からしてみたらティッシュで作った鎧も同然。
四肢も貫かれて身動きの取れない子鬼達。
継続ダメージでHPが削られていき、最終的にはゼロになって四散する。
正に超硬度を誇るボディに、自在に形を変えられる〈メタルスライム〉ならではの戦法。
これをモンスターが回避するのは不可能だろう。
ただアレを見る度、とある大手会社のピンクキャラクターが脳裏にチラついてしまうが。
「メタちゃんのトゲトゲ技は、絶対にダメージを受けない、そういう自信がないとできない事だね」
「メタ〜」
戻ってきたメタちゃんを、ボクは抱っこして冷たいツルツルボディの頭をなで回す。
目を細めて手にすり寄る姿は実に愛らしくて、ずっとこうしていたくなる。
周囲の物陰から見ているプレイヤー達は、最弱モンスターの活躍に目を丸くしていた。
「あははは……。流石にこれだけ暴れたら目立つよね」
そのスライムを交換してくれ、とか言われたら面倒過ぎる。
話し掛けられる前に、この場から離脱する事にした。
建物の陰に潜む白衣装の六人が、走り去る白髮少女の背をじっと眺めている。
彼女達は周囲のプレイヤー達の怪しむ視線を意に介さず、少女に対する自身の感想を述べていた。
「いやー、昨日見た白髮少女の動きもびっくりしたが、使い魔のスライムも規格外でござるな」
「強くて美しい、オマケにカワイイ使い魔もいるなんて天は美少女に二物も三物も与えて良いと思ってるのか。……良いぞ、もっとやれ!」
「今日は鉱石集めをしていたようだね。ああいうほのぼのプレイを配信してほしいなぁ……」
「弾丸を作製する配信だけでチャンネル登録者数二十万人突破するなんてすごいよ、流石は我々の天使様!」
「あの雑音がない空間の中で、可愛い鼻歌と時々出る吐息が最高なんだよね。独り言も声量押さえてるから、囁いてるみたいでもう……」
「私達の推しが被害に合わないよう〈カースガーディアン〉を見つけて倒さないといけないな!」
「「「「「──それな!」」」」」
彼女達は全員レベル40の上位プレイヤー。
頭上のプレイヤーネームの横にある天使の羽のエンブレムは、つい先日できたばかりのモノ。
総数三十人以上が加入した、その名は〈
上位者達が数多くいるチームの目的はただ一つ。
シエルの活動を温かく見守り障害を排除する事なのだが。
少女を離れた所から見守るその姿は、誰がどう見ても不審者であった。
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