閑話1
俺はセシリア王国の由緒正しき公爵家の長男、エリック・ハインツフルトだ。
五大公爵の内、ハインツフルト家は勇者の血筋である。国内の魔木管理という重要な役目があり、唯一の役職である『魔木卿』を与えられている。
父のハイラックは国内で大きな権限を持ち、子の居ない現在の王の後継者として最有力だとも他の貴族から囁かれている。
そうなった後は、俺がこの国を掌握していかなければならない。
国のために成す。これが父の教えだ。この国のためにも、ハインツフルト家のためにも、私の力が求められているのだ。
今回の勇者召喚で、聖女になれる器が見つかったとのことで、我がハインツフルト公爵家がその護衛を任されている。
権力を使ったのではないかだと?
人聞きの悪いことを。確かに金と人脈を上手く利用してこのような結果になったわけだが、今回の勇者召喚はセシリアにとっても誤算だったと聞いている。
暴走召喚だったことにより、魔の刻が起こる可能性が高いということも。
国のために、我がハインツフルト家が護衛を買って出たのだ。称賛されることがあっても、非難されることなど何もない。
私が召喚の儀に立ち会っていれば、こんな事態にはならなかったであろう。
勇者の品評会には私も参加をした。あの娘が聖女の器か。なるほど、健康そうだし問題はないだろう。
向こうがこちらに挨拶に来るわけではないのか。なるほど、今日だけは勇者が客という立場だからな。
聖女のいるテーブルの前に進むと、 アルマティ家とローズムーン家の娘達がこちらに気づき立ち上がる。
「エリック様。こちらの皆様は、今回の召喚に応じていただいた勇者でございます。
こちらの方は、五大公爵のハインツフルト公爵家御子息であります、エリック・ハインツフルト様です」
勇者達も立ち上がり、俺に会釈をする。その時、一人の女がよろめき床に倒れた。
会場が騒然となり、倒れたその女を周りの女たちが介抱する。
聖女がオロオロとうろたえている。そんな女、お前が魔法を使えばいいではないか。
「おいお前達、まだ予の挨拶が途中で
「うるさいわね。この状況が見えないの?邪魔だから戻ってなさいっ!」
黒髪の女が俺の言葉に口を挟む。
ははっ、この俺に口答えをするか。殺すか。腰の剣に手をかけた瞬間、もう一人の茶髪女が睨みつけてきた。
「っ!?」
一瞬だったが、動きが制限されたと感じた。今はなんともない。気のせいでは無かった。
騒ぎが大きくなってしまったので、俺は護衛を連れて会場を出る。
くそっ、俺に対し反抗的な態度をしてくるとは。勇者の人数が多いから一人ひとりへの呪いの効果が薄いのか?
今回は最近勢力を伸ばしているローズムーン家の娘が担当していたはずだ。
クズが。同じ勇者の家系とはいえ、格が違うんだよ、格が。
まあいい。時間は十分ある。気に食わないが勇者には利用価値がある。潰すのはいつでもできる。
まずは聖女だ。今の出来事を見る限り、まだ魔力の解放が出来ていないようだ。都合がいい。
反抗的な態度を繰り返すようなら、操り、傀儡にしてしまえば問題はない。
この国の象徴として俺の役にたてばいい。そうすれば、俺の将来は安泰だ。
■
「今のはっ、何だったのだぁぁぁぁっ!!」
俺は、粉々になった俺の城、エリック城の敷地で仰向けになっていた。周りには側近のバーナー、秘書、執事、護衛と全員が倒れている。
俺は自分の執務室にいたはずだ。
今日は、魔の刻の可能性が高いということで、ハインツフルト家が所有する中でも1番堅固な場所ということで、俺の城に聖女を含めた勇者達を保護していた。
聖女ひとりだけで良かったのだが、王からの言葉で他の3人も着いてくることになっていたわけだ。
聞くところによると、聖女の魔法によって、不審者の撃退と同時に城まで撃退されたという、笑えない出来事が起こっていた。
ま、まぁいい。
結構値の張った絵画や調度品、魔導具‥‥‥
せ、聖女さえ手に入れば、問題はないっ!
今は、我が領内の問題が起きても被害の少ない場所に移動をさせた。
聖女をものにするタイミングを図っていたのだが、そばに付きそう男が邪魔でしょうがない。
親父にバレるとマズイため、目立つことはできない。
しかし、裏で動かす駒が見つかった。
だが、着実に準備は整いつつある。あとは、国が俺たちを認めればいい。
「フフッ、フハハハッ、もうすぐだ。もうすぐ、この世界を統べる力が手に入るのだ」
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