第319話 空き巣に入られた部屋

不景気のせいで、失業者が増える。

その失業者が生きていくために犯罪を犯す。

こんな世の中じゃなかったら、犯罪なんてしなかったという人間は多いのではないだろうか。

 

ただ、こんなのは犯罪者側からの詭弁だろう。

同じ状況でも犯罪に走らない人はいる。

犯罪に走る人間は精神的に弱いということは否定できないはずだ。

 

起きる犯罪としては空き巣や万引きなどが多くなっていくのだろう。

 

俺の周りの家でも空き巣が増えている。

本当に多い。

結構、頻繁に警察が来ていたりしている。

 

俺の家は幸いなことに空き巣には入られていない。

だが、油断は禁物だ。

 

この部屋はかなり空き巣に気を使っている。

もちろん、窓にはすべて鍵をかけ、玄関の鍵も厳重なものにしているのだ。

 

だけど、残念なことに空き巣側の技術も上がっているというのが現状だ。

どんなに厳重にしていても、数秒で家に入られてしまう。

しかも時間は夜も昼もない。

 

徹底的に調べ上げられて、家に誰もいないところを見計らって空き巣に入るのだ。

 

その日の昼間。

俺は玄関の鍵を開けて、その部屋に入る。

 

だが、一瞬で違和感に気づいた。

 

部屋が荒らされている。

空き巣に入られたのだ。

 

くそ! くそ! くそ!

 

俺は怒りと悔しさに地団駄を踏んだ。

あれだけ、しっかりと準備していたのに。

 

だが、空き巣に入られてしまったことはどうしようもない。

 

俺はそのまま部屋に鍵を閉めて、逃げ出した。

 

終わり。











■解説

語り部も空き巣犯である。

狙っていた部屋が先に空き巣に入られて悔しがっている。

 

語り部は空き巣として狙っていた部屋のことを「あの部屋」や「この部屋」と言っている。

 

また、自分の周りに空き巣が多いのは、語り部が空き巣に入っているからである。

手口を知っているから、自分の家には入られていないわけである。

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