第315話 強盗

その日は友達の結婚式の2次会でかなり泥酔していた。

 

友人たちからはホテルかどこかに泊まっていけばいいと言われたが、家で落ち着いて寝たいと思って、帰ることにしたのだ。

さすがに電車は動いてなかったので、タクシーを使って家に帰った。

 

こんなに飲んだのは久しぶりだ。

フラフラとしながらも、アパートの部屋のドアの前に立つ。

 

ポケットから鍵を出して差し込む。

 

しかし、刺さらない。

おかしいなと思いながら何度かガチャガチャと鍵を差し込もうとするが一向に入らない。

 

そこで俺は思い出した。

そう言えば、会社で社員証をポケットから出すときに、鍵や財布を一旦、机の上に置いていたことを。

 

考えてみるとそれから鍵をポケットに戻した記憶がない。

ということは鍵は会社に置きっぱなしということだ。

 

仕方がない。

 

俺はこういう時のために、部屋の窓の鍵を開けている。

そこで俺は窓を開けて部屋に入った。

 

まずは酔いを冷まそうとキッチンへと向かう。

するとそこには男が包丁を持って立っていた。

 

俺は大声を出そうとしたが、男は包丁を持ったままこっちに突っ込んできて、俺の腹を突き刺した。

 

くそ。

どうやら、人が出かけていることをいいことに強盗に入られていたようだ。

問答無用で刺してくるなんて……。

 

俺は薄れゆく意識の中、やっぱりホテルにでも泊まればよかったと後悔したのだった。

 

終わり。












■解説


語り部は一度、鍵を出して鍵を開けようとしていた。

つまり、語り部は『鍵を会社に忘れたわけではなく、持っている』ことになる。

(語り部は泥酔しているせいで、そのあたりの記憶もごちゃごちゃになっている)

では、なぜ、鍵は開かなかったのか。

語り部は泥酔して違う家のドアを開けようとしたのではないだろうか。

語り部はその家の住人に『強盗』と間違われて刺されたことになる。

(実際、語り部は窓から家の中に侵入するという怪しい行動を取っている)

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