第314話 ビニールプール

3歳の弟はプールが好きだ。

プールっていっても、学校とか温水プールみたいな大きなものじゃなくて、庭でやるビニールプールだ。

 

夏になったら、毎日のようにプールに入りたいって騒いでいる。

最初は遊ぶ弟を見ているのが可愛くてよかったんだけど、やっぱり段々とめんどくさくなってくる。

 

お母さんも、ビニールプールでも毎日は水道代がかかっちゃうから、と渋っていた。

 

だから僕はずっと水を入れて出しっぱなしにすればいいんじゃないかって言ったんだ。

そうすれば片付けなくていいし、水道代もかからないから。

 

でもお母さんは、それだと衛生上よくないからダメだって言うんだ。

 

だから今度は、僕は学校のプールの水も毎回取り換えてないよって言った。

そしたら、お母さんは学校のプールは塩素を入れているから大丈夫なんだって言ったんだ。

 

塩素っていうのは、プールの下に沈んでいる、丸いラムネみたいなやつらしい。

 

そこで僕はこっそり、学校のプールで塩素をゲットしてきた。

これを入れれば大丈夫なはずだ。

 

僕はビニールプールに塩素を入れた。

そしたら、弟が拾ってかじろうとしたから、慌てて止めた。

 

僕も前にかじろうとして、先生にすごく怒られた。

あれは食べちゃダメなものなんだって。

 

それでも弟は塩素を食べようとする。

 

そこで僕は考えた。

家にあった、大きいラムネを弟に渡したんだ。

 

弟は喜んで食べたけど、今度はそのラムネをプールに入れ始めた。

 

もう、ホント、困った弟だよ。

 

終わり。














■解説

ラムネにはクエン酸が入っている。

クエン酸は安全なものだが、塩素と混ぜると塩素ガスという有害なガスが発生してしまう。

語り部と弟は有害なガスを吸うことになる。

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