第85話 見える少年

その少年は感受性がとても高く、幼いころから他の人が見えないものが見えると言って、周りを驚かせていた。

 

少年の話では、いわゆる幽霊や妖怪などがはっきりと見えるらしい。

今まで少年は見えることで、なにか危険なことに遭ったということはないが、やはり人に見えないものが見えるというのは、不気味だし、周りにも気味が悪いと言われ続けていた。

 

だが、少年が高校生になったころ、いわゆる心霊ブームが起こった。

何を見ても、心霊特集がやっていて、周りもそのブームに乗っかり心霊スポットに行くことも多かった。

 

心霊ブームというのもあり、少年は周りから持て囃された。

幽霊が見えることを羨ましがられ、みんなが危機として、幽霊がどんな姿かを聞いて来る。

 

今まで気味が悪いと言われていた少年にとって、それは新鮮で嬉しかった。

 

そんなある日。

少年は友達と、老婆が自殺したという家に、肝試しに行った。

 

入ってすぐに、少年は苦しそうな顔をする老婆の姿をはっきりと見た。

そのことを友達に告げると、友達は悲鳴を上げて逃げて行ってしまった。

 

少年は霊を見慣れているので、逃げるということはしなかったが、老婆がどこか悲しそうな表情をしていたことが気になった。

 

次の日。

少年たちが行った家は、少女が病気で死んだ家だと聞いた。

 

そこで少年はもう一度、その家に行ってみることにした。

するとそこには、青白い顔をした少女の霊が立っていた。

 

終わり。













■解説

少年は「感受性が高い」ということと、老婆を見た次の日に行くと、少女の霊に変わっていたことで、少年は幽霊が見えていたわけではなく、「思い込みの幻想」を見ていた可能性が高い。

今まで害がなかったことも、裏付けとなっている。

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