第29話
「カウンセリングって何のカウンセリングですか?」
私は驚いて尋ねた。あの弁護士が私のことを気にかけてくれていたらしいことはすなおに嬉しかったけど、そういう話し合いが労働局であったらしいことは初耳だった。女性職員が言うには、就業に関して、合理的配慮が必要な人に対して、カウンセリングの後で、もっと配慮のある環境を探すのだという。いまの清掃バイトだけでは生活していけないし、かといって新しい仕事をゼロからハロワで探すのも億劫だった。
「障害者手続きとかそういう話ですか?」と訊くと
「そうなるかもしれない、でもそれには医師の診断が必要ね」と女性職員は答えた。生きていくためには働くことが必要で、ひとつの職場で長く働くためには、なぜうまく働けないのかを調べてみる必要はありそうだった。そういうカウンセリングを受けることで、少しでも長く続く仕事に就けるかもしれなかった。だから私はそのカウンセリングに行くことにした。メンヘラーになってしまうかもしれないが、そんなことを言っている場合ではなかった。普通の人として働くにはハードルが高いことをいまならすなおに受け入れられそうだった。そのくらい傷ついていたことにはじめて気づいた。
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