第25話

 しかし、減量によって点点は体力を失っていったし、かといって減量をやめると、また無精卵を産んで今度こそ卵詰まりになって落鳥する危険が高かった。時限爆弾だ。毎年、春になると数羽のインコとこういう綱渡りになる。雌のインコを飼わなければいいのだが、かといって雄のインコには精巣嚢腫という別の時限爆弾があるから悩ましい。でも次に飼うのなら、孵化して1年以上経過した雄にしようと決心した。雌のインコは卵詰まりを起こすたびに二十四時間以内に動物病院に飛び込まなければならないし、そもそも街の動物病院で鳥類の診察ができる医院は十軒に一軒もない。だからとなりの区までタクシーで駆けつけることになってしまうし、そういう病院では二時間待ちは普通だ。冬から春へ移り変わるころ、悩みがどっと増えるのはこういう事情もあった。

 例の弁護士から電話があった。電話をかけてきたのはあの弁護士だった。「前の派遣先の企業との話し合いがまとまりました」と言う。「その書類を作ろうと思いますので、一度事務所の方へ来てもらえませんか」

一も二もなく承諾して印鑑を持って事務所に行くと、あの弁護士が迎えてくれた。今日はあの別の人はいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る