第59話 薬師育成24 研修本番 / 後半戦11 最終パート8 

そんなこんなで悪戦苦闘を続ける事約1週間、ようやく魔力操作Lv4~5チームの魔力操作が安定してきた。

これならいけるか?

と言う事で先ずはこの面々で再度合成実習にチャレンジだ。


前回やった通りに錬成釜を用意して、手順に従って材料と投入し処理を行っていく。

大豆液を入れて馴染ませ、白殭蚕茸の処理済み品を投入し、樹分馴染んだら白殭蚕茸の滓を漉しとり、芍薬の根液の投入だ。こいつも十分に馴染ませたら、チャガ、麻黄液、魔茸(笑茸系催眠茸)を順々に馴染ませつつ、馴染んだら滓を漉し取り、地祇の薬材を投入する作業を繰り返す。

そして、丸一日に近い作業の末に、ようやく当帰の順番がやって来た。

当帰の薬効成分は茎葉にある精油分に多くが含まれるので、精油分が揮発しない様に直前に荒く粉砕する程度の状態にして投入する。


後は、前回痛い目にあった合成熟成のパートだ。

延々と煮溢さない様に火の調整をしながら釜の中をかき混ぜ、かつ投射する魔力を切らさないように出力を調整&偏向して魔力投射をポーションが完成するまで丸1日近く続けるだけだ。


今回チャレンジするのは、チームLv4~5に所属する8人だ。


頑張ってくれ。

俺のボーナス(追加報酬)がかかってるんだからな。www


幾つもの工程を細切れにして、なるべく連続しない様に実習の設定をしたが、最後の合成工程はある程度慣れている妻でも丸1日半以上の時間が必要だ。


不慣れな研修生が手順を確認しながらでは、ロスも含めて2日以上必要になる。

俺にせよ、研修生にせよ、泊まり込みでの実習を覚悟しなければならないのだが、実際には泊まる=寝る事等叶わないメチャクチャブラックな環境で連続しての作業になる。


俺にしても、やってるヤツをを尻目に寝る事など出来る訳もなく、特に最後の合成工程での魔力の連続投射の工程では、研修生の投射する魔力の状態なども確認しつつ、必要に応じて指示を出す必要があるので、メッサきつい。

正直そのきつさは研修生以上だ。


それでみんなが製薬に成功する事が出来れば、その甲斐あったという事になるのだが、期待できる成功率は2割程度。正直、やる前からブルーが入りそうな話だ。

研修生達にしても、成功率2割でも仕事である以上、止める訳にはいかない。

それぞれが覚悟を決めて、半ば悲壮な顔をしながら作業を開始していく。

後は、釜の中での反応が止まった時に青味がかった緑色をしていればしめたものだ。

余分な滓を漉し取ってやれば薄青色をした液体、アンチエイジング液の完成のはずな訳だが。果たしてそれだけの完成品が錬成釜の中に残っていてくれるか…


俺の能力で8人いる研修生全員を同時にモニターする事など出来る訳も無いので、基本はコアの持つダンジョンの状態の把握能力に任せて、適当に監督をする振りをしつつ時間を潰す予定だ。

コアからの連絡は頭の中に直接テレパシーで来るので、研修生に気取られる事無くコアと遣り取りする事が出来る。

ただし、あまりボケっとしていると、週1で提出している業務報告に差しつかえるので、暇だの何だのと余計な事を考えながらも、研修生各位の状況を把握する事を忘れてはいけない。

一応、サポートで妻も監督員として監督作業を手伝う事になっているが、つまるところ妻も俺も飾りの様なもんだ。


それと、今回も丸2日がかりの長丁場だ。

特に最後の薬材の当帰を入れた後は終了するまで、基本的に一瞬でも気を抜くどころか目を離す事も出来なくなる。

まぁ、失敗したくなければ、と言う条件が付くし、スキルが生えてある程度レベルが上がれば、多少はリカバリーも出来る様になるのだが、それまでは気合勝負としか言えない部分が多いのも事実なのだ。

下手に俺が手伝うと、それが原因で製薬が成功すると言う事態になるかも知れないが、研修生が経験を積むと言う意味ではかなり微妙な事になってしまう。


一応実習室はダンジョン内低層の安定した環境下にあるので、ある意味完全な空調付きの部屋に居る様なモノで、温湿度管理にと言う意味でも問題無く、熱射病・熱中症などの心配はいらないが、その場を離れる事が出来ない以上、どうしたって軽食や水分補給などで介助してやる必要がある。

もっとも、あんまり変なものを飲み食いさせると後が大変な事になるので、あくまでも空腹感等を紛らす程度のプロテインバー的な物やのどを湿らせる程度の少量の水分補給に類する必要最低限程度の物しか出せないのだが…

一応、食事制限や高分子吸収体を内側に配置した使い捨ての実習用インナーの配布、エアフローを考慮して錬成釜周辺からの匂いなどは床で吸着する様にする等、最悪の状態ならない様に一通りの対策はしてある。後は気合で頑張って欲しい。


そんな感じで、実習がスタートした。


流石に魔力操作スキルが一般的な意味でも中程度のレベルに達しているメンバーだ。一度確り経験している作業でもある。

恐らく自分の中で一通り流れをおさらいをする等のイメージトレーニングを繰り返してきたのだろう。

かなり安定した流れで薬剤に対する処理を行っていき、かなり順調に、殆ど妻がやるのと変わりない速度とスムーズさで、工程を進めていく。


そしてついに最初の一人目が最後の薬材:当帰を投入するタイミングがやって来た。

ここ迄の処理にかかった時間は約半日(11時間)弱、うちの新人の助手はもとより妻がやるより余程手際が良いスコア(時間)だ。

彼女は魔力操作スキルを研修生最高のLv5で生やしている、正にライトスタッフ(正しい資質を持つ者)と目されている人物で、中間報告の成績などからも製薬会社からも最も期待されている人物もである。

正直、そうでなければ、うちの助手に来ないかと声を掛けている位だ。


少しだけ交代して、栄養の補給やトイレい行かせるなどの時間を与える。

ここで当帰を投入してしまえば、もう後は成功するにせよ失敗するにせよ、碌に休憩する事さえ出来なくなるのだ。

その間わずか10分程。俺の作業が製薬結果に影響を与えない様にギリギリ状態を維持する事だけに留意して釜の管理を行う。


やがて、小休憩から戻った彼女と交代して、諸々状態が安定したのを確認して、当帰が投入された。


さあ、ラストスパートだ。


*************************************

こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る