第53話 薬師育成18 研修本番 / 後半戦5 最終パート3

そんな感じで、座学2+実習2がスタートした。


この実習で扱う魔草類は3種類を予定している。

・当帰(トウキ)は、茎葉に血液循環を高め、呼吸や物質代謝を高める効果があり、また、細かく刻んで干したものを、入浴剤代わりに使うと不眠症や肩こりなどの解消も期待できるらしい。更に延髄中枢に対して刺激作用があるため魔茸の催眠効果を打ち消す効果をある程度期待できる事から魔力投射による効能の強化を行う。

・芍薬(シャクヤク)は、根に(老化等による代謝の低下を含む)虚弱した体質の改善効果があり、消炎・鎮痛効果を魔力投射で増強する事で他の原料(特に魔化したチャガ)の効能をアンチエイジング方向に誘導する様に偏向を加える。

・麻黄(マオウ):地上茎を用いて鼻詰まり、気管支喘息に効果がある事が知られているが、加えて有効成分に血圧上昇作用などの強い覚醒作用がある。この覚醒作用を魔力投射で強化する事で魔茸の催眠効果の相殺をする。


このパートの実習をおぼえる事が出来ると実習3でも尖り過ぎた性質持つ魔草類のマイナス方向の効能を抑えて、欲しい性質を引き出す事が出来る可能性がグッと増す。

実際には、魔草類の調整が終わった段階で、魔草類の下処理を覚え、薬効の抽出過程を経て、最後の合成段階へと続き、最終的な効能の調整に至る訳だ。


因みに、実習3で取り扱う魔草類は下記の通り。

・魔茸(笑茸系催眠茸):催眠効果の高い胞子を放出する。加えて繁殖能力の中に新陳代謝機能をコントロールする機能があるので、投射する魔力の方向性を調整する事で新陳代謝機能を高いアンチエイジング方向に誘導する調整をする。

・チャガ(カバノアナタケ / シベリア霊芝):シベリアを産地とするサルノコシカケというキノコの一種で、生きた白樺に寄生します。抗がん(細胞の異常増殖抑止)効果、免疫力の強化作用などの恒常性維持作用、活性酸素除去作用、抗菌作用、生活習慣病抑止作用、アレルギー疾患の予防と改善作用、慢性肝炎や慢性腎炎の予防と改善作用などが期待できる。

本来、殆ど副作用らしきデメリットの報告されていない茸だが、魔化して効能が強化された事に拠って、不妊の副作用があるらしい。

投射する魔力の方向性を調整する事で恒常性維持作用を強化する方向に調整する。

・白殭蚕 / お白様(おしらさま):カイコガ科のカイコの幼虫が白殭病菌の感染により硬直死した乾燥虫体の事で白殭病菌の菌糸部分が薬効成分になる。てんかんや夜泣き、中風(脳機能障害)、傷薬、延命薬としての効果が期待できる。

魔化によって自己修復機能が大幅に増強されたが、チャガ同様不妊の副作用も増強される事が確認されていて、現時点で解決の目途がたっていない。

投射する魔力の方向性を調整する事で自己修復機能を強化する方向に調整する。


白殭蚕は魔草じゃないだろうと言う意見があるかもしれないが、必要な部分は白殭病菌の菌糸部分なので、うちでは魔草(魔茸)として扱っている。


また、恒常性維持や自己修復が強化されると言う事は、自身の体から異質な部分を除去する事になるので、ある意味最も顕著な異質物である生殖関連の減数分裂細胞作製機能が制限される事になるのはある意味まっとうなトレードオフの関係になるので無理のない部分であると思われ、現時点で解決の目途は立っていない。


そんな訳で、座学2+実習2がスタートした訳だが、想定通りと言うか、何と言うか、まぁ予定通りに、魔力操作Lv2~3の面々は順調に習得を続け、Lv1の面々は習得に苦戦している。やはり投射する魔力に偏向を加えると言うのは、スキルレベルの低いメンバーにはきつい様だ。

適性の高い連中はサクッとおぼえる事が出来るんだけどね。


結果、1週間が過ぎて、このパートをクリアできたのは、魔力操作スキルがLv3に上がった4人と、Lv2の18人内15人だ。

なお、この間Lv2だった6人がLv3に上がった。

残念ながらLv2の残り3人とLv1の2人の5人は、この課題をクリアできなかったので、引き続き次週も実習2を継続だ。


課題をクリア出来た19人については、座学3+実習3をやってもらう。

残りの5人についても、座学3だけは受けておいてもらう。

なお、今回は人数が半端になってしまったので、1組3人で組んでのグループになってもらう事になった、この段階まで来ると、スケージュール的にも厳しいため課題の習得状況に合わせてグループは毎日抽選で変更する必要があって、聊かあわただしいが、こればかりは納期の関係もあるのであきらめてもらうしかない。


やってもらうのは、予定通り、魔茸、チャガ、白殭病菌に対する取り扱いの習熟と強めの偏向付き魔力投射実習だ。また今回の魔草類は癖が強くて、雑に扱うと外からの刺激が無いと覚める事の無い眠りに就いたり、治る事の無い不妊になると言う碌でも無いペナルティが付く事になるので、慎重にやってもらう事になる。

また、実習前に対応策の実施を行うとともに、実習内容の違う実習2チームとの隔離をする必要がある。

実際には実習室を区切って仕切りを入れて、エアカーテンで交互に空気が行き来出来ない様にする物理的隔離と、毎日実習開始前に対抗薬の投与と使い捨て実習着やマスクの配布を行うとともに、終了後に徹底した掃除と実習着の廃棄をして、間違えても漏れがで無い様に配慮する必要がある。(万一の為に耐性を持たない実習2をやるメンツにも対抗薬は飲ませる。)


一応、1日程度魔草類に暴露しても恒久的な問題は出ないはずではあるが、杜撰な管理をして実習生全員が不妊症になった等、洒落にならない話だ。

対抗薬や魔法薬の類で、効果100%の効き目で丸1日は維持できるはずで、その後は徐々に効果が落ちて行く形でそれなりの期間効果が継続するはずではある。また、追加で投与してもそこから効果がリセットされて発揮されるだけで副作用等は無いはずなので問題は無いはずではある。

ただし、ちゃんと治験を行った訳では無いのであくまでも見込みでしかない。


実習3で行う魔力投射はかなり魔力の偏向度合いが特殊で、かなり厳密な魔力の調整が必要になる。という訳で今までの様にみんなまとめてでは無く、一件毎に一人一人始めからアジャストさせながら指導していく事になるので、立ち上げにものすごく時間がかかる。

とは言え、この実習は最長2週間時間があるから、3種類の魔草、実習1、2を入れても7種類なら、復習時間を入れても十分に習熟出来るはずの計算だ。

研修期間もあと1月半少しと残りわずかだ、気合を入れて頑張ってもらおう。


*************************************

こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る