第52話 薬師育成17 研修本番 / 後半戦4 最終パート2
予定通り、座学1+実習1の1週間が経過した。
その間、見込み通り魔力操作のLv1だった面子の中からLv2になる者が6名出たてくれた。これなら後半の製薬パートで薬師が生える者も1人位は出てくれるだろう。
ここ迄は概ね見込み通りだったのだが、Lv2からLv3になる者も1名出てくれた。
彼については、これで魔力操作研修で初めて魔力操作を生やした功績に次ぐ2回目の金星だ。
引き続きこのまま薬師を生やすまで順調に推移して欲しいものだと思う。
続いて最終節2週目は、座学2+実習2の1週間だ。
この時点で既に魔力操作がLv2以上まで到達しているメンバーは21人に達しており、このまま順調にいけば、この辺のメンバーを中心に薬師スキルが生えてくれる事が想定される。設定されている研修期間もあと2カ月弱程でもあるし、是非ともこのまま行って欲しいものだ。
そして、現時点で魔力操作Lv1の3人については、薬師取得は難しいかもしれないが、このまま腐らず実習を続けて欲しいものだと思う。
今週取り扱ってもらう製薬材料は、3種の魔草だ。先週扱ってもらった大豆の魔草に比べると、聊か癖があって、取り扱いが難しい魔草になるが、此処をクリアできないと、3週目の魔草などとても扱えないと言うか、実習させる事ができないので、是非とも頑張ってクリアして欲しいと思う。
このパートと3週目については、1週間でクリア出来ない事を想定して、併せて3週間の時間を確保している。
また、残念ながらここをクリア出来ないメンバーに関しては、命の危機に関わって来る可能性があるので強制リタイアとする事を、依頼元とも調整済みだ。
ただし、座学4~6の受講と実習4~6の見学だけはできる様にしてある。
リタイア確定後、会社に戻るか、座学4~6のだけは受講して後は見学だけで我慢するか、完了しない事を前提にクリアできるところまで実習を継続するかは当人の判断に任せる事になるが、決して見学するだけであっても意味がない訳では無い。
諺に言う『他人の振り見て我が振り直せ』と言うのは、製薬作業において実に有効な金言だ。特に失敗を見て自分がする時に繰り返さない様に肝に銘じておけると言う意味においては、実に有効な言葉だろう。
そんなこんなで座学2+実習2がスタートした訳だが…
この段階で世話をする魔草は、3週目に扱う魔草類の効能を調整する方向で機能する事が期待される魔草類になる。
どんな薬でもそうだが、効き過ぎは良くないのだ。
基本的に薬と言うのは適量を服用する事で最大の効果を期待できる。
一部の機能だけが極端に効き過ぎると言う事は、体の別の部分に過度な負担がかかってしまうと言う事になりかねないので、服用に細心の注意を払う必要性が生じる。
もっとも、今回扱っているアンチエイジング液に関いては、継続使用する事で明らかに若返りに近い効果が期待できるので、アンチエイジングの本来の意味≒老化を抑えるをかなり過剰に超過するのだが、効果は確かな様で継続被験中の名目で絶賛利用中のサロンのメンバーは破産でもしない限り継続使用してくれる様だ。
最も、妻が提供する際に支払ってもらっている対価を、同等の効果が期待できるヒールポーションに比べて大幅に抑えている…高騰前の水準に抑えている事に加えて、継続使用しないと代謝アップの効果が失われて、せっかく見かけ上若返ったのに元の状態に戻ってしまう事なども理由のようだが、まぁ、この辺はデリケートな問題なので深く追求すまい。
何せ、原液は元ネタが怪我を速攻で快癒してくれるポーションだった事もあって新陳代謝を大幅に増進して、細胞のターンオーバーなんかも促進してくれるから、成長期のケア不足で出来たニキビの跡やシミ・雀斑なんかの類もきれいに消してくれるからな。
それを原液で今のポーション価格の10分の1、維持液で100分の1で入手できるんだから、真面な神経していれば裏切れるはずもない。
それを私欲に負けて転売した挙句に今後も売れだ?
全くどの口が宣うかね?
因みに『若返りに近い効果』と表現しているのは、「テロメア」自体を再生する事で最盛期の新陳代謝を実現している訳ではなく、「テロメア」の長さによる代謝能力の調整の軛を離れて最盛期の新陳代謝を再現している為で、液を連続投与し無くなれば効果が無くなって本来の年齢として妥当な代謝状態に戻るからだ。
話が逸れたが、この強力なアンチエイジング効果を実現するには、実習3で調整を行う魔草類の副作用部分の効果の抑止、相殺を行う事が重要になって来る。
この副作用の抑止、相殺を行うのが、この実習で扱う魔草類だ。
例えば、実習3で扱う魔草(魔茸)の中に、トラップゾーンで催眠誘導に使われる魔茸がある。
この魔茸は、所謂マジックマッシュルームと呼ばれる様な菌類の1種で、放出する胞子に非常に強い催眠誘導成分を含んでおり、この胞子を吸い込んで睡眠効果に負けて眠りに落ちた者は、胞子の供給が続き呼吸を続ける事が出来る限り覚める事の無い、永遠の眠りに誘導される事になる。
だが、実はこの部分自体はこの茸にとってさほど重要な部分ではない。うまく催眠性を減衰させる事が出来れば、有効な催眠薬(催眠誘導剤)が出来る程度だ。
重要なのは眠った後だ。獲物を覚める事のない眠りに就かせた後、この茸は獲物の新陳代謝機能をコントロールして、色々ゆるゆる駄々洩れの状態(自身を増殖させる苗床として好ましい状態)に調整したうえで繁殖を行うのだ。
当然、使うとある程度のアンチエイジング効果は期待できるのだが、色々垂らしまくりの状態で眠ったままになる等と言う、お漏らし眠り姫製造薬に需要などあるはずは無く、胞子から強力な催眠機能の除去と新陳代謝機能をアンチエイジング方向を誘導する必要がある。
実習3で扱う魔草類は全てこの様にある程度有効な効能と極端なデメリットを併せ持つ様な魔草類なので、ある程度の耐性を持たない者が不用意に触ると、ある意味致命的な結果をもたらす事になる様な魔草ばかりなのだ。
本来であれば、実習3で弄る魔草類の事を踏まえて耐毒性スキルや薬師スキル(薬師は毒を扱うので基礎的な職業スキル内に低レベルの耐毒性を有していて、短時間・適切な処理を行うだけなら毒に侵されない。)を生やした状態で実習が出来れば理想的なのだが、研修期間と言う壁がそれを許してくれない。
更に薬師スキルを生やす方法として、諸般の事情(アンチエイジング液以外のレシピを公開しない)を考慮すると実習3は欠かせない。
実習3をやるなら薬師スキルが必要で、薬師スキルを短期間に生やすなら実習3が必要、と言う「卵が先か、鶏が先か」的な状態な訳だ。
そこで妥協策として、先ずは実習2で性質誘導のある程度性質調整能力を習熟させて、実習3以降は扱う魔草類の毒性に対応できる様になる対抗薬剤の投与を行って、短期間であれば簡単には魔草の悪影響を受けない状態にした上で経験を積んで貰う形にしたの。
後は当人たちの適性次第、天に運を任せて頑張ってもらおう。
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こんなヨタ話のネタを信じて使う人は居ないと思いますが、この小説で記述する処方はいい加減です。何となくホントっぽく書いている心算ですが絶対真似しないでね。
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