第5話 帰路

ゆっくりと歩いていたからか、学校の校舎から出る頃には3人の姿は見えなくなっていた。


(どこ行ったかな)


と考えながら校門の方へ歩いていると、校舎のそばで3人を見つけた。

3人は無言で踊っていた。

ダンスのように特定の振りがあるわけではなく、くねくねと少し乱暴な動きで踊り狂っていた。


歩きながら3人を見るとBと目があった。

「何してるの?」と聞こうとしたが、すぐに目を逸らされてしまった。

まるで道で通りすがる人をチラッと見るような、そんな感覚だった。


今度はCの顔を覗き込んだ。

目は窪み、目の下がクマのようなもので真っ黒になっていた。

まるでそこに穴が空いているように黒かった。


Cの顔を見たオレはギョッとして、その場から足早に去った。

帰ろう。オレに帰る場所などないけれど。

でも、このままここに居てはいけない。


学校を出て、街の明かりを求めて歩き続けた。

せめて今夜だけでもやり過ごせる所はないかと。


歩いている最中、オレはハッとした。

もしかしたらソレは。貞子のようなあの人は。

3人からオレを離れさせようと背中を押してくれたのか?

だからオレの前に現れたのか?


いくら考えても答えなんて出るはずはない。

あの光景を信じる人だっておそらく居ない。

けれど、それでいい。

希望と温もりをもらえたから。

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