ローズ・ブラッド -友のために運命を背負う者-
桜塚あお華
第0章 プロローグ
20××年、4月5日 01
運命は、突然訪れて、突然終わる。
ずっと、ずっと一緒だと思っていた人が、突然死んでしまったら、誰だって混乱する。
今、自分の目の前には血まみれになった彼女が、笑顔で言ってきた。
「じゃあ、『
友人だった種所は、笑いながら突然そのような言葉を言ってきた。
晴喜と呼ばれた人物は、その意味など全然分からず、泣きながら何度も首を横に振った。
それぐらい、今、目の前の友人がいなくなる事が、恐怖で仕方がなくて、怖くて。
少女は晴喜の右手を取り、手のひらを指でなぞる。
「わたしね、晴喜にだったらなんでも預けていいかなって思ったの。だって晴喜はあたしの最初で最後の『親友』だもの」
「……ルル?」
「すごく楽しかった。晴喜はあたしの知らないことをいっぱい教えてくれた。だからあたし、晴喜に恩返しがしたいの。きっと……もうすぐ晴喜に会えなくなっちゃうから、その恩返し」
「え……」
「ありがとう、晴喜。あなたに出会えて、あたしは幸せだった。『化け物』ではなく、『人』としていろいろと教えてくれて、嬉しかった」
笑顔で言う彼女の意味が、晴喜には理解できなかった。
どうしてそんなことを口に出していうのかわからない。
晴喜はそのまま、少女の手を強く握る。
「嫌だ!せっかく……せっかく私はお前と友達になったのに……どうしてそんな事言うんだよ!もしかして、私の事が嫌いになったのかルル!!」
「……違うよ晴喜。あたしはね、こうして外に出ちゃいけない存在だったし、それにこうして晴喜みたいに『友達』を作っちゃいけない存在だったんだ」
「ルルっ……」
「でも晴喜もあたしと同じ事を考えてくれたんだね……よかった」
少女はまた笑う。
だけどその笑いは、決して良い方向での笑いではなく、これから晴喜と永遠の別れをしてしまうから、そのような言葉が出るのだと晴喜は悟る。
晴喜は手を放そうとせず、ずっと握ったままだ。
しかし、少女はゆっくりと晴喜の手を放そうとしている。
「ねぇ、晴喜」
「……なに?」
「ここの薔薇園、本当に綺麗だったよね」
「……」
あたりを見回すと、少女の晴喜の周りには無数の薔薇が植えられている。
二人はその中心に座り込みながら、同時に少女は愛おしそうに赤い薔薇を見ながら、口を開く。
「あのね、晴喜……もう一度ここで、あなたと会えることがあったら……」
「え……」
「そうしたら……そうしたら私と――」
▽ ▽ ▽
「出席番号10番、
「……んぁ?」
ゆっくりと目が覚めた時には、そこにあの薔薇園の姿など全くなく、目線の先にいたのは笑顔でチョークを握りしめながら立っている一人の女性の姿があり。
数学教師、
晴喜の周りにいる生徒たちはクスクスと笑っている姿が見える。
とりあえず晴喜は今の状況を理解しなければならないと思いながら、なぜか眠気が襲い掛かってきたのでもうひと眠りをするような体制になる。
「寝るんじゃねェって言ってるだろうがこのボケェッ!!」
次の瞬間、晴喜の頭に安藤明菜が放つこぶしが振り下ろされたのだった。
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