濃霧の扇子

 赤宮さんは踵をつけてピンっと姿勢よく立って、腕を組み、堂々たる立ち姿でハウスの者たちの前で佇んでますが……あ、お狐全裸を排除しようと剣を抜いて屈強な男たち3人が受付の奥から出てきました!


「お前、知ってるぞ。つい昨日だか、一昨日だかに出現した新手の変態だろう?」

「へっへっへ、新人の指名手配者か! 悪事を重ねて財団に指名手配されるのは気持ちいいよなぁ〜? わかるぜ、その気持ち。でもよ、調子に乗るんじゃあねえ。俺たちは『マナイタスキーハウス』だぜえ?」

「どうして俺たちがこうしてハウスを名乗り、でかい顔できてると思う。強いからさ。ここじゃあ強さが法だ」


 3人の男たち、赤宮さんを取り囲んで……足運びが素人じゃないです!


「全裸野郎〜てめえの手配書はここにあるが……けっ、懸賞金たったの20万程度でこんなに調子に乗れるなんて逆に才能だな」

「お前は勘違いしてるんだぜ。懸賞金をかけられてるのはてめえだけじゃあねえ」

「ここにいる俺たち3人、みんな指名手配者だぜ!」


 男たちは自信満々に自分の手配書を掲げました!

 なんということでしょう! この悪党たち!


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   WANTED

 『バランス良い山本』


【手配度】 ★

【懸賞金】60万円


【特徴】

 バランスの良さ

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   WANTED

  『歯抜け童貞』


【手配度】 ★

【懸賞金】45万円


【特徴】

 笑うと前歯がない

 童貞

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   WANTED

  『姉がブス』


【手配度】 ★

【懸賞金】70万円


【特徴】

 姉がマジでブサイク

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「俺たち3人あわせりゃ、懸賞金175万! てめえとは器がちげえってわけさ!」

「そのふざけた仮面をとって土下座をすれば許してやるぜ!」

「この『姉がブス』の田中は許さねえけどなあ! ひゃっはは!」

 

 あの最強の武器『濃霧の扇子』を持っていないところを見るに、あれが特殊な武装で、人前で使えば身バレに繋がることを危惧していることはわかります。流石は赤宮さん。ただの全裸じゃないです。これはインテリ全裸と言っても過言。

 しかし、彼の必殺技フォックスアタック……は対複数では不利なはず。

 赤宮さんいったいどう対処するつもりなんでしょうか。


「もう言葉を交わす必要すらないな━━全裸の呼吸・二の型フォックスウィンド!」


 またしても無実の狐の印象を落としつつ、技を繰り出す赤宮さん。

 軽やかに飛び上がり……あっ、脇の下に隠していたあの扇子━━『濃霧の扇子』を素早く仰ぎます。出しちゃった! 特に身バレ予防とか考えてませんでした、この全裸!


「な、なんだ、いきなり風が!」

「うぎゃあああ、踏ん張りがきかねえ!!」

「こ、この威力はまさかこのアジトごと……!?」


 マナイタスキーハウスのアジト内を嵐が駆け抜け、相対していた3人の男たちは旋風に撒かれて吹っ飛ばされていきました。おお、なんという威力!


「制裁完了。扇子で制裁してしまうとは、絵面が少し華やかになりすぎたかな」


 大丈夫です、安心してください。

 赤宮さんが全裸のおかげで絵面は依然としてマイナス値のままです。

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