第65話 修羅場② 誰も救わない聖女
重苦しい雰囲気…
まさかもう一度この二人に会うとは思わなかった。
リヒトの優しい性格なら、こうなる可能性もあった筈。
しかも、いきなりなんだから…どうしようかしら?
何も考えていなかったわ。
「それで? なんで救世の旅に向かった『聖女フリージア』が此処に居るのか? 不思議だな…」
「フリージア、私は友達だと思っていたのですが?違うのかな?」
目が笑っていない。
しかも、この手…
恨まれていても仕方が無いのかも知れない。
「私はカイトのパーティに嫌気がさして『救世』の方を選びました。私も一緒に遊んでいたから、そんなに強く言えませんが、あの時の行いが正しい行動かどうかは自分の胸に聞けば解る筈。そして一緒に行動するならリヒトの様な人格者と行動した方が良い。そう判断しただけです。それが何か問題でもありますか?」
これでどうかな?
流石に言い返せない筈。
「あれ、可笑しいな? 救世ならなんで比較的、安全な南に居るのかな~」
「北の方が怪我や病気の被害にあって苦しんでいる人が多いよね?可笑しいよ?」
「それは北には優秀なヒーラーが沢山いるからです」
「可笑しいな? 南より北の方がヒーラー不足だと聞いたよ?」
「そうだよね?どう考えても可笑しいよ…無理があるよ」
もう面倒くさい…
「ハイハイ…もう解ったわ!リヒトが好きな事に気がついたから追いかけてきたのよ! 思ったとおりよ! それで何がいけないの?責められる謂れは無いでしょう?」
文句なんて言われる筋合いは無い。
私はちゃんとした手順を守って『救世』を選んだ。
馬鹿らしくてやってられないから救世なんてしていないけど…二人に文句を言われる謂れはない。
これは私の問題。
二人は関係ない。
「本当に救世をするのならいざ知らず。そんな理由でいきなり消えるなんて最低だぞ」
「そうだよ、おかげで私達は…こんな事になったんだよ…ふざけないで…よ」
それは責任のすげ替えだ…
「まず言わせて貰えば、その手は自分達の責任でしょう? ちゃんと計画も立てずに討伐をした結果じゃない。カイトを責めるなら兎も角、その場に居ない私に責任転嫁しないでよ」
「だが、フリージアが居たら少しは違ったはずだ」
「そうだよ、貴方が居たら、すぐに手当てが出来た筈だよ」
「無理ね! 今の私じゃ、その腕の治療は出来ないから結果は何も変わらなかった。ちゃんと考えて行動しないからそうなるのよ! 私も言えた義理じゃないけどね…」
「無責任だぞ」
「ずるい」
「昔の私は可笑しかったのよ…簡単に言えば馬鹿だった。これは今だから言える事、当時カイトのパーティから抜けたのは『恋愛』だから、これは只の偶然。だから偉そうに言えない…だけどね、本当の敵は『魔王』じゃないわ…これは言える」
「魔王じゃない?」
「魔王は人類共通の敵でしょう」
本当の敵は魔王じゃない…人間だ。
そんな事まだ解らないのかな。
「違うよ、本当の敵は人間…それが此処に来て思い始めた事よ。そして今回の件でそれが良く解かりました。散々勇者パーティだと持てはやして…負けたら『責任を全部押し付けられて奴隷落ち』レイラもそう…貴方達もそう…だから『本当の敵は人間』魔王じゃ無いわ」
「フリージア?」
「幾らなんでも言い過ぎだよ…人間が敵なんて…」
「敵だよ…多分リヒトが手を回さなければ…貴方達は良くて『性処理奴隷』下手したら買い手がつかなくて廃棄扱いで殺されていた可能性もあるんだよ…少なくともレイラはそうだった」
「それじゃ…騙されていた。そう言う事だ」
「騙されていたの?」
「私は、少なくともそう思っている! だって騎士でも領主でも負けても此処迄の責任はとらない…自分達が勝てないからって押し付けて負けたら、責任追及…そして、一般人から貴族迄誰も助けない…そんなの敵としか思えないよ」
「フリージア…確かにそうかも知れない…それじゃ『敵』だとしてどうするの?」
「戦えないでしょう?」
「だから、私は報酬無しで『誰も救わない聖女』を目指しているの…仲間は別…他の人間はどうでも良いわ! 表向き、救世のポーズはとるけど、極力誰も報酬無しで救わない。目の前でゴブリンに襲われている人間が居ても、食べられそうな人間が居ても報酬が無いなら助けない。オークに犯されている女が居ても笑いながらお金が無いなら通り過ぎる…そういう聖女が私の目標よ」
「フリージア…幾らなんでもそこ迄…」
「救える者は救いたい…」
この二人は馬鹿なのかな?
「そう思うなら勝手にすれば!だけどリヒトは私達が戦いに関わらないで良い様に『南』を目指しているんだよ…レイラもリヒトも私も報酬無しじゃ人は救わない…例え人間が何万、何億単位で死んでも、救うつもりは無い…そう決めたんだけど。それでも貴方達は誰かを救いたいの? もし、その力を使うなら、そんな惨めな姿になった貴方達を救い、今後も面倒見ようとしているリヒトだけで良いと思うよ…まぁ仲間という事でレイラや私も助けてくれたら嬉しいけどね」
此処迄言って解ってくれないなら…私の中で『二人はどうでも良い存在』だ。
「あはははははっ、そうだね誰も助けてくれないなら、助ける必要ないや…あはははっ、王と教皇が斬れるなら斬り殺したくなってきた」
「確かに、うんうん、もうどうでも良い存在だよね」
どうやら、解ってくれたのかな。
「斬るのは不味いから…助けない、これ位が丁度よいと思うわ」
「「「そうだね」」
そう言いながら、二人は涙を流している…まだ頭で割り切れてないのかな。
お知らせ
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を書いて見ました。
良かったらお目汚し下さい。
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