第57話 旅の終わり




どうにか私たち二人は宿に帰ってきた。


可笑しい?


アランが居るが顔が笑っていない。


当たり前か…


私もミルカも腕が無いんだから当たり前だよね。


何故かその傍にロザリーが居る。


いつもなら、ロザリーはこちらに顔を出さず、カイトの傍に居る。


まさか、カイトが死んだのか…


先に私達を置いて逃げたけど…逃げきれたかどうか解らない。


「アラン、どうかしたの?」


「なんだか、顔が怖いよ…ロザリーも何かあったの?」


「「…」」


いつも笑っている二人が笑っていない。


しかも、話しかけても答えて来ない。


「どうしたんだ!アランにロザリー…この腕が気になるのか? まぁ冒険者をしていたんだ、こういう事もあるさ」


「そうそう…何とかなるって」


「なりませんよ…もう終わりです」


「そうですよ…その腕で、世界が救える訳ないじゃないですか? 只のビッチな雌女」


「なっ、私はこれでも剣聖だ、その口の利き方は無いだろう?」


「そうよ、これでも私は賢者だよ、口の利き方に気をつけなさい!」


「私はこれでも上級信者で教会公認の上級ヒーラーです。口の利き方に気をつけるのは貴方の方です」


「そうですよ…元四職のお二人さん…おや、そろそろ来たみたいですね」


「何事?」


「一体何?」


沢山の騎士が、私達を取り囲んでいる。


「一体これはどう言う事だ?」


「説明をなさい!」


「リダ、ミルカ、二人の剣聖、賢者の地位をはく奪する…理由は解るだろう」


「待って私達はカイトと一緒にワイバーンと戦った…結果負けただけだ」


「そうだよ…確かに失敗はしたけど…それだけでこれは可笑しいよ」


幾らなんでもこの扱いは可笑しい。


「確かにそのようですが…問題はリーダーであるカイトがお金を持ち逃げして逃亡した。そして、今回は今までの償いの討伐であったが、その失敗に…王はお怒りだ…諦めるんだな」


「ならば…」


「うん…えっ」


「片腕が無い剣聖に杖も腕も無い賢者…この人数の騎士に勝てると思っていますか? 」


私は剣を捨てた。


「投降する…それで私達はこれからどうなるんだ?」


横でミルカが震えている。


「さぁ…ですが、前の勇者のレイラが奴隷落ちですから…それ以下になるのでは無いですか?」



私達の旅はこれで終わった。


恐らくこれから先は地獄しかないだろう…


「リダ…こんな事になるなら、私、賢者になんてなりたくなかったな…」


「そうだね…」


◆◆◆


私はあの時のリヒトの事を思い出した。


「悪いが今日でクビだ」


「そうか、まぁ良いや」


あの時の目…なにかから解放されたような目をしていたな。


「ついて来られないのは分かっているだろリヒト」


「いや、カイト俺、今『まぁ良いや』って言ったんだぞ! 追放に同意しているんだが…まだ話はあるのか?」


すぐに同意していたな。


「いや、俺はもう2度と皆とは会わないから、どうでも良い事なんだけどな」


「違うよ! よく考えて見ろよ! 此処で俺が別れるよな? 恐らく数年後にカイト達は魔王と戦う…負けたら4人が死んでもう俺には会えないだろう」


その後は急に…良い話をしだしたけど…


『4人が死んでもう俺には会えない』その言葉を思い出した。


『それじゃぁな』


そう言ったリヒトの顔は凄く晴れ晴れしていた。


そうか…そうだよな。


リヒトは知っていたんだ。


近い将来こうなる事を。


『勇者パーティの栄光は勝利の先にしか無い』


かなり昔にリヒトが言っていたよ。


『だから、今は死ぬ程努力した方が良い』


そうも、言っていた。


そうか…遊んでいる暇なんて無かったんだ…


死ぬ程修行して強くならないなら『終わり』が待っている。


そういう運命だったんだ。


それを怠ったから…もう戦えない。


リヒトは追放されたんじゃない…私達を見限って去った。


それだけだ。


◆◆◆


「私の人生は終わった…そう言う事ね」


「リダ…」


「ミルカ、諦めが肝心だって、此処で頑張ってももう遅い…処刑されるのか、奴隷落ちか解らないけど…もう終わり…諦めよう」


「そう…もう終わりなんだ…私達…それじゃ仕方ないな。解ったから何処へでも連れて行って」


「立場が解ったようだな…捕縛しろ」


「手の無い女に大げさな….」


「仕方ないよ…」


こうして私達二人は拘束され、馬車に乗せられた。


多分…この先はきっと地獄しか無い…









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る