ガチャ129回目:大渋滞
前回と同じく見張りの人に通してもらい、俺達は東側の砂浜でシザークラブを狩り始めた。
あの時は弓で楽をしてたけど、今回は前に出て剣で戦う。シザークラブの殻は見た目通り硬いのだろうが、武器レベルの高い『ミスリルソード』と俺の膂力をもってすれば、簡単に両断することができた。
『鋼鉄』系の武器だと弾かれただろうなぁ……。高い買い物をしただけの事はある。
そうして不慣れな足場にもたつきながらも、高いステータスと適応したスキルのおかげもあり、短時間で100匹撃破を完了。そのまま『デスクラブ』とも戦い、剣で制する事に成功した。
【レベルアップ】
【レベルが7から45に上昇しました】
シザークラブ狩りでレベルが3から7に上がった為、低レベル補正も多少抑えめになっただろうけど、しっかり45まで上がってくれた。
しかし、待望の騎士は現れることはなかった。どうやら、2000ですら確定には足りないらしい。
「湧かないか……」
「本当にシビアですのね。今まで発見報告が無かったのも頷けますわ」
「私達では、ご主人様のようにレアモンスター出現の煙は見えません。資格がない者がいくら狩ろうと、レアモンスターは姿を現さない。……ご主人様の仮説通りであれば、特化した者でなければ姿を拝む事は叶わないのでしょう。この領域を体験できるのはご主人様あってこそですよ、お嬢様」
「ええ。わたくし達は、本当に貴重な体験をさせて貰ってるのですわね」
「そんな畏まらなくても良いのに」
「あ、えへへ。旦那様~」
アヤネを撫でつつマップを確認する。
やっぱり、前回も今回も、『デスクラブ』は100匹目を討伐した場所にそのまま出現していた。となれば
「よし、このまま南側に進もう。なあアヤネ、折角だし、道中の雑魚を魔法で吹き飛ばしてもらっても良いかな?」
「お任せくださいですわ! ウィンドストーム!」
風の暴力が、直線上にいたシザークラブを巻き込み煙に変えていく。
この魔法は、中心であればあるほど威力が高く、外側にいくほど威力が弱まるらしい。その為、魔法の外周にいた何匹かは倒しきれず、その連中が呼び水となって連鎖反応を引き起こし、倒した数以上のシザークラブがこちらへと向かってきていた。
「はわわ、大変ですわ!」
「アヤネ、落ち着いて。連中はノロマだから、魔法を撃つチャンスはまだまだある。そうだな……左と右、合計2回ほどぶっ放そうか。危なそうなら俺達で援護するから」
「は、はいですわ! ウィンドストーム!!」
そうして、落ち着きを取り戻したアヤネがシザークラブを盛大に吹き飛ばすさまを、俺達は特等席で眺めるのだった。ドロップはほとんどないけど、これはこれで楽しそうだな。
真似したくても『元素魔法』のせいで、通常版の魔法を取得して一気に広範囲魔法! って力技、出来ないしなぁ……。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「南側も、景色は一緒なんだな」
「そのようですね。ですが、このモンスターの密集度合いは、かなり危険ですが」
アイラはアヤネを背負いながらそう告げた。
魔法を盛大に撃ちまくり、『魔力』を消費したアヤネは、文字通り疲れ果てていた。まあいつも、ちょこちょこと魔法を打つくらいで、あんな風に連発する事なんて滅多にないもんな。
「さっきみたいに魔法を使ったら、もっと危険な事になりそうですわ……!」
「でも、なんだかんだ言って、さっきは捌き切ったじゃないか」
「それは……旦那様が後ろで見守ってくれていたからですわ」
「そんな謙遜するなって。アヤネもちゃんと成長してるよ、もっと胸張って良いんだぞ」
「本当ですか?」
「ああ。アイラもそう思うだろ?」
「はい。お嬢様は立派に成長しております。あの人達を追い抜ける日も必ず来ます」
「……! が、頑張りますわ!」
あの人達?
2人の会話に少し気になる所はあったけど、それは後でいいか。
「それじゃ、狩りを始めようか」
「はい」
「旦那様、ファイトですわ!」
◇◇◇◇◇◇◇◇
その後、シザークラブを100匹倒し、そのまま『デスクラブ』を討伐。またしても『甲殻騎士』は現れず、レベルも上がらなかった。
だがここで、更なる問題が生じた。
今度は西側に行きたいわけなのだが、ここのモンスターの群れは本当に異常だった。
20匹前後の群れがいくつもあるのは東側と同じだったが、その数が尋常ではない。あっちは最大でも集団は6か7程度だったというのに、こっちは30以上はある。その為、あちこちで集団の輪が重なり合うほどに大混雑をしていた。
こんな中をアヤネに吹き飛ばしてもらうのは大変だし、かといって俺が手を出して、モンスターがひしめき合う中央部分で『デスクラブ』どころか『甲殻騎士』まで出現したら地獄絵図になるだろう。
ここは大人しく来た道を戻って、北側から西に入った方が良さそうだ。
「仕方がない。ここは一旦引こう。足が遅いとはいえ、この数に囲まれると厄介だ」
「簡単に倒せる旦那様が手を出せないというのは、なんとももどかしいですわ」
「レアモンスターが邪魔になるなんて、考えもしなかったよ」
「あうう。……旦那様、わたくしがレベル6の風魔法を使っても、どうにもならないのですか?」
アヤネはここまでの成長と、前回の『黄金の実』パワーもあり、『知力』は1000を超えていた。その為、アキやマキがいなくとも『知力』900制限の魔法は軽く使用することが出来るようになっていた。
「サイクロンは、確かに強力な魔法だ。けど、あれは一定の範囲内で風の暴力を発生させる魔法なんだ。だから、今回のように全域に敵がいる場合だと、これまた何発も撃たないといけなくなるんだよね。まだサイクロンを『真鑑定』で覗いていないから消費がどの程度か分からないけど、レベル5のウィンドストームの連発であんなに疲れてたんだ。流石にきついでしょ」
「そうですね。この後強化体との戦闘も控えています。『金剛外装』分の『魔力』は残しておいた方が無難でしょう」
「あぅ……」
落ち込むアヤネを撫でて宥める。
「ちなみにレベル7魔法はまだ使えそうに無いかな?」
「はい……。使えそうにないですわ」
「そっか。ま、それはゆっくりで良いよ。東の砂浜の北側で、食事でもしてゆっくりしよう」
「はいですわ」
俺達は来た道を戻り、東側の安全地帯で食事をして一休みをした。
その後、お昼時ということもあり、大繁盛している海の家を横目に、北側の砂浜を横断する。
そうして同じように西側へと繋がる洞窟前で見張りをしている協会員に挨拶がてら雑談をすることにした。
「お疲れ様です。Aランク冒険者のアマチです」
「お疲れ様です。支部長から話は聞いております」
「あの……可能ならで良いんですけど、今からやるので、誰も通さないでいただけると助かります」
一応ここのダンジョンの協会員には、俺がやってる内容……。レアモンスター狩りについて情報共有がされているはずだ。なので多少無茶かなとも思いつつ、保険は掛けておくことにした。
しかし、協会員は少し気まずそうにしている。
「あー……。それは少し、厳しいですね」
「やっぱり、Aランクの権利濫用になりますかね?」
「いえ、アマチさんは当協会の恩人であり、なるべく便宜を図る様にと支部長からお達しも来ています。我々も協力したいところなのですが……」
「何か、問題が?」
「はい。今日はタイミング悪く、先客がいまして……」
「先客!?」
こんな所で狩りをする変わり者がいたのか?
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