ガチャ114回目:正々堂々?
「アヤネ、『金剛外装』を張るぞ」
「はいですわ!」
俺もアヤネも、初回の『デスクラブ』戦の慎重さを思い出し、『金剛外装』を展開する。あの攻撃は持続力のあるものじゃなさそうだし、一発耐えるだけなら無印でも問題は無いと思いたい。けど、アヤネをあんな攻撃に晒すのは避けたいから、どうせなら俺を狙わせたいな……。
念のため俺は、アイツの射線がアキとマキへと通らないように、彼女達との間に入る。この状況で後ろは向けないが、マップで見る限り、彼女達はジリジリと距離を置いてくれているようだった。まあ、音を立てて逃げれば標的にされるかもしれないもんな。
こんな時でも、彼女達は落ち着いて行動してくれている。本当に出来た子達だ。
「さっきはよくもやってくれましたわね。ビッグファイアーボール!」
アヤネは見せつけるように大きく叫び、3つのビッグファイアーボールを呼び出した。
あのレーザービームのような必殺技は、槍に水を纏ってから発射するという2工程がかかる。初見だったからビックリしたものの、2度目となれば俺達は『金剛外装』で防げるし、アイラだって隙は見逃さないはずだ。
「喰らいなさいですわ!」
『ギチギチッ!』
『甲殻騎士』は再び奇妙な音を発しながら、連続で迫り来る炎の球を避けるように動く。
「甘いですね」
しかし、避けた先ではアイラが待ち構え、魔法との挟撃を仕掛けた。その結果、『甲殻騎士』はアイラの攻撃だけでなく、魔法すら被弾してしまったようだった。
『ジュワアア……』
だが、あまり効果が無いらしい。あの鎧は物理にも魔法にも強いのか、短剣で切り裂く事は叶わず、アヤネの魔法でも焦がすだけに留まった。
「……『紫電の矢』」
俺は『カイザーヴェイン』を構え、光を手に持ち引き絞る。
いくらこの技の威力が高くても、それだけではあの鎧を貫くことは難しいだろう。ならば、どうするか。もっともっと、力を込めれば良いだけだ!
「『剛力Ⅱ』『怪力Ⅲ』『金剛力Ⅱ』『力溜め』」
『力溜め』については、ガチャで引き当てた時に聞きそびれたから、効果の詳細は分からない。けれど、スキルはどれも名は体を表すものばかりだ。
ならば、こうやって弓を引き絞っているだけで、力が増している気がする……!
「アイラ、離れろ!」
「はいっ!」
アイラが飛びのき、ついでにアヤネも距離を置くと奴の頭部が、ゆっくりとこちらを向いた。
ゴツゴツした全身鎧は顔までも覆っていて、奴の表情は読めない。だが、この突き刺さるような殺意は、間違いなく俺を視ている証拠だ。
『ギチチッ!』
奇妙な音を鳴らしつつも、奴は槍に水を纏い始めた。そしてその視線は、変わらず俺を捉え続けていた。
「ハハハッ!」
騎士って名前がついてるから、もしかしてと思ったけど、
さあ、やりあおうぜ。存分にな。
「おおおおらッ!!」
『ギチッ!!』
引き絞られた光と、岩をも削り取る水の槍は互いに激突した。
光の矢は水の槍を食い破り、相手の騎士へと向かっていくが、相手の槍は3本ある。三叉槍の両端から放たれた2本の槍は健在で、俺へと真っ直ぐ向かっていた。
『ギチ……』
『甲殻騎士』は、相討ちを望んでいたのだろうか?
その雰囲気は、どこか満足気な物を感じた。
「だが、悪いな」
水の槍は黄金の膜に遮られ、霧散。
対して光の矢は、敵の装甲を貫き胴体に大穴を開けた。
「俺、無敵スキルあるんだよね」
そういうと、『甲殻騎士』からはショックを受けたような空気を感じた。
正々堂々と勝負を仕掛けておいて、不意打ちで勝ったような感じになったけど……。
「結局、戦いってのは負ける方が悪いんだよな。無敵技を持っていなかったお前の負けだ」
俺がそう呟くのを聞き届けたのかは知らないが、『甲殻騎士』は煙を吹きだし、霧散した。
どうやらここも、レアⅡが最後の敵らしい。
【レベルアップ】
【レベルが1から98に上昇しました】
「わぁお」
「やりましたわ! レベルがいっぱい上がりましたわ!」
「私もです。感謝します、ご主人様」
「ああ、皆お疲れ。アイテムを回収して、2人の所に戻ろう」
煙が晴れたそこには、武器防具に複数のスキルオーブ。
そして、『金の宝箱』が落ちていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ショウタさん!」
「ショウタ君!」
『ゴンッ!』
「きゃっ!」
「痛っ!」
「あっ……」
2人は俺に飛びつこうとして、黄金の壁に頭から激突した。
尻もちをついた彼女達が、恨めし気にこちらを見上げている。
「ご、ごめん。2回分まだ残ってた……」
「ぶー」
「ショウタさんは、私達を拒絶なさるんですね……」
「え!? いやいやいやいや、そんなことないよ! 2人の事は、滅茶苦茶大好きだからっ!」
「「あ、あぅ……」」
半分冗談で言ったんだろうけど、俺の慌てた返しに2人は赤面し、顔を俯く。
恥ずかしがる2人を見て、こっちもちょっと勢いつけ過ぎたかなと反省していると、背後から不穏な気配がした。
『ガン、ガゴッ!!』
ものすごい音が背後から聞こえ、ゆっくりと振り返ると、アヤネが杖を黄金の壁に打ち付けていた。それにより、『金剛外装Ⅲ』は役目を果たし消えていったのだが……。
アヤネの笑顔に凄みを感じる。
「旦那様、わたくしは!?」
「あ、ああ……。大好きだよ」
凄みが消え、ぱぁっと明るい笑顔を咲かせた彼女は、いつものように愛くるしいアヤネになっていた。
いつの間にか、彼女の外装も消えている。
戦闘中に出来なかった事として、俺は丁寧に彼女を撫で回すことにした。
「えへへへ」
よしよし。
「ご主人様」
「アイラの事もちゃんと好きだよ」
「存じております」
「あ、さいですか」
アイラは彼女達と違って露骨に喜んだりはしなかった。
けど、どことなく喜んでる気配は感じる。
「それよりも私としましては、今日一日、全ての戦いで前衛を務めました。ですから、何かご褒美が欲しいですね」
「あ、ああ……、そうだったね。ご苦労様。何が良いかな……」
「はい。ですので今晩の閨、楽しみにしていてくださいませ」
「「「「!?」」」」
アイラの発言に、全員が驚愕に包まれた。そういえば今日は、順番的にアイラの日になるとは思ってたけど……。
え、俺何されるの!?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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