第44話 スキャンダル発覚!?

 学校へ到着して、教室へ向かう。

 いつもと変わらぬ喧噪に安心感を覚えつつ、俺は自席へと座り込む。


「よっすー朝陽」

「おう雄人」


 クラスメイトの雄人と挨拶を交わして、くだらない雑談に興じる。


「どうよ、最近部活の調子は?」

「おかげさまで絶好調だぜ。新治は最近、寺山さんとの関係はどうなんだ?」

「まあ、可もなく不可もなくって感じかな」

「んだよそれ。つまんないなぁ。とっとと『好きです。おっぱい揉ませてください!』って告っちまえっての」

「だから、それで告白が成功するなら苦労してないっての」


 そんないつも通りのくだらない話をしていると、教室前の扉から、テニスバッグを背負った上白根が登校してきた。



「おはよー」

「よう上白根」

「……うん、おはよう」

「あれ?」


 上白根は俺達に軽く一礼すると、そのまま自席へと向かって行ってしまう。

 普段なら、元気よく声を掛けてきてくれるというのに。

 上白根の様子がおかしいことに、雄人もすぐ気づいたらしく、俺に何かあったのかというような視線を送ってくる。

 俺は肩を竦めて、分からないとジェスチャーした。

 改めて二人で上白根を見て見ると、頬杖を突きながら、窓の外を眺めている。

 上白根の様子がおかしいことを疑問に思っていると、予鈴のチャイムが鳴り響く。

 各々席へと戻ると、教室の前の扉から担任教師が入ってくる。


「出席確認―。よし、全員いるな。えぇー特にこれといった連絡事項はありません。それと、昼休み新治は職員室に来るように、以上」


 手早くHRが終わる。

 てか待って、今超自然な流れで呼び出し食らったんですけど⁉

 担任教師が教員簿を手に持ち、何事の無かったかのように教室を出ていく。

 教室内は、俺へ憐みの視線が向けられていた。


「まーた新治の奴、何かやらかしたのか?」

「なんか噂だと、女子更衣室覗き込んだとか言われてるらしいよ」

「最低、マジ信じらんないんだけど」


 何か知らないけど、俺すら身に覚えのない根も葉もない事実無根の噂が流れてるんだが⁉

 まあ、俺の今までの言動を考えれば仕方ないことだけども……!

 俺は心変わりしたんだ。

 そんな女子更衣室を覗き込むなんて真似は絶対にしない!

 仮に、向こうから見せてきたら、遠慮なく見ますけどね!(ゲス)

 とまあ、そんな感じでHRも終わり、つつがなく授業が始まるのであった。



 ◇◇◇



 昼休み、俺は言われた通り職員室へと出向いていた。

 そのまま、職員室と校長室の間にある応接室へと通される。

 ソファに座っていたのは、謎のスーツに身を包んだ白髪交じりの髪をしたおじさまだった。


「君が、新治朝陽君かね?」

「はい、そうですけど……」


 俺が恐る恐る肯定すると、スーツ姿のおじさんは、内ポケットからおもむろに名刺を取り出した。


「初めまして、私、こういうものです」


 そう言われて名刺を受け取ると、そこには『きょプロダクション常務取締役 多田ただ』と書かれていた。

 ちょ、えっ、代表取締役!?

 しかも、葵先輩が所属するうちの学校のミスコンの協賛もしてくれている大手プロダクションじゃないか。

 そんなトップがどうしてわざわざ俺なんかを呼び出したんだ⁉


「とりあえず、席に付きたまえ」


 向かいに座っていた教頭先生に言われて、俺は多田さんの向かいの席、共闘の隣へと腰掛ける。

 多田さんは終始笑顔のままこちらを見据えてきていた。

 それがより一層、圧を感じて寒気がしてくる。


「わざわざ基調はお昼休みに来てもらってすまないね」

「いえ……とんでもないです」


 俺はそう言って、手を横に振った。


「今日君を呼び出したのは他でもない。三保みほのことで呼び出したんだ」


 葵先輩には先日、婚約するつもりはないと断りを入れたばかり。

 もしかして、その件で何か問題でも起こったのだろうか?


「実はね、この写真が今度週刊誌に載ることになって……」


 そう言って、おもむろに差し出されたのは、この前俺がカフェで葵先輩に断りを入れた時の場面が切り抜かれた写真だった。


 見出しには『日本の国宝おっぱい。既に彼氏の手の内にあり!?』と書かれている。


「心当たりはあるかい?」


 多田さんに問われ、俺はぶわっと一気に冷や汗が出てきてしまった。

 そう言えば、葵先輩も俺が先輩の元へ戻る羽目になるとか言ってたけど、こういうことだったのか……。


「はい……心当たりあります」


 俺は俯きながらに首肯することしか出来なかった。


「なるほど、つまり君は、葵と近しい関係にあるということかな?」

「いえっ……断じてそう言うわけではありません。俺と先輩は、中学の頃からの友達ってだけで――」

「正直に話してごらん。怒ったりしないから」


 そう促してくる多田さんの顔は笑っているけど、目が完全に圧を掛けてきている。

 しばらく助けを求めるように視線を泳がせるものの、俺の見方は誰一人いない。

 ついに諦めたようにため息を吐いて、俺は事の経緯を正直に話すことにした。


 葵先輩に突如婚姻届けを差し出されて求婚されたこと。

 自分が断るためにカフェに出向いたことなどを話した。

 もちろん、おっぱいがどうとか、桂華ちゃんのおかげとか言う部分は省いて。


「なるほど、事情は分かった。通りで三保みほに追及しても口を開かないわけだ。結婚を君に申し込んでいるなんて世間にバレたら、今の仕事が無くなってしまうのは必然だからね」

「本当に軽率な行為に出てしまい、申し訳ありませんでした」

「いやいや、君が謝る事じゃないよ。こちらこそ、葵の暴走を事前に止めることが出来ずに申し訳ない。彼女は今、大切な時期なんだ。今スキャンダルなんてあろうものなら、彼女の今後のキャリアに傷を負いかねない。ましてや、相手が高校生ともなれば、話しはさらに複雑になる」

「そうですね」


 素人の俺にだってよくわかる。

 身体を売りにしているグラビアアイドルだからこそ、男関係が透けて見えてしまえば、世間からの非難やバッシングを食らうのは必然の事。

 下手すれば、当事者である俺にも被弾しかねないわけで、彼女の迷惑にだけは絶対になりたくなかった。


「とにかく、これが事実無根であるならば、こちらとしても厳正な対処を取らせてもらうよ。時間を取らせてしまって悪かったね」

「いえ、こちらこそありがとうございます」

「それじゃ、私はこれで失礼するよ」


 そう言って、多田さんは席を立ち、隣に座っていた教頭先生に連れられて応接室を出て行った。

 一人取り残された俺は、緊張の糸が切れたように、ソファへ背中をもたれ掛けさせる。


「っぶねぇ……マジで週刊誌とか洒落にならんわ」


 なんか、とんでもない経験をした気がするけど、改めて三保みほが全国でどれだけ世の中の男性が重宝しているのかを思い知らされるきっかけになるのであった。

 これからはもう少し、葵先輩と会うときは、場所と時間はわきまえよう。

 まあ、結婚を断ったばかりで、しばらく会うこともないだろうけどね。


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ちっぱいを大きく育てるラブコメ~おっぱいをおっきくする魔法の手を持った俺、貧乳美少女達から頼まれて、バストアップトレーニングに付き合うことになりました~ さばりん @c_sabarin

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