第34話 ワンピ巨乳の正体

 見知らぬワンピース清楚系美少女に、家の前で声を掛けられました。

 全然思い出せずにいると、ワンピ巨乳美女がむっとした顔を浮かべる。


「その顔は、覚えてないな? もーっ、私のおっぱいに顔埋めておいて覚えてないとか、罪にもほどがあるぞ?」

「えっ……え⁉」


 ヤバイ、全然思い出せない。


「もう、しょうがないんだから」


 とそこで、何を血迷ったのか、ワンピースを脱ぎ始める巨乳美女。


「ちょ、道端で何やってんすか⁉ 止めてください」


 俺が必死に止めようとするものの、黒髪巨乳美女は、バサっと脱ぎ捨ててしまう。

 その先に見えたものは……たわわに実った谷間と、トリコロールの水着だった。


「やっほーみほみほのおっぱい占い。始まるよー♡」


 胸元を寄せて、こちらへ見せつけてくる巨乳美女。


「あ、あなたは……⁉」

「もーっ、やっと思い出したの? 顔覚えられてないのショックなんだけど。やっぱり君は、おっぱいにしか目が無いんだね」


 そう言いながら、彼女は俺の頭をガシっと掴むと、そのまま自身の胸元へと抱き寄せてしまう。

 俺の顔面は、彼女の温かい胸元へと包まれる。


「お兄さん⁉ 何やってるんですか⁉」


 遠巻きに見ていた桂華ちゃんが、俺が顔面を顔に埋めてしまったので驚きの声を上げている。

 あぁ……懐かしいこの感じ。

 彼女のおっぱいに埋まったことで、俺の記憶が呼び起こされ、走馬灯のように駆け巡った。



 ◇◇◇



 四年前、当時中学一年生だった時の事。

 俺は、思春期特有の悩みに直面していた。


 キャピキャピしている女の子達の一団を見て、発育が良い女子生徒の胸元へ、視線が勝手に行ってしまうという病気。

 男としての欲が始まった瞬間でもあり、この抑えきれない欲望をどう発散したらいいのかもよく分かっていなかった。

 女の子と男の子の明確な距離感みたいなのが生まれて、俺は異性とどう接したらいいのか分からず、一人校舎裏でひっそりと項垂れていた時の事。


「はぁ……」


 彼女に出会ったのは、その時であった。

 ため息が聞こえてきたので、隣を見やれば、横からでも分かるほどにボールのような大きさを誇るおっぱいがそこにはたゆんと揺れている。

 俺はその大きさを目の当たりにして、視線を動かせなくなってしまう。

 すると、そんな俺の熱い視線に気づいたのか、体操着姿の女の子がこちらをちらりと覗き込む。


「君もやっぱり、おっぱいが大好きなんだね」


 彼女の声は、どこか軽蔑等より諦めに近いような声音をしていた。


「あっ、ご、ごめんなさい……」


 俺は咄嗟に謝って視線を逸らした。


「いいよ。もう日ごろから男子生徒に見られまくってるし」


 そう言う彼女は、どこか元気がない様子で俯いてしまう。


「あの……どうかしたんですか? こんなところで一人ボッチで」

「それ、君が言う? ここ、私が普段から一人になりたい時に来る場所なんだけど」


 ここは、校舎裏にある備品置き場。

 普段使われることは少ないので、人が来ることも滅多にないスポット。

 俺はそこで、たまたま体操服姿の女子生徒と鉢合わせたのだ。


「君、名前は?」

「えっと……新治朝陽です。一年です」

「一年かぁー。じゃあまだ学校入りたてだ。どう、中学校の生活は慣れた?」

「まあ、そうですね……友達作りは上手く行って、苦労はしてないですけど……」

「けど……?」


 俺の言葉の続きを尋ねてくる女子生徒。

 言っていいものなのか悩んでいると、女子生徒がはっとした様子で声を上げる。


「あっ、ごめんね! 私は三保葵みほあおい。三年生だよ」


 忘れてたといったように自己紹介をしてくれる三保先輩。


「えっと、三保先輩でいいですか?」

「葵でいいよん。もっと気軽に読んで。私も朝陽って呼ぶから」


 いきなりフランクに名前呼びされてしまった。

 けれど、今の俺にとっては、その気軽さが心の救いになってくれる。


「それで、朝陽はどうしてこんなところにいるワケ?」


 葵先輩が再び仕切り直したように尋ねてくる。

 先輩なら、話してもいいかなと思い、俺は自身の気持ちを吐露することにした。


「その……最近なんだが、自分が自分じゃない気がして嫌なんです」

「どういうこと?」

「なんて言えばいいのか分からないんですけど、小学校の時までは、普通に男女分け隔てなく遊んでたのに、中学に上がった途端、なんだか男女間に壁があるような気がしてて……」

「あぁーなるほどね。まあ思春期だし仕方ないよね」

「はい……自分でもそれは理解してるつもりなんですけど、どうしても女の子のおっぱ……胸元ばかりに勝手に視線が行くようになってしまって。邪な感情が沸き上がってくる自分に嫌気がさすんです」

「ありゃりゃ……もしかして、おっぱい嫌いなの?」

「嫌いというか……好きになっちゃっていいのかなって。なんかこのままだと、自分が自分じゃなくなっていくような気がして怖いんです。今まで仲が良かった女の子とも、どうかかわって行けばいいのか分からなくなっちゃって……」

「そっか……色々と君も悩んでて大変なんだね」


 俺が自身の気持ちを吐露すると、葵先輩は優しく共感してくれる。

 すると、今度は葵先輩が語りだす。


「実は私もね。君と同じような悩みを抱えてるの」

「えっ……そうなんですか?」

「そっ。ほら、見ても分かる通り、私のおっぱいって大きいでしょ?」



 そう言って、葵先輩は自身の胸元を両手で持ち上げてみせる。

 ぐにゅりと形が変形して、すんごいことになっていた。

 俺は思わず、ごくりと生唾を飲み込んでしまう。


「そうそう。その視線」

「あっ、ごめんなさい」


 俺は再び謝って、視線を逸らす。


「いいって謝らなくて。男の子の本能みたいなものなんだから仕方ないよ」


 葵先輩は一つ息を吐いてから、俺の隣へ近寄ってくる。

 そして、空を見上げながら、どこか遠くを見つめるようにして呟いた。


「男の子のそう言う視線を感じちゃうと、変な気分になるの」

「変な気分?」

「『あぁ、いやらしい目で見られてるよぉ! 恥ずかしいけど嬉しい!』ってね」

「嬉しいんですか?」

「朝陽もそう思うでしょ? ほかの子なら、男子の視線を毛嫌いしたり、嫌悪感を示すことがほとんどなのに。私はそうじゃない。もっと私をそう言う目で見て欲しいと思っちゃうの」

「そうなんですね……」


 正直、どう反応したらいいか分からず、俺はそっけはい返事しか返すことしか出来ない。


「でもね、常時視線に快感覚えちゃってたら、日常生活に支障をきたすでしょ? だから、発散する場が欲しいのよ」

「は、発散する場ですか?」

「そう」


 葵先輩は、にやりと妖艶な笑みを浮かべると、そのまま俺の頭をガシっと掴んだかと思うと、自身の胸元へと手繰り寄せていく。


「ちょ、待っ――」


 ぷよん。

 刹那、今までに感じたことのない柔らかな弾力に包まれて、俺の脳内で、何かが溢れ出してしまう。


「よしよーし。朝陽は我慢しなくていいんだよ? 私でいっぱい欲望を開放させちゃってねー」


 まるでわが子を宥める母親のような口調で、優しく胸元へ引き寄せて、頭を撫でてくれる葵先輩。

 俺は葵先輩のおっぱいから香る酸っぱい汗に匂いと、女の子特有の甘い香りが交じって、頭がぐちゃぐちゃになっていく。


「んあっ……もうっ、いきなり強引なんだから♪」


 気づいた時には、俺は理性を失い、葵先輩のおっぱいへ顔を埋めたまま欲望のままに顔を動かして貪っていた。


「よしよし。いい子、いい子。そのまま、私のおっぱい出溺れちゃえ♪」


 これこそ、俺が欲に目覚めた瞬間であり、巨乳好きになってしまった元凶の始まりであった。




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