メグミの気持ちと墓参り〜後書き
「コレで…良かったのか?まぁお前が決めた事だ。お前がどう考えようが知らんがな」
「はい…ありがとうございました…もう良いです。それより私を…お手伝いの話は…」
「あぁ、約束だ。ちゃんと家族に伝えたか?まぁ別に会おうと思えばいつでも会えるけどな」
虫にまみれた化け物の様な女に問われた…
私の復讐…だけど結局駄目だった。復讐は…
そして教わる…私がした事は殺すより残酷な事。
心を殺す。それも無限に近い永遠の手前まで
だからずっと描き続けろ、自分の捨てた思い出を
そしてずっと憶えていて欲しい。これは私の我儘だ。
そう考えるとお兄ちゃんは幸せだったのかも知れない。だってシアさんに殺されたんだから。
シアさんは…幸せだったのかな…分からないや
夏休み、楽しかった温泉付き一泊二日の家族旅行。
だけど、お兄ちゃんの様子がおかしかった。
お兄ちゃん…いつも見ているから分かる。
違う、何かが違うと思った。
夏休み、サラと会った。喫茶店で、夏休みは何しているのか?そんなたわいもない話。サラは忙しいみたいだけど…それより気になるのはサラの目。
防犯グッズ店の人が言っていた。最悪のドラッグが流行っていると…一昔前に流行ったもの完成形で、黒目が大きくなり…濁る。
見えないものが見える、快楽が増す薬。
「サラ、アンタ何もしてないよね?悪い事…」
「な、何で?何もしてないよ?仕事しかしてないけど」
気になって防犯グッズの店の店長に、一緒に撮ったサラの写真を見せた…ビンゴだった。
「この子、多分…今後、大変な事に巻き込まれるよ…」
やめさせる?どうやって?何ができる?
それでも言うべきだった。お兄ちゃんが悲しむから。友達が苦しむから。
私はメールでそのまんま伝えた。悪い事してるでしょ?ドラッグやってるでしょ?それはやめろって。
返事は来なかった…正直、シアさんからの手紙を来るたびに燃やしていた私からすれば…サラと別れるのは都合が良かった。
でも、それから会う事が無かった。連絡も取らなかった。喫茶店でも言っていた。忙しくなるから二学期は来れないかもって。
そして次に会った時は…私は全てを知っていた
12月の頭頃、外はクリスマス一色だった。
防犯グッズの店員に呼ばれた…話があると。
この間のサラの目について、近くの昆虫店に行けといわれた。正直、もうシアさんやサラの事はどうでも良くなっていた。
あの人達は勝手に連絡が取れなくなったり必要な時だけ一方的に自分の事を押し付けてくる別の世界の人だと思うことにしてたから。
昆虫店の店員は身体中に虫を這わせる変人だった。多分、女だ。女は掠れた声で言った。
見えるか?って。私は何が?と答えると…
「じゃあこれは?見えるだろ?コレは…お前の友達の見えてる景色だよ…」
急に世界が歪み、弾けた。虫女に…蝶やバッタの様な羽、ハネ、翅…計6枚の虹色の羽…頭がおかしくなった!?
「安心しなよ、これが常時見えるのは頭のおかしい奴だけさ。見えるようにしたの。それよりその子の事、教えてもらおうか?回答次第でその子は死ぬか、死ぬより辛い目に合うか…どうだろね?」
私は知った…シアさんの事、サラの事。
別に芸能界だから、芸術の世界だから、そんなの関係無い。
普通にモデルも、アイドルも、タレントだって出来る筈なのに…アーティストだって音楽だって…
本当に偶然…だけどそこにたどり着いたのは、彼女達の環境であり才能なのかもしれない。
セレブと言われる人達に流行っている新しいドラッグ、効能は覚醒剤と同じ、依存性も。
ただ、違いがあると言う。
多幸感は覚醒剤を遥かに越え、未知の元素が成分の為に刑事罰化するまで時間がかかる。
そして最悪なのが、その高価な値段のドラッグを使う最適な方法、使用者との性行為で使用していなくても同程度の効果がある事。
その効果の影響でそれが広まって行く事。誰かと性行為するともしかしたらアレと繋がるかもと繰り返される複数人への性行為。
つまりそれは、地獄の螺旋の始まり。
サラは無知故に、事務所の社長に誘われて、あっという間に堕ちた。中学校からの絵の師匠と聞いた。
心から信頼していたんだろう。
ただ、話を聞くに余りにも簡単に、自ら進んで行為に至った気がする。
きっかけは何でもありそうだった。どこかで親への承認欲求と、姉に対する嫉妬心、つまりそれは華やかな世界への憧れ。
理由を付ければあっという間に折れる心。
お兄ちゃんは…夢を諦めた先の保険なのだろうか?本当に…そうなのかな…
シアさん…母親の懇意にしている事務所に入り人気絶頂のモデル、タレントとして活躍…していたが気付けば事務所、モデル、タレント、俳優、そしてテレビや雑誌の関係者に流行。動画も流出したそうだ。有名なのは…する時に『タロァ』という謎の言葉を発する事。
この才気溢れる姉妹は、多分心が…とても弱い。
しかし、姉は自らの力で薬を抜き、自らの力で歌を歌っていた。
私は後悔する…タロァってお兄ちゃんの事だ…居留守を使って追い返した、私が手紙を燃やしたシアさんは、ドラッグと、現実と、ずっと闘っていた。
結局、罪をおかしたのは、罰を受けるのは…あの姉妹ではなく…自分の欲に負けた私とサラだった…
『メグミ、答えを出す時だ…我らが君主は親しい者の判断、真実を追求する。どうする?殺すか、壊すか…』
決断の日が迫っていた。
「お、おに、お兄ちゃんに…謝りに…行かなきゃ…手紙の事、気持ちの事、全部…全部!」
そして今、汚いパーマのかかった社長とやらだろうか?その上に跨って黒目を大きくさせ、鼻水とヨダレまみれのサラみたいなものが『アヘ?ナンレ?』と言った、サラみたいなものを見下す。
あぁ、サラは壊れちゃったんだ。
でも良かった、壊れてて。だってみんな壊れたから。
お兄ちゃんも死んだ。シアさんは壊れた…何も飲まず食わずで多分近いうち死ぬ。
結局、サラは何がしたかったんだろう?
私の今の気持ちを伝え、手紙を渡した。
いまいち分かってないサラ…
「虫屋さん、お願いします…」
「私は虫屋じゃない…暗転だ。ほら、ドラッグ抜けるから意識戻るぞ、下手すりゃ壊れるからな」
虹色の鱗粉の様なものがサラを包んだ…突如、狼狽するサラ…
「なんでぇ!?死んだ!?私!?何でぇッ!?イヤぁァァァ!!!」
私が聞きたいよ、何でこんな結末…
この人達は、このドラッグを殲滅する、このドラッグを撒いてる海外の組織を潰す。
虫屋さんはそういう人達の仲間だと聞いた。虫屋さんが奥にいる3人に話しかける。
「さて、君主様。どうしますか…?」
喋りかけるのは20代半ばの男性、左右に変な忍者風の格好のでかい女と、エロい白い騎士みたいな女がいる。
「ラシーンから聞いてるよ、潰せば良いんだろ、イクエ…今すぐ潰せ、5分だ、出来んだろ?分かってんだろうな、お前が原因何だろ?今すぐやれ、早く潰せ、ほらやれ、しないならお前には金輪際触れない」
「海外組織ですし…5分!?…そもそもネタキュンシュが世界征服しようと10年前に無茶苦茶やるから…」
「うるせぇっ!良いから□▲の言うとおりにやれや!この変態眼鏡が!どうせ出来ないフリしてまた拷問受けようとしてんだろ変態!」
ガヤガヤ言いながら去っていく3人?
そして去り際に男性が一言。
「個別で裁くのは被害者…ただ、最後は暗転に任せるよ」
虫屋さん…暗転さんは嬉しそうに頷いた、任せられた事が嬉しいようだ。
入れ替わりに男女が数人、入ってくる…例の社長の周りに数人の男女が囲む。
「尋問、拷問、なんでもしろー、すでに意識は戻したし、肉体かいぞうしたからなかなか死なないぞー。ただし殺したいなら罰を受けるつもりで…コイツの犯罪は立証されないからな、そして思い出せ、嘆け、吐き出せ、騙された自分を、無知な自分ヲな」
暗転さんは興味無さそうに見ていた…社長の謝罪…被害者の罵声…叩く音…
「メグミはどーする?友達どーする?頭逝ったな、ほっとけば死ぬぞ」
決まってる…サラは私と一緒に償うんだ。
出会った事、惚れた事、拐かした事
お兄ちゃんに償うんだ、死にたければ死ねば良い
だけど死ねないでしょ?罪が重すぎて。
だから生かす…九州だっけ?永遠にね。
「この子は私が生かします。いつか正気に戻ったら、そこからが贖罪の始まりですから」
「ああそう、じゃあまぁ、終わったらついてこい、もしくは後で店来てー」
と興味なさそうに言う虫屋の暗転さん。
その後も、シアさんやサラ、関係者と思われる人は片っ端から発狂した。その波紋は海外にまで波及した。
本当に5分かどうかは知らない。だけど、この人達も力があるということもまた事実だった。
そこから私の存在は消えた。今は暗転さんの手伝いをしている。人を救う仕事。
これが贖罪になるとは思わないけど、元からお兄ちゃんを諦めていた私の心は壊れなかった。
勿論、母や母と再婚した本当のお父さんには、たまに会ってる。
でも私は犬山でも何でも無い。メグミになった。
それから10年…蘭子さんが離婚したと聞いた。
私と会うのは良くないと思ったから会わなかった。
そして何となくだけど…シアさんは死んだ気がした。
謝罪しようと思ったが会えなかった。
10年前、病室から抜け出して、そのまま消えたまま。
そしてサラ…ガリガリになったが多少成長していた。よく見ると姉に似ている。やっぱりそっくりだったんだね。
そのサラはあの日から、延々とブツブツ言うか、同じ絵を描くか…
ちなみに九州の病院に入れた。サラの父親と私で、入院費を払っている。面倒はサラのお婆ちゃんが面倒見ている。
サラのお母さんは、集団発狂の時に自殺した。
そもそも薬が入り過ぎていたらしい…
そして10年の間にサラの症状は…最近は記憶喪失を併発している。だから普通に喋る時があるらしい。ただ、殆ど家族への恨み言。
『でもね、私にはお姉ちゃんと違って努力する才能があるって男の子にいわれましたよ?』
その辺り記憶が出てくるといよいよ始まる発狂。
そして意識を失い、また同じ絵を描くの繰返し。
更にもう10年、蘭子さんに会った。子供は独り立ちしたそうだ。独り身で、やっと鬼頭さんと2人で話せる所までいったと嬉しそうに語った。
2人で墓参りしたらしい。お兄ちゃんの秘密のお墓の話を聞いた。
動物園の一画にあるお墓。石な上にウンコみたいなものがある。
意味分からないなと思ったけど…何がしたいのかなと思ってけど…何故かずっと出なかった涙が出た。
光の反射なのか、目の霞か、白い髪の、そう、夜中にお兄ちゃんの部屋に現れた妖精。咄嗟に出た。
「シアさんっ!ゴメンナサイっ!わたし!私がっ!私がぁ!ゴメっ!?」
スッと風に撫でられた、優しく、そんなこと言わないでと。
都合の良い解釈かも知れない。それでも言った。
「ありがどうござっまっす!ご、ごべんなざい!」
涙が止まらなかった…もう…良いんだ…それでも感謝と謝罪をした…
この話を相変わらず絵を描いているサラに独り言の様に言った…すると油を差してない機械の様に首をギギギっとこちらに向けハッキリ言った。
「メグミちゃん お願いします そこに連れてってくれませんか? お願いします お願いします お願いします お願いします お願いします…」
私はその日に帰ったが、それから翌月まで、サラは何も喋らないが歩く練習や食事を取っていたらしい。
サラの父親は仕事をやめ、新しい奥さんと一緒に九州に来てサラの面倒を見ている。
そのお父さんからもお願いされた…私は別に構わないけど…
そして私が車を出し、九州からサラを連れて横浜まで来た。
サラは海が見えると目を潤ませて唇を噛み、何かをギュッと掴んで耐えていた。
まるで、狂ってしまうのは、泣くのは逃げだと気付いたかのように、必死に受け止めようとしていた。
そこに来るまでに20年かかった。
近くまで来ると蘭子さんと鬼頭さんがいた。
それにヨータさんというお兄ちゃんの友達。
そうなんだよ…今日は命日…お兄ちゃんの。
周りの景色はクリスマスなんだ…
サラの車椅子をその場所で停める。
サラが車椅子から降り、這いずるように墓石に見立てた石にすがる。
そしてバックから出す、大量の【海とバイクと2人】の絵。差し出したと思ったらそのまま崩れ落ち、四つん這いの姿勢のまま泣き叫んだ。
先輩、太郎さん、シアお姉ちゃん、お姉ちゃん
ただ、名前だけを叫び続ける。大声で。
その泣き叫ぶ声で周りはざわついたが、鬼頭さんが何を言った後、謝り、人が離れていく。
ずっと泣き叫ぶサラ…名前しか呼べないサラ。
罪を償うってなんだろうな、償う相手がいないってどうすれば良いんだろうな。償えない罪の場合、どうすれば良いのかな。私達は時間をかけて考え、忘れずにその人の事を思う事しかできないのかな?
私は、昔からお兄ちゃんに怒っていた事があった。
「勝手に決めないで、他人の心を。勝手にしないで、正しいと思った自己犠牲を」
当時は、何で私の気持ちを分からないのか?と、お兄ちゃんに怒ってたけど、今は違う意味で思うよ。
私が言うのも違うかな?でもね、言わせてね。
やっぱり死ぬのは違うと思うよ?お兄ちゃん。
おわり
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以上、その後のそれぞれでした。
個人的にはこの世界のタロァは、これはこれで幸せな終わり方なのかなと思います。
それ以外は皆、地獄ですが…死を選ぶとはこういう事かなと。
結局、蛇足は耐久卿の人を出しちゃってますし…
本編は別展開(ラブコメ)で連載中です。ぜひご覧頂ければ幸いです。
これだけ見る方は、こういう出来損ないの短編風あらすじ暗いみたいなものだと思って頂ければ、嬉しマンモス。
本編お読みの方は気付いていると思いますが…これは本編では、あるヒロインの〇〇です。その上で連載版をご覧頂ければ楽しめるし?愛してますよ♥
クマとシオマネキ
そっと離れた幼馴染達に送る…NTR Anser Letter クマとシオマネキ @akpkumasun
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