第22話.魔女とスラム街
イーリスは、スラムの街で、
手入れが行き届いていない家、
通りには、ごみが放置されているし、道の
スラムの住人に、まだ残っていた
この姿では、どうにも
小銭を
あちらは、少しでもイーリスから
スラムの者たちの金への
闇の両替商を探しているということは、後ろめたい何かがあると予想される。そして、両替商を探すこと事態、
彼らはそういったものを見逃さない。
的確に足元を見てくるし、情報を小出しにして、少しでも多くの金を
それでも、イーリスは根気よく情報を引き出し、ついに闇の両替商の場所を特定した。
いや、
少し前から、誰かに
「まあ、この姿じゃ、
イーリスは誰にも聞こえないほどの小声で
二人のうち一人は、
もう一人も痩せているが、こちらはいくぶんか小柄で、右手にはナイフを持っていて、それを器用にくるくると回す。
後ろにも人の気配を感じて振り返ると、そこには退路を
先ほどから
「
右手に持ったナイフをイーリスに向けてすごんで見せる。イーリスは
ああ、めんどくさい。
イーリスはそう思った。そして、この三人を
それを
前方の二人はニヤニヤしながら、イーリスの方へと近づいてくる。
「なあ、兄貴。この女、よく見りゃかなりの上玉ですぜ。金を
長身の男の方が、ねっとりとした視線をイーリスの身体にそそぐ。それがあまりにも気持ち悪くて、イーリスは思わず
「まったく、おめぇはいつもそれだ。金さえありゃ女なんて好きなだけ
小柄な男の方が
「俺はびぃびぃ泣きわめく女を無理やり
目の前で
「しょうがねぇなぁ、しっかり
「ありがてぇ」
話がついたらしく、前方の二人が揃ってイーリスに視線を戻す。
「てぇことで、嬢ちゃん。両替商に持ち込もうとしてる物、出してもらおうか?まあ、出してくれなくても、こいつが
小柄の男の方が、長身の男に一瞬視線を向けながらそう言った。長身の男は何が嬉しいのか、ニヤリと
そんな二人のやり取りは一切気にしないで、イーリスは何気ない動作で小柄の男に近づくと、その胸に触れた。
「ダークニードル」
何の
その瞬間、小柄の男の背中から黒く細長い棒のようなものが生える。
「うっ」
直後、小柄の男が前方に倒れる。小さな
「兄貴ぃ!」
気付いた長身の男が、悲鳴に近い
男は首を抑えながら数歩よろめくが、すぐにその場に倒れ込んだ。
少し離れたところには、短剣を抜いたイーリスの姿がある。
長身の男が、仲間が倒れたことに気を取られた瞬間、イーリスは風のようなスピードで、男の
「ひっ、ひっ、人殺し!」
そちらに振り向くと、小太りの男が腰を抜かして叫んでいた。
「ウインドカッター」
そちらの方向へとイーリスは、力を解放しながら
すると、不可視の風の刃が、小太りの男を襲い
「ああああぁ」
悲鳴をあげながら斬り刻まれ、やがて小太りの男も動かなくなる。
「いつの時代もこういうやからは居るのね」
イーリスは、最後に倒れた三人を
それは、ほんの一分ほどの
人を殺すことに、それほど抵抗は無かった。魔女などと呼ばれていたこともあるのだ。人を殺したのは、今回が初めてというわけでもない。むしろ、旧魔法文明時代などは、いろいろな理由により、それなりに殺してきた。
ただ好き好んで人殺しをしたことは無い。
必要があれば殺すことは
今は、あまり目立ちたくないので
「早めに街から出たほうがいいかもしれないわね」
そう呟くイーリスは、少しだけ後悔した。スラムで、ごろつきが三人死んだところで、ろくに
イーリスは、聞き込みで得た場所にある建物に辿り着くと、扉を開けて中に入った。
そこは、やはりというか、なっとくと言うか、両替商ではなかった。
つまり嘘の情報を掴まされたようだ。まあ、先ほどの細い裏路地、あそこに誘導するために嘘をつかれたのだろう。
「まったく、めんどくさいわね」
イーリスは、先ほどの情報をもらった物乞いのところまで戻る。
「あの三人みたいになりたくなかったなら、今度こそ両替商の場所を教えなさい」
「ひぃ……教える。教えますから……」
それだけで、
もっとも、物乞いにとって、もう黙っている必要は無かった。もともと、あの三人から身を守るために嘘をついたのだ。今度はイーリスから身を守るために本当のことを言うのは自然の流れだった。
その後は簡単だった。
闇の両替商はすぐに見つかり、イーリスは無事に金貨の換金を終えた。足元を見られ、値切られそうになったが、それも少し脅したら大人しくなった。
「最初から、こうしていれば良かったのかしら」
そう言いながら、満足いくだけの金を手に入れたイーリスは、スラムを後にした。そして、その日は旅に必要な買い物を済ませると、早々に宿に引きあげた。
翌日の早朝、イーリスは宿を引き払うと、ジリンガムの北門から出て北に向かって歩きはじめた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここまで読んで頂きありがとうございます。
第三章、終了です。
四章もイーリスを追っていきます。
アルとリリィはイーリスに追いつくことが出来るのか?
乞うご期待ください。
アル、リリィ頑張れ!
イーリス怖い!
リカードの諜報組織が気になる!
と思ってくださいましたら、
★評価やフォローをお願いします。
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