破滅秒読み最カワ悪役令嬢とノックス十戒破壊型中国人 「異世界の標準語ってなんで日本語なんだ悪役令嬢」「中国語が通じないぞ悪役令嬢」「それにしても君可愛いな悪役令嬢」「君の恋を応援するぞ悪役令嬢」
人気投票五位ミュスカ・ドスペートスちゃん(上下は大体全部イケメン)
人気投票五位ミュスカ・ドスペートスちゃん(上下は大体全部イケメン)
原作主人公転生者フィア・サンブラージュは、原作ではどんなルートでも主人公について来てくれる親友ミュスカ・ドスペートスに連行されていった。
「面白女親友美少女 馬娘 特別週間似胸 危険 是危険 或夏日 突然海行決定 男性主人公水着彼女注目 『此娘 想定以上胸大 何此胸高鳴 彼女胸高鳴想定外 良見中々美少女 変気持成……』 胸八十台 危険境界線胸……」
「今日は部活動の日だよ、フィアちゃん」
「ま、待って! 今日はモウトクと乙女ゲーの原作主人公のなんたるかを話さないと! またちょっと忙しくなっちゃうから今日を逃すと! 下手したら来週に! だからお慈悲を! 個人的好みを申し上げるなら……乙女ゲーの主人公は一見して『めっちゃ儚い感じの透明系美人』だけどプレイすると『侠気の化身』ってなる感じのやつが好きで……攻略対象は苦悩を抱えてるけどその苦悩を主人公に押し付けることをせず主人公には優しくしようとしてるタイプの顔良男ばっかで……かつその男がふと漏らしてしまったその苦悩にグイグイ突っ込んでいく主人公が苦悩をガンガン気持ちよく解決していくタイプのシナリオで……攻略対象の苦悩は家族との確執とか、過去に死んだ家族とか、仕方なく約束を破ってしまった親友とか、『性格の悪いクズじゃない壁』が立ちはだかってる感じの乙女ゲーが好きだなって思うので……そういう乙女ゲーの主人公みたいな存在としてこの世界に君臨したい、とても、とても」
「面白女 機関銃会話女 我一周回好 最早長話安心憶 穏心境」
「フィアちゃんは変な子ですけど、面白くて可愛い子なので、嫌わないであげてくれると嬉しいです、フレン様。あ、もし街を歩いててフィアちゃんが倒れてたりしたらドスペートス家に連絡をお願いします。迎えに行きますから」
「え、ああ、うん、そうね」
「
フレンの中でフィアは突然意味の分からない言葉を垂れ流す女であり、ミュスカはフィアをいつも担いで連れて行っている女になりつつあった。
今日もミュスカは喋り続けるフィアを肩に担いで連行している。
フレンはどこかキツさを感じるタイプの美人で、ルチェットは柔和な印象を受ける美人で、フィアは『黙ってると小動物系の美少女に見える』子で、ミュスカは『笑顔で喋っていると小動物系の美少女に見える』子である。
それぞれの良さを認め、劉孟徳はうんうんと頷いていた。
この喋りの癖さえなければ、フィアも他三人と同程度にはモテそうな印象が出来る子ではある、と劉は思うが。
あいにく、今のところは直りそうにない。
おそらくそれが『原作のいい感じのルート』にフィアが進めない最大の理由なのだが、フィアは変な方向にメンタルが強いので改める気配がないのである。
とはいえ、劉も彼女らを美少女だとは思っているものの、『会話ができない』というネックがある以上、モテだの恋愛だのの思い上がりをすることはない。
ちゃんと会話ができることが、関係性進展の第一条件だと思っているからだ。
また、劉の白髪束の先が赤くなった。
「ああ、そういえば。アレキサンドリア様がフレン様たちを探していらっしゃったので、この場所を教えておきましたよ、フレン様」
「! アレク様が……?」
「……」
フレンの表情に緊張が走り、ルチェットの表情がやや真面目なものになる。
ミュスカは知ってか知らずか、黒いポニーテールをゆらゆら揺らして、にこにこしている。善意十割でいつも生きている感じの顔であった。
「あ、モウトクさ……もうモーさんでいいですか? いいですよね。決まりっ! モーさんは知らないと思いますが、アレキサンドリア様はフレン様の婚約者で、王子様なんですよっ」
「我拉麺二郎訪問 拉麺所望 壁見 壁紙 百五十円割引告知 歓喜 歓喜 我早速注文 麺固固大蒜増増脂増増 我完食大満足 友人忘年会約束忘却気付 大遅刻 友人激怒我 記憶思出話……腹減気分」
「……? はっ! ま、まさか、主への叶わない恋に目覚めてしまって主の婚約者への拭い切れない感情を抱いてしまったタイプの召喚獣……? そ、そんな! 相手は王子様ですよっ! それでもラブコメをするって言うんですか!?」
「ミュスカ、部活の時間大丈夫なの?」
「え? あっ! あ、ありがとうフィアちゃんっ!」
「あっ待ってあたしこの角度で運ばれるとぐえっ」
原作主人公フィアを肩に抱えたまま疾走を始めるミュスカ。
ミュスカの肩とフィアの腹が接した状態でミュスカが爆走を始めたため、上下に揺られてガンガン腹を打たれるフィア。
そうして二人は消えていった。
劉が手を振って見送る。
「リュー、よくああいう人と付き合いを保てるわね……」
「面白女 今日同様面白」
「まあ……なんとなくそう感じるというだけですが、リューさんって面倒臭いかそうでないかで他人を見てなさそうなところがありますからね……」
「とりあえずそろそろ食事にしましょうか? そういう時間だものね」
キマイラの巣を離れ、三人は食事処に向かう。
否。向かおうとした。
「リューにはこっちの香水がいいんじゃないかしら、ジャスミンのアレンジで」
「今時は新作のローズマリーがトレンドですよ」
「香水瓶 綺麗 宝石店想起」
道中で地域特産の香水店の前などでくだらない話をしていた時、その男は現れたのである。
この世界に来てから、劉孟徳は色んな髪の人間を見てきた。
薄青髪のフレン。
白桃髪のルチェット。
金髪のアマーロ。
黒髪のラウェア。
栗色髪のフィア。
黒髪のミュスカ。
だが、ここまで『髪と顔が引き立て合うイケメンの男』と出会ったことなど、劉の生涯で一度もなかった。
そう、劉はここに来て、とうとう初めて、『顔面が優遇されている原作キャラ』───すなわち『メインの攻略対象』と、出会ったのであった。
「やあ、フレン。それにルチェット。少し話がしたいんだけど、いいかな」
「あ、アレク様! 王族の方がこんなところまでいらっしゃらなくても、お呼びいただければ私達の方から……」
「いやいや、僕の方が用があるわけだからね。足労は掛けられないよ」
急にへりくだり、ペコペコとしだすフレン。
そこにあるのは『恋慕』と言うよりは『畏敬』であった。
「あ、髪が青くなりましたね。今なら通じるでしょうか。……既にされてる説明を二度打ちするというのはなんとも言えない気持ちになりますね。あのお方はアレキサンドリア・クトライアンフ。この国のクトライアンフ王家の第二王子様で、フレン様の婚約者様です。寛容な方ではありますが……いえ、これ以上わたしが何か言うことは変な先入観を与えてしまうかもしれません、よしておきましょう」
「? 人物像 曖昧複雑 声優石田彰系美形?」
「根底は悪い方ではないと思うのですが……どうも、あの人が良いことをしていても、わたしはいまいち信頼しきれないんですよね……」
「成程 声優櫻井孝宏系美形」
高い身長、引き締まった細身の体。
肩まで伸びた銀髪。
優しげな、けれど何か企んでそうな双眸。
双眸を覆うスマートな眼鏡。
信用を勝ち取る目的で浮かべていそうな微笑み。
服は王道の、白と金と緑を基調にした王子服。
俗に言う、『鬼畜眼鏡の血族』───男には微妙に信頼されず、派手に女にモテていそうな、そういう風貌をしていた。
「顔良 背高 美麗金髪 昔若頃木村拓似 性交相手自由 女困皆無予想 女子人気納得 彼女婚約者納得 公爵家顔良女 王族顔良男 是結婚最高……」
「はじめまして、アレキサンドリア・クトライアンフだ。この国の第二王子と、肩書きだけだが君の主の婚約者をしているよ。あまりかしこまった態度は取らなくていいよ。僕もそういうのは好きじゃないからね」
「婚約肯定 我肯定 全力 子供頃現在至迄我好 男女結婚組 一例 黒崎一護 井上織姫 顔良性格良男 顔良性格良巨乳女 結婚展開 激推 我感動……」
「ふふっ。王族を前にしてかしこまることもなく、恐れることもなく、腰が引けた様子もない。僕は分かっているよ。君の正体を。君の本質を。そして……君の罪を」
「!」
劉は『バレていたのか……pixivにサンプルを24Pだけ置いて残り40Pをファンボックスに置き読者を誘導していた自分の罪が……』と戦慄し、その罪を裁かれることに震え、されど受け入れ、糾弾の時を待った。
「君は、暗殺者だったんだろう? それもこの国の伝説にあった『暗殺王子』のような、ね。高い教養と礼儀作法を仕込まれた身分の高い人間を暗殺者に仕立て上げ、社交界に紛れ込ませ、政治的な脅威を暗殺させる暗殺者……それが、君だ」
「!」
「!」
「何言此奴」
だが、なんか話が変な方向に行った。
「あ、アレク様! どういうことなのですか!? リューが、暗殺者って……!」
「君達では気付けなかっただろう。だけど僕は立場上色んなものを見てきた人間だからね。すぐに気付いたよ。彼は隠しているが、その動きの節々からたまに暗殺拳特有の動きが見て取れる。気配と音を殺しながら敵の懐に入る技術だ。これは真正面から殴り合う通常の拳法家に見られるものじゃないのさ。必要な動きではないからね」
「頭酸素欠乏症……」
中国拳法の歴史は、混濁の歴史である。
多くの拳法が勃興し、混じり合い、時に殺人や暗殺の目的で特定の技術が磨き上げられ、地方軍などの指導に中国拳法が用いられる形で進化し、また個別に高まったそれらの拳法が混じり合い、暗殺用の暗器技術や、戦争で使われる武器術へと派生し、また個別に高められたそれぞれの拳法が混じり合う。
そういう過程で、中国拳法が暗殺拳の類を取り込んでいったため、動きの各所に暗殺のための動きや歩法が混じっているというのは、事実である。
ある意味、それを見抜いた王子アレクは慧眼だったと言えるだろう。
節穴の慧眼だが。
「それでは……リューさんは、元々高貴な身分で、本を書いたり祭祀をしているのは表向きの身分であり、その裏で『そんな暗殺者を用意できる上』の命令を聞いて貴人を暗殺していた、そういう人間だと……?」
「ああ。執筆や祭祀は毎日一定の時間に拘束される職業じゃないからね。裏で暗殺の仕事をするにはうってつけだ。彼が無表情なのも、彼を暗殺者に仕立て上げる過酷な訓練が原因だろう。不滅の黒龍を一撃で屠ってしまうほどの規格外の一撃も、我々にとって未知の世界で『必殺』を求めた結果だと思えば納得がいく」
「そんな……リューがそんな……」
「眼球 海之李白」
「肯定か、ごまかしか。君が何を言っているか僕には分からない。しかし、僕は君の正体に確信を持っている。体に染み付いた動きというのは嘘をつかないものさ」
「草不可避」
劉は淡々と返答する。
その言葉の意味は誰にも分からないが、話題の重さから考えれば、相当に痛ましいものであることは間違いない。
アレク王子の非常に筋道立った論理的な推測は、劉孟徳の知られざる裏側の素性を此処に暴くものであった。
元は高貴な立場の人間でありながら、暗殺者などという卑賤の身に堕とされ、誰かの都合、誰かの利益、あるいは誰かの支援のため、輝かしい社交の場を利用しての殺人を繰り返してきた劉の人生は、どれほどの苦痛に満ちたものだったのか。
貴族社会の人間であればこそ、その苦しみを強く感じることだろう。
アレクは、個人的な感情から、劉に心底同情していた。
ルチェットは、下級貴族の娘でありながら今はただの使用人として公爵令嬢に仕える者として、給金の多くを実家に送っている者として、貴族令嬢として舞踏会で踊ることもできなくなった娘として、劉に対して強い気持ちを抱き始める。
フレンはただ、彼の悲しみを想像し、彼の辛さを想像し、彼のこれまでを想像し、その心を癒やしたいという優しい気持ちを、強く強く湧き上がらせた。
「リュー……」
「……わたしは、態度を変えたりしませんよ、リューさん」
「我悲劇之暗殺者……? 自分見失 恐怖」
まあ、実態なんて、誰にも分かったものではないのだが。
「そんな君の腕を見込んで、暗殺を依頼したい。無論見返りがないとは言わない。それさえ成し遂げれば、君の素性がなんであろうと、僕が君の保護を約束しよう。一生この国に居てくれて構わないし、もし君の故郷がこの国と君のことを探し当てても、君を保護し続けると約束する」
「アレク様!?」
「何之腕? 何之腕? 何之腕?」
アレキサンドリア・クトライアンフが指を鳴らすと、どこからともなく現れた彼の従者が、劉の隣のフレンに書類の束を渡していく。
貴重な高級品である紙を惜しげもなく使った、王族らしい資料であった。
そこに記されていたのは、レッドダイヤの
フィア・サンブラージュやミュスカ・ドスペートスが所属する、かのレッドダイヤの
そして、その
原作にて悪なる道筋をたどる運命にある女。
悪役令嬢に、四つの大罪ありき。
四つの大罪の形に沿って、悪役令嬢は悪へ成り果てる。
『嫉妬』のフレン・リットグレー。
『傲慢』のアマーロ・ルヴィオレッツ。
残るは二つ。
アレクが求めているものは、このままだとおそらく数年後に確実に訪れてしまう、過去最大の内戦の勃発の阻止であった。
そのために一つ、壊さなければならないものがある。
「結論から言うと君には婚約を暗殺してほしいんだ」
「婚約を暗殺!?」
「婚約を……暗殺!?」
「何言此奴」
「君には十分準備をして挑んで欲しい。二週間後の……召喚獣コーデバトルに!」
「召喚獣コーデバトルで!?」
「召喚獣……コーデバトルで!?」
「何言此奴」
とは、言っても。
それを成し遂げるまでの道筋は、原作乙女ゲーのバトルシステムにある程度沿っていかないといけないのだが。
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