第52話 その心の内を
「何だよ努力と才能の賜物って! そんなの俺にもあるんだぞ! 俺は生まれた時から剣の才能に秀でてて、それは兄貴よりも上なんだ! 頭の出来とか礼儀作法とかは兄貴よりも下だったけど……それ以外なら、剣でも力でも身長でも体重でも、兄貴より上回るものがあるのに……!」
怒りに任せて喚きだすグロン。挙げ句にはその心の内をぶちまけはじめた。
「それなのに………兄貴が長男だから、俺が短気で感情的で頭が悪すぎるからとかって……俺はいつも兄貴の次で、親父はそう言ったんだ………。だから、せめて親父の地位を俺が継ごうと思って、騎士団長になって見返してやろうと………そのために親父に無理を言ってガンマ殿下の側近にまでなったのに………!」
ガンマの側近になった理由が騎士団長になって見返す。それこそがグロンの行動の原点だった。その事実についてはこの場にいる国王と公爵はすでに大体分かっていたが、それを口に出してしまうグロンに呆れを通り越して憐れみすら感じる。
だからこそ国王はグロンに、これから残酷な事実を伝えることが少し可哀想に思えてきた。それでもグロンに深く反省してもらうためには深く挫折して貰う必要があると判断した。
「グロンよ。お主には酷なことなのだが……」
「公爵を襲撃したから俺は側近から外して罰を与えるんだろ。やるんならやれよ! もう……こんな事になって、騎士団長どころか騎士にすらなれないくらい俺でも分かるんだよ!」
自暴自棄になって国王相手にも乱暴な言葉遣いになるグロンは涙目になって俯く。それに対して国王は不敬だと指摘せずに話を続ける。本当に残酷な事実を。
「そういうことではない。まあ、それもそうなのだが……私が言いたいのは、おぬしが騎士団長になることなどあり得なかったということだ。ガンマが王位を継いだとしてもだ」
「…………は?」
「おぬしに騎士団長を任せられるほど騎士団は甘くはない。たとえ王太子の側近であってもだ。当然、私もあのガンマですらもおぬしを騎士団長にふさわしいと思うことはなかった」
「え、な、何を言って……」
「おぬしは自分で言ったな、短気で感情的で頭が悪すぎると。そんな者に我が国の騎士団長など務まるはずがなかろう? せっかく王太子の側近になってその立場故に課せられる責務が与えられたというのに、おぬしは何も変わらなかったではないか」
「っ!? ど、どういうことですか!?」
グロンは国王の言っている意味が分からなくて激しく動揺する。ただ、もともと騎士団長になれなかったと言われていることだけは分かっている。その理由が理解できないのだ。
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