第51話 信じられぬ思考

「………なんと愚かなことを」



国王は公爵の予想通り呆れてしまった。公爵を襲撃した理由があまりにも酷すぎるからだ。



「……己の立場が揺らぐのを防ぐためにガンマの婚約破棄を阻止する。その方法が公爵を襲撃して屋敷に追い返す……信じられぬ思考だ……おぬしは取り返しのつかない過ちを犯したな。このようなことをして成功すると本気で思っていたのか? そもそもそんなことをしてガンマの婚約を守れるとでも思っているのか?」


「お、俺は………ただ、殿下に王になって、俺を次期騎士団長にしてほしくて………!」



グロンは自分が呆れられていると察して悔しさが膨れ上がった。国王に自分の目的等を聞かされれば怒りをぶつけられると思っていただけに馬鹿にするような呆れられるような視線を向けられることに耐えられなかったのだ。



「それで公爵の襲撃とは、何をどう考えればそんなことになるのだ? 国の英雄とも言われるレトスノム公爵におぬしごときがゴロツキを集めて襲撃して勝てるはずがなかろうに」


「そんなの……分からないじゃないですか! 公爵が活躍したのは俺達が生まれる前の戦争の時で、公爵もいい年齢だから若い俺でもと……そう思ったのに……!」


「その結果、私に負けて今の君がいるわけだ。いくら何でも私を甘く見過ぎだったな」


「ぐ…………!」


「ついでに計画も無謀すぎる。自分で動かせる兵がいないから訓練もされていないゴロツキを雇うなど私の護衛を馬鹿にしすぎだ。仮にも公爵を守る兵が弱者であるはずなかろう」


「うう〜〜っ!」



グロンは悔しそうに叫ぶが、途中で口をつぐむ。公爵に敗けた時の悔しさを思い出したくなかったからだ。更に肝心の公爵に事実を言われてしまい、もう歯噛みするしかない。


そして、グロンには歯噛みする事もできない残酷な事実が伝えられるのであった。



「……グロンよ。おぬしは己の保身のために取り返しがつかない過ちを犯した。後日、その罪のことで処罰をくだされるであろう。おぬしの父君を交えてな」


「っ! お、親父にも……当然か……」



グロンの父は騎士団長だ。それほど高い地位にいるものであれば公爵の襲撃事件の裁判にも口を挟めるだろう。加害者の父親でもあるのだから。公爵に捕まったグロンもそれくらいは分かっていた。



「くそ……何でだよ。公爵は強すぎるしゴロツキは役に立たない。そもそもミロア嬢は何故婚約解消なんて……」


「私が強いのは努力と才能の賜物。それは私の部下たちも同じ。ミロアが婚約解消を願うのはガンマ殿下が向き合ってくださらなかったせいだ……まあ、互いに相性が悪かったと思うんだね」



グロンの呻くような疑問に答えるバーグだったが、グロンの方はそれで納得できなかった。



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