第49.2話 拘束された男

(公爵視点)



グロン・ギンベス。この少年はガンマ殿下の側近の一人。それが今、私と国王陛下の目の前で拘束された状態で現れた。無論、私の手配によってだ。



「ど、どういうことだ公爵よ。何故、彼が拘束されているのだ?」


「勿論、彼こそが私が先程申し上げた『強引が通る理由』なのですよ」


「まさか……!」



陛下は私の言葉の意味をすぐに理解して顔を青ざめる。流石に国王なだけあって状況理解が早い。それをガンマ殿下に生かしてほしかったものだが。



「私は、あのグロン・ギンベスに王宮に向かう途中で襲撃されたのです。私が王宮にたどり着けなくなるように」


「なんと……!」



陛下が驚くのも無理もない。グロン・ギンベスは騎士団長の息子なのだ。そんな少年が私を王宮に行かせぬためだけに襲撃するなんて信じられぬはずがない。だが、そんな話が事実なのだから残念だ。頭は悪いようだが、剣術は中々のものだったというのに。



「……一体どうしてそのようなことが……騎士団長の息子で、ガンマの側近の彼が何故そんな……」


「私は襲撃してきた彼とその協力者達を返り討ちにして拘束し事情を聞かせてもらいました。今、陛下にもその時の話を聞いていただきたいのですが?」


「是非聞かせよ! なにがどうしてそんな事になったのだ!?」



話を聞けば、陛下もあの時の私のように呆れるであろうな。こんなにも惜しい剣の才能の持ち主がどれほど残念な頭だったのかを。





私は王宮に向かう際、いつもとは違う道筋を選んで行くと決めていた。これはミロアの言う通り、何かしら仕掛けてくる輩がいる可能性を考えてのことだ。それでいて、いつもより一日早く王宮に着くつもりでいる。



「……馬の手配等はもう準備しているのだろうな」


「はい、すでに休憩所にて体力万全の馬と食料を準備しておりますゆえ抜かりはありませぬ」


「ご苦労」



ミロアのためにも可能な限り早く婚約破棄を済ましてやりたい。それでいて生きて帰る。そのために休憩のたびに馬を変えて、私や部下たちの休憩時間も最低限にするのだ。戦時中にも行った作戦の一部を王宮に慎重かつ迅速に着くための作戦に組み込んだというわけだ。部下たちに負担はかかるが、この程度は戦時中なら朝飯前。悪いが付き合ってもらおう。



「休憩終わり! 馬はここで変えろ!」



部下たちは負担など無いかのようにテキパキと動いてくれる。頼もしい限りだ。特にダスターとスタードの息子たちが逞しく懐かしい。若い頃の彼らにそっくりなのだから。私に息子がいたらあんな感じになったのだろうか。



初日から二日は何事もなかったのだが、私が屋敷を出て三日ほどした頃に事件は起こった。

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