第32.5話 強引な方法
(騎士団長の息子視点)
俺はグロン・ギンベス。伯爵令息にして国の誇る騎士団長の息子だ。ただ、俺は次男だから家督を次ぐことはない。兄貴が家をついで当主となることが決まっている。俺は家を出て兵士や騎士になるしかない。
幸い、俺は武芸に優れているから、騎士になればあっという間に出世するだろう。男に生まれたからには野心を持つべきだと教わっている。だからこそ、俺は父のように騎士団長になるのだ。
父は、俺の才能を見込んで学園に入学する前に、王太子の側近になれるように便宜を図ってくれた。流石は騎士団長だと思った。これで、俺の将来は安泰だと思った。
……そのはずだったのに、学園に入ってからプレッシャーがかかってきた。
学園では武芸も大事だが、それ以上に勉学や礼儀作法の授業が多くて、俺はついていくのがやっとだった。それに俺が騎士団長の息子であるがゆえに敬遠する者が多くて中々友人ができなかった。
友人といえば、同じ王太子の側近と仲良くなれなかった。一人は宰相の息子でプライドが高くていけ好かないし、もう一人は侯爵の息子で厳しいやつ……今は辞めていった男だ。
俺が仕える王太子もなんだか嫌な奴だ。自分の婚約者を蔑ろにしているし、以前はメイドを追いかけ回したとか聞いている。まあ、婚約者のミロア嬢は面倒くさい女だけどな。
その同じ側近と王太子、俺達三人はある時、とある男爵令嬢に執心するようになった。彼女を独占したいという気持ちが三人ともある状態だが、身分と立場が違いすぎるせいで多分、彼女と結婚することは無理だろう。ならばせめて学園だけでも彼女との一時を楽しみたいと、俺達は思っていた。
だが、馬鹿な王太子のせいでそれどころじゃなくなってしまった。
◇
「ガンマ殿下が王太子じゃなくなる……そんなことになれば俺の立場も……次期騎士団長の座も……」
ガンマ殿下が婚約者に暴力……そんな馬鹿なことをするなんて思わなかった。女性に手を上げるとかありえないだろう。俺達まで巻き込みやがって……。
マークは殿下がミロア嬢とよりを戻せば何とかなる、そう言っていたけど……よく考えればあの馬鹿王子にそんなことできるとは思えねえ。
「だが、他にどうすれば……」
殿下が王太子じゃ無くなる理由……それはミロア嬢との婚約がなくなるからだよな。公爵が王家に婚約の白紙を頼むんだろ……公爵が王家に? それなら、公爵さえこっちで押さえれば……
「……だとすれば、公爵が婚約解消……破棄を申し込めなくするしかないじゃねえかよ」
俺は、だいぶ強引な方法を思いついた。
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