第32.4話 関係修復

(宰相の息子視点)



愚か者二人が私の言葉に驚いて間抜けな声を上げる。どこか優越感を感じさせてくれるような目だ。馬鹿が周りにいると面倒だが、自分が優れていると思い知らされると思うと悪い気はしないものだ。



「殿下が王太子から外されるのはミロア嬢との婚約が白紙になってしまうからでしょう。逆に言えば、もう一度婚約できればまた王太子になれるということです。国王陛下は公爵家との縁繋がりを望んでおられるのですから、殿下が努力してミロア嬢の心を射止めれば考え直してくださることでしょう」


「「っ!?」」



今の王家は嘗ての戦争に敗けた負い目があるゆえに強い貴族の家との関係を強固にしたい。公爵家はまさにうってつけだ。他の侯爵家やらでは駄目だと考えているだろうからな。


まあ、このガンマ殿下では難しいだろうがな。あんなに慕っていたミロア嬢に愛想つかされたというのだから。



「そ、そうか……だが、今のミロアは……」


「随分と変わられたようですな。殿下に愛想を尽かすだけでそんなに変わられるとは私もこの目で見るまで信じられませんが」


「…………」



その言葉に嘘はない。流石の私もミロア嬢がガンマ殿下に愛想を尽かすというのは想像しにくいのだ。ただ、殿下のこの様子からして、本当である可能性も高い。中身まで大幅に変わってしまったのであれば少し興味も湧く。是非、この目で見てみたいものだ。



「マークの言う通りだぞ。殿下がもう一度ミロア嬢と婚約し直せれば俺達の立場は守れるんだ。殿下がミロア嬢との関係が嫌なのは分かるけど、元々政略結婚なんだから……」


「グロン、本当に難しいのはミロア嬢の心の問題ですよ。殿下の話を聞いていたのですか? ミロア嬢は下手をすると殿下のことを嫌ってすらいるのです」


「そ、それは……なら関係修復は無理じゃねえかよ!」



やっと何が問題か気づいたか。本当にバカの相手は疲れる……自分が優れていることを確信させてくれるほどに。



「ですから、ここからは殿下の気持ちの切り替え次第ということです。殿下がこれまでミロア嬢にしてきた仕打ちを反省したと思い込ませるのです。殿下がミロア嬢に誠心誠意の対応をしていけばミロア嬢も殿下に対する愛情を思い出してくれるかもしれないでしょう。ここまで言わないとわかりませんか?」


「そ、そういうこと、か……?」



分かってないなこいつ。ただまあ、私の説得力を感じ取ったのか反論する気がないようだ。後は殿下か。



「な、なるほど……もう、それしかないのか。それでも……いいか。今のミロアは派手すぎないし、慎み深いみたいだから……あいつが王妃になっても……」



殿下のこの反応、ミロア嬢は本当に変わられたようだな。これは、彼女が学園に復帰する前にある程度情報を入手したほうがよさそうだ。

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