第32.2話 側近の怒り
(王太子視点)
さ、最悪だ……僕の、王太子の地位が失われてしまう……。公爵が婚約解消か破棄を申し出れば父上は潔く受け入れるつもりだ。だから……僕を王太子にする意味はないと……
◇
しばらくの間放心状態だった僕は、何もしないわけにも行かないため、とりあえず学園に戻った。その直後、二人の側近に捕まって詳しい話を共有することになった。
そしたら、こんな反応だ。
「な、何だよそれ!? 話が違うじゃねえかよ! 殿下の地位が揺らぐことはないんじゃなかったのかよ!? しかも、殿下があの女を訪問とか聞いてねえよ! 何してんだよふざけんな!」
グロンは目に見えて頭を抱える。当然の反応だな。僕が王位を継げない4立場だと側近のこいつも立場が危ういんだからな。ただ、こいつの頭で騎士団長とか最初から無理だった気がするけどな。
「……殿下、ミロア嬢のもとに向かうだけならまだしも、『また』何かやらかしたのではないですか?」
「え?」
マークが主に向けていいはずがないような冷たい目で僕を睨んでくる。僕に落ち度があるから咎めることができないが、その前に『また』って?
「私の方で学園で起こったことを調べさせてもらいました。殿下がミロア嬢を罵倒しながら突き飛ばしたこと、その後からミロア嬢が休学したことも。結構面倒なことをなさっていたではないですか」
「そ、それは……」
「俺も聞いたぞ殿下! 女相手に何してくれてんだよ! それでも王族かよ!」
「ぐっ!」
グ、グロンがこの僕の胸ぐらを……ヤバい! こいつは騎士志望だから下手をすれば大怪我をさせられてしまう! この形相からして冷静になってもらうのは難しいぞ。こ、こんなことになるなんて……。
「グロン。まだ殿下から聞かなければならないことはたくさんありますよ。だからその腕を離しなさい。殿下は王太子の立場でなくても王族であることは変わりありません。その意味は君でも分かるでしょう?」
「……ちっ」
あ、グロンが手を離してくれた。だが、僕に向ける視線が痛い。明らかに怒りを通り越して憎悪を感じさせる雰囲気を見せている。マークのおかげで助かったと思ってマークを振り返ってみたが、そっちも怒り顔だ。
「殿下、ミロア嬢の屋敷にまで出向いて何があったのか詳しく話してください。今のミロア嬢が何を言ったのか、殿下が何を言って何をなさったのか。勿論、それ以外のことまで何一つ隠さないでください」
……これは、結局僕が悪い流れになってしまうじゃないか。嗚呼、ここにミーヤがいなくてよかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます