ぬいぐるみ(777文字)

 湊音はいつもぬいぐるみを抱き抱えて眠っている。

 これはいつのことだか寂しがり屋の湊音のために長期出張の前買ってきて渡したものだった。


 長期出張もかなり前のことだし、今は同じ市役所内で働いているし出張もほぼ無い。

 それに毎日2人同じベッドで寝るのに。流石にイチャつく時は李仁にベッタリはいうまでも無いが行為が終わると自然と抱え込む。


 冬は寒いから李仁からくっついて寝ようとしても間にそのぬいぐるみを挟まれる。まだモフモフしているから暖かいし悪くは無いが。

 ちょっと複雑な気持ちに李仁はなる。


「いつまでも大事にしてくれるのね」

「もちろん。これを李仁だと思ってるから」

「いや、わたしここにいるでしょ」

「いるけど、李仁の分身ーみたいな」

 と湊音はおどけた感じでぬいぐるみを動かす。李仁もそれに合わせて身体を動かすと湊音は笑った。


 とある夜。

「そんなに湊音に愛されてるなんて……分身だけども嫉妬しちゃう」

 李仁が甘えた声を出す。

「嫉妬するの? この子は嫉妬しないんだよ、僕らがそばでイチャイチャしてても」

「……えっ?!」


 と李仁が無理やり湊音を押し倒した。……だが……。


「なんかこっち見てるって感じがする」

 と湊音はなんとなくぬいぐるみの視線を感じているようだ。

 しかし李仁は平気そう、というよりかは湊音にチュッチュしてぬいぐるみに見せつけているような感じ。


「李仁は気にしないの?」

「ん? 私は見られてる方が燃えるんだから」

「ちょ、李仁ぉーっ!!!」


 ことを終えて2人腕を上げて仰向けになった。なんだかいつもよりも……と湊音も満足げだった。


 だがいつのまにかベッドの上に置いてあったぬいぐるみが床に落ちて頭を下にしている。


「あら、この子も李仁みたいに拗ねちゃった」

 と優しく湊音はぬいぐるみを抱き抱えた。

「ちょっと、やっぱり今日も?」

「うん!」

 李仁は疲れた、という顔をしながらも呆れて笑っていた。

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