風の妖精の愛し子とキャラバンの仲間たち4



そんな穏やかな日常がずっと続いていくものだと、ジーフは疑っていなかった。

だが、ささいなことがきっかけで、それは壊れやすいものだと知ることになる。




その時、ジーフはたまたま近くを歩いていた。

そのことが後々彼を不利な立場に追い込んだ。

がその時の彼には知るよしもない。




荷物の崩れるようなけたたましい音が辺りに響いた。

驚いたジーフは風の妖精と顔を見合わせた後で音のしたほうに駆け出した。

音がしたのは荷物を置いたテントのほうだった。

ばっと入り口の布を払い中に入る。

その惨状を見てジーフは目を見開いた。



箱が崩れ、荷物が散乱している。

ぱっと見ただけで壊れて使い物にならなくなったものや、袋からこぼれた粉類が使えなくなったりしている。



「ひどいな」


ジーフは思わず顔をしかめた。


一体誰がやったのだろう?

近くに人影はない。

来る時も誰にもすれ違わなかった。

すぐに逃げたのだろう。

何でこんなことをしたのだろう?

事故かそれとも故意なのだろうか?


驚いて体は固まっていたが頭はそんなことを考えていた。


「どうした?」

「すごい音がしたが何があったんだ?」


ジーフに遅れて人が集まってきた。

彼らは荷物の惨状を見て、驚いたり顔をしかめたりした。

そんな彼らの視線がジーフに向く。


「またお前か、ジーフ」


いつもと違って厳しい声だった。


「違う。俺やってない」

「正直に言いなさい。きちんと謝れば許してやるから」

「やってないってば!」


ジーフは叫んだ。

だが誰も彼もが厳しい表情でジーフを見ている。


「ジーフ」


いつもより低い声。


「正直に言いなさい」


向けられる視線はみなジーフを疑っている。


「俺はやってない。大きな音がして来てみたらもうこうなっていた!」

「ジーフ、嘘はよくない。本当のことを言いなさい」


その言葉に愕然がくぜんとする。

ジーフは本当のことを話している。

周りを見回せば、誰も彼もが厳しい視線をジーフに向けていた。

誰も、ジーフの言葉を信じていない。


「どうして、信じてくれないんだよ!」


ジーフはぱっと駆け出す。


「ジーフ!」


後ろで名を呼ばれても立ち止まらなかった。



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